ワインボキャブラ天国【第77回】「りんご」 英:apple 仏:pomme
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「りんご」
英:apple
仏:pomme (男性名詞:発音は「ポ(ン)ム」)
新鮮なりんごをかじった時のフレッシュな酸味と甘み。
そんな香味イメージが現れるワインはやはり当然同じように爽やかタイプです。
若いリースリングやソーヴィニヨン・ブラン、冷涼な気候の地域で栽培されたシャルドネなどにもリンゴの印象を感じることがあると思います。
りんごを想わせる甘い中にシャキッと感のある香り・酸味はこの果実から発見されたと言われそのものの名が付いた「リンゴ酸」に主に由来します。
非常にシャープに尖り、スピード感を持ってタッチしてくる感じの酸ですね。
その一方で柑橘系フルーツのように軽いえぐみと口内を締め付けるような収斂性は「クエン酸」から感じ取っていることが多いと思います。つまりフレッシュな果実系の印象は、ワインに含まれる有機酸か起点となっているわけです。
その他ワインに含まれる酒石酸、コハク酸、乳酸なども同様にワインの香味要素を形成しています。
さて、このシリーズで果物の表現用語を取り上げる時には必ずと言って良いほどご提案しているのが、果実の熟度や何かしらの調理が加わっているか、などのいわば「プラスワン修飾」です。
未熟なのか完熟なのか、砂糖漬けなのか・・・などの具体化表現ですね。
「りんご」の場合は例えば赤いリンゴなのか青いリンゴ(green apple/pomme vert)なのかを基本に、例えば南半球のシャルドネのようにとても甘いリンゴの印象だったら「蜜たっぷりのリンゴ」なんていう表現を使うこともありますし、熟成したブルゴーニュのシャルドネやブラン・ド・ブラン・シャンパーニュになら「砂糖で煮た林檎にシナモン」「焼きたてのアップルパイ」のような発展系表現も。
これは香辛料のニュアンスや樽熟成による香ばしい香りをばらばらの要素として列記していくのではなく、敢えてそれらの要素が合わさった集合体としてのイメージでまとめて表現してしまうひとひねりの工夫です。
僕がFiradis WINE CLUBでワインの紹介コメントを書く際には「ひとことイメージでいうと、アップルパイ」のような形でまずはそのワインの全体印象をお伝えし、そこからりんご、煮詰めた状態でシナモンなどのスパイス、そして焼いたパイ生地、などに分解してご紹介をしていくようにしています。
ワインプロフェッショナルの表現方法は正直こういう方式では無いのですが、僕自身はこの方がワインの「姿かたち」を伝えやすいかな・・・と思っているので。
人の事を表現するのに「ほら、ちょっと芸能人の○○さんに似てるあの人」というようなものでしょうか。
ワインを飲むたびに毎回この表現を見つけようとすると、テイスティングがすごく楽しくなりますよ。
是非是非、チャレンジしてみてください(正解は無いので、自分の好き勝手に言いたい放題です 笑)!
それでは今回はこのへんで。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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