ワインペアリング奮闘記 第91回 セパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケス × 白花豆のファバダ

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ワインペアリング奮闘記 第91回 セパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケス × 白花豆のファバダ
『お料理パパのワインペアリング奮闘記』第91回
テンプラニーリョと豆料理の切ない恋の物語
 
このコーナーは毎回課題のワインに合わせたお料理を実際に作ってレポートするコラムです。コラムの性質上下記について、ご容赦いただいております。
 
■失敗してもやり直しできませんので、その時は何がダメだったのか考察する回とさせて下さい。
■子供に乳製品アレルギーがあるため、チーズやクリーム、ミルクなど乳製品不使用です。
今回のお題はセパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケス』です。
スペインの高級ワイン産地として名高い、リベラ・デル・ドゥエロの赤ワイン。品種はテンプラニーリョです。

テイスティング:

色調は深みのあるルビー。グラスに注いだ瞬間からフワッと広がる、香り高さを持っていますね。
香りの要素は、よく熟したダーク・チェリーやプルーン、ヴァイオレットなどのフローラルな香気、ブラックペッパー、ヴァニラ、スモークなど。
口に含むと、ぎゅっと濃厚な黒系の果実味です。フレッシュな酸味が上手くバランスを取っていますね。
タンニンは豊富で軽く収斂しますが、ヴェルヴェットのような厚みのある舌触りで、滑らかさも感じます。
後半はスモーキーなフレーヴァーをともなって心地よい苦味が伸びていきます。シガーのような深みを感じました。
全体的にはややパワフルな位置でバランスが取れていて、甘やかな果実と、酸味やタンニンのきゅっと締まった面のバランスが良く、プラス要素で感じるスパイスやヴァニラ、シガーのアクセントは、どこか大人の魅力を感じさせます。
スペインらしい情熱とスタイリッシュさを兼ね備えた、ちょっと官能的な赤ワインです!


合わせる料理:
果実の濃縮感、パワーが感じられるこの赤ワイン、料理のメイン素材はもちろん、肉料理でしょうね。
タンニンもありますし、それなりに食べ応えのあるものを用意したいです。
折角のスペイン名産地のワインですからスペイン料理で、というのも面白いでしょう。
で・・・実は、前から気になっている料理があったので、これを機会に作ってみたいと思いました!
ドキュメンタリーのイート・ザ・ワールドという料理番組で紹介されていた、スペイン・アストゥリアスの郷土料理「ファバダ・アストゥリアナ」です。
白インゲン豆とチョリソ、モルシージャなどのソーセージ、ベーコンなどを煮込んだ、スペインの魂とも言えるこの料理、リベラ・デル・ドゥエロのテンプラニーリョに合わないわけがないのでは?!と思い、勢いで作ってみることにしました。
現地と同じ材料を手に入れるのが少し難しかったため、手に入れられるものに置き換えています。『白花豆のファバダ』です。

レシピ:
乾燥豆を使いますので、前日から準備を始めています。
スペインの白インゲン豆の代わりに、乾燥の白花豆が手に入ったので、大きな魔法瓶を使って前日夜から熱湯に浸しました。
また、豚肩ロースの塊肉を前日から冷蔵庫で塩漬けにしておきます。
フライパンでこの豚肉と、たっぷりのくし切り玉ねぎ、ニンニクを炒めて、深鍋に移します。水をひたひたに入れて白花豆、鷹の爪、ローリエ、ブラックペッパーを加え、アクを取ったり水を足しながら、数時間ことこと煮込みます。
※私の場合は朝から初めて晩ご飯前まで煮込み続けましたが、3時間も煮込めばそれっぽくなります
※お玉でかき混ぜたりすると豆が崩れるので、時々軽く揺する程度で
ソーセージは本来チョリソと、豚の血液を使用したモルシージャという物を使いますが、簡単に手に入らないので、お店で手に入る限り大振りで硬派な感じのソーセージで代用しています。
食べる30分くらい前からソーセージ、ローズマリーも加え、塩味を調整して行きます。
サーブする少し前に、水に浸したサフランを加えて、完成です!

白花豆のファバダ

ペアリングレポート:
サフランが異国感溢れる良い香りです・・・豚肉の旨味が染み出したスープ、しっとりとした白花豆、ああ、大好きな味です。セパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケスとのペアリングはどうでしょうか?ワインとファバダを交互に食べながらじっくりと検証してみました。

・・・結論から言うと味わいの相性の観点ではまぁまぁ良し、75点くらいです!

良いところから行きましょう。
大きめの塊肉が口の中で解けていく中で、タンニンが豊富でジューシーな赤ワインがスッと入ってくる時、旨味も引き立ってリフレッシュ感もあり、心地よいです。
少しスパイシーなスープを吸ったソーセージとも、この赤ワイン喧嘩しないどころか、程よい刺激感を楽しめます。とても良いポイントだと思いました。
そして何といっても、なんかスペインっぽい雰囲気を十二分に楽しませてくれる組み合わせ。これも楽しいディナーにはポジティブな要素ですよね。

そういった魅力がありつつも課題を挙げるとすれば、赤ワインとファバダの味わいの性格はちょっと違う。特に重心の位置に違いを感じました。
ファバダはとても郷土感に溢れる牧歌的な雰囲気の料理です。そして味わいの重心的には、ブロードを吸い込んだ白花豆や、スープそのものも、どっしりとしたもの。
対するこの赤ワイン、セパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケスは、どちらかというとスタイリッシュに背筋が伸びたような印象があるため、両者を食べ合わせてみると、料理はやや下に沈み、ワインが上方向に浮いたような感じになります。

言ってみればこの赤ワインとファバダの取り合わせ・・・、それは真っ黒なドレスを身に纏った美女と、麦わら帽子の、牧場の跡取り息子・・・同じ国に生まれ、偶然惹かれあった二人ですが、住む世界が違う・・・そんな切ないドラマを、ふと妄想してしまいました(笑)。

もしかすると、もう少し別の地域のテンプラニーリョなら良いでしょうか?例えば同じスペイン内陸部でも、もっと標高の低いティンタ・デ・トロであれば、重心の位置も合致するかもしれません。
一つのペアリングから、次に合わせてみたいワインが見えてきましたね!

如何でしたか?
ワイン業界に身を置く者として細かい分析をしましたが、本当は赤ワインもファバダもとっても美味しくて、十分幸せに感じた私。このレベルで合っていれば、正直十分だと思います・・・。それに感じ方は人それぞれですから、あなたも是非一度、ファバダと赤ワインの素敵なペアリングをお試しくださいね。それでは次回もお楽しみに!

(西岡)
 

今回のペアリングワイン:セパス・イ・ボデガス ヴィリャカンパ・デル・マルケス


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