あ、せかんどおぴにおん 第16回「クヴェアバッハ クラシック・リースリング」
『あ、せかんどおぴにおん』第16回
「クヴェアバッハ クラシック・リースリング」
目次
このコラムについて(ここは毎回同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
16回目にとりあげるのは、「クヴェアバッハ クラシック・リースリング」です。
ドイツリースリング辛口派
「懐古」ではなく、今こそ『新発見』すべきドイツ辛口ワイン・・・日本人がいちばん最初に日常用ワインとして楽しんだのは、ドイツの白ワインでした。日本人の味覚センスに最も近いところで寄り添い、どんな料理にも合わせやすい。今世界が注目している「辛口ドイツ・リースリング」のニュースタイル、是非一度お試しください!
商品ページにはこんな風に書いてあります。実はFiradis WINE CLUBはドイツリースリング辛口派なのです。(そんな派閥があるのかはさておき。)
世界三大品種の一つとして世界中で栽培されているリースリングは、現在でも総栽培面積の60%以上は原産国であるドイツが占めていて、同時にドイツで最も重要な品種でもあります。意外と知られていないんですが、リースリングは他の品種と比べて晩熟で生育期間が長く、土地の持つ要素をより多く取り込みます。だから、他の品種よりテロワールが味わいを左右する度合いが強いのです。
そのうえで重要なのが、リースリングはテロワールを重視すると、自然と選ぶのは辛口になっていく、ということです。
元々テロワールを反映し、伝統的にドイツでつくられてきたリースリングは辛口が主流でした。しかし第二次大戦後の貧しい環境下で甘い食べ物・飲み物の需要が高まり、甘口の方向にシフトしていきます。法律の改正があり、ブドウ果汁の糖度により格付けが制定され、その流れはさらに加速しました。単純に糖度が高いものが良いワイン、という流れです。
その流れを変えるべく、1990年代ごろから「リースリング・ルネサンス」と呼ばれる辛口回帰運動が若手生産者を中心に起こってきます。リースリングのテロワールに秀でた畑は苛酷な作業を強いられる急斜面に多く、甘口生産者から敬遠されたそれらの畑は安価なまま取り残されていました。彼らはそこで辛口回帰に取り組んだのです。
辛口らしいシャープなミネラルと酸。近年では温暖化により、果実のふくらみも加わりました。素材の旨味にしっかりと寄り添うピュアなリースリングは、世界のトップレストランに支持されるようになりました。しかし日本ではいまだに甘口のイメージが強く、これはもったいないとフィラディスは考えました!なぜなら日本の食文化こそ素材本来の純粋な旨味を大切にする習慣があり、ピュアな辛口リースリングに適しているからです!
と、、長々と講釈を垂れてしまいましたが、以上の理由からフィラディスは辛口リースリング推進派だということが伝われば幸いです。辛口リースリングのトップ生産者たちを取りそろえております。その中の一人が、今回のクヴェアバッハなのです。
辛口熟成ワインのスペシャリスト
クヴェアバッハは著名なドイツワイン評価誌アイヒェルマンにて5ツ星中で 4.5ツ星の生産者評価を受け、土地と品種の個性の模範となるワインがノミネートされるモンド・クラシック・ライブラリーにフラッグシップであるドースベルクのリースリングが選出されている。同賞には、ゲオルグ・ブロイヤー、ロバート・ヴェイル、ドゥンホフ、ヴィットマン、マーカス・モリトール、エムリッヒ・シェーンレバーといったドイツ最高峰のワイナリーがノミネートされている。知名度はまだそこまで高くないが、こうした一流の生産者と肩を並べるクヴェアバッハはまさに今飲むべき造り手であり、熟成したリースリングを最高の状態で味わうならば、クヴェアバッハを置いて他にはいないだろう。
上記は商品ページ下部、生産者紹介からの抜粋です。すごい生産者っぽい、というのが伝わりますでしょうか。
これが1650年から続くというクヴェアバッハ現16代目当主、ピーター・クヴェアバッハです。
クヴェアバッハはライン川沿いのラインガウ地方の生産者です。ライン川沿いでラインガウと、覚えやすいですね。ブドウ栽培に理想的な環境であり、ドイツに5つしかない特別畑の4つがこの地方に位置しています。これらの畑に囲まれた村にワイナリーを構えています。
クヴェアバッハのワインの魅力は、徹底した長期熟成へのこだわりです。
ブドウ畑に存在する自然酵母で時間をかけてゆっくりと発酵し、さらに瓶詰の前に澱との長い接触を行うので、長期熟成に適した非常に高い品質のワインとなります。そして「テイスティングで目を奪うワインを造るのではなく、蜜やペトロールのニュアンスを持ちながらも、口の中では驚くほどフレッシュな酸と綺麗なミネラルが持続する熟成したリースリングの魅力をもっと伝えたい」と生産者本人が語るように、品質の高い熟成リースリングでありながら驚くほど手軽な価格で楽しめるのが、この生産者の最大の魅力だと思います。今回のワインも10年熟成しているトップ生産者のリースリングを3,000円以内で楽しめるわけですからね。
王冠キャップについて
唯一ご注意点戴きたい点は、このワインはコルクでもスクリューキャップでもなく「王冠」で栓がされていること。ビール用の栓抜きなどのご用意をお願いしますね。
商品説明にこのように書かれているように、このワインは王冠キャップが用いられています。
コルクの腐敗がワインに影響してしまうブショネという状態不良のリスクを回避し、熟成ワインのよりフレッシュな果実味を保つために自ら特許をとりました。これも熟成リースリングの高い品質へのこだわりの表れのようです。
いよいよテイスティング
≪こんな香り・味わいのワインです≫:
まるで蜂蜜のような黄金色の濃厚な色合い、スワリング時にゆっくり、トロトロと流れ落ちる脚に、その濃密な粘性が見て取れるかと思います。外観だけでその凝縮度に期待が高まりました。
香りは「柔らかくなるまで完熟した状態の洋梨や林檎」の印象に完熟したアプリコット、白胡椒・白い花にレモンの爽快感、そしてこのワインにもリースリングならではの個性であるぺトロール香が嫌な感じでなく感じ取れます。香りの要素は非常に多く、それが熟成を経て一体感を持ってまとまった感じ。いいですね!!
最初のひと口で厚みのある果実味とフレッシュな酸が段階的に広がり、余韻には洋梨の甘く華やかな香りがふわりと還ってきます。なんとも、開放的でゆったりと自由なアフター・・・時間経過毎にこの余韻に甘さが増していきます。
併せて楽しむお料理ですが、まずは豚肉・鶏肉など白身肉をシンプルに白・胡椒&レモンで・・・焼鳥(塩)などもお薦めです。ちなみにこれは変則技ですが・・・僕は直近の試飲(2021年11月)ではあん肝ポン酢~あんこう鍋、との組み合わせで楽しみました。あん肝の柔らか食感とこのワインのとろみが馴染むときの感覚、心地良かったです。リースリングとポン酢の相性はもはや僕の中では鉄板、ペアリングを楽しむとき、まずはこの味付けから楽しんでいくほどになりました。
いよいよテイスティングです。店長のテイスティングコメントはこんな感じでした。
私は、このワインを飲んで「これぞ辛口熟成だ!!」と感じました。
まずは香りから。力強い柑橘系、リンゴ、洋梨といった果実の香り。そして店長も書いていますが、リースリングらしいペトロール香ををしっかりと感じます。ペトロール香というと悪いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、表現を変えるとすれば爽やかで鼻孔を突き抜けるような爽快感。癖になる香りです。これも含めて熟れた果実感と爽やかさが香りから存分に表れています。
さて10年熟成の味わいなんですがね。思ってるよりも爽やかです。というのは熟れた果実の香りの印象、あとは10年熟成しているということが、とろーりとして甘い味わいだけが広がる、と想像させるんですが、意外とこれがすっきりさわやかなんです。綺麗な酸とあくまで辛口な味わいが爽やかさを担っています。ただ爽やかなんですけどもやっぱりとろーり感もあって、果実の密度の高さを強く感じます。そして何よりも美味しいなあと思ったのは、余韻の香ばしさです。まるでシャンパーニュのような印象さえ、感じるような、熟成の賜物であろう味わい深さをしっかりと感じます。「開放的でゆったりと自由なアフター」と五十風店長は書いていますが、私に言わせればむしろ束縛ですね。この余韻の魅力に、心を捕まえられてしまいました。
辛口リースリングらしい爽やかさと熟成の深みの両立。私はリースリングといえば豚しゃぶと合わせたいという短絡的な考えの持ち主なのですが、このリースリングならいつもよりも贅沢な豚肉と合わせたいと感じました。
商品ページには店長お薦めの温度やワイングラスなどが紹介されております。こちらも是非参考にしてください。
ちなみにこのクヴェアバッハの新たな熟成リースリングが、2021年12月にリリースされるようです。そちらもお楽しみにしていただければと思います。
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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