ブドウ品種を知ると、ワイン選びが一歩進む⑥ぶどう畑に唄うツグミ『メルロ』種
- 2020.02.29
- なるほどのあるワインコラム
- アメリカ, イタリア, カベルネ・ソーヴィニヨン, カリフォルニア, スペイン, テイスティング, ピノ・ノワール, フランス, ボルドー, マリアージュ, メルロ, ラベル, 価格, 樽, 熟成, 生産者, 香り
今回はブドウ品種の6種類目『メルロ』についてのコラムをお届け致します。
『メルロ』という品種、皆さまはどんなイメージをお持ちでしょうか。
40代以上の方は、今から20年ちょっとくらい前・・丁度お酒を飲み始めた20代の頃に、
カリフォルニア産のメルロ主体ワインがとても人気だったのを憶えていらっしゃるのではないでしょうか。
ボリューム感たっぷり、甘やかで渋みも柔らか。
樽熟成の印象が十分にあって、若い段階から飲み口がまろやかで飲みやすい。
ワインを飲み始めたばかりでも、素直に「美味しい~!」と思える味わいスタイルのワインでした。
カリフォルニアでは、メルロ主体で造った人気のブランドは、価格もどんどん上昇していきましたよね。
そんな熱狂的なカリフォルニアのメルロブーム、
2004年に映画「SIDEWAYS(サイドウェイ)」が公開され、
ストーリー上の重要アイテムとなったピノ・ノワールのワインが人気となり、
ピノ・ノワールブームが起こった頃からでしょうか・・・
アメリカでの熱狂的なメルロブームは沈静化し、普通に定着した感じがしました。
とてもパワフルで分かりやすい甘さのあるメルロからワインを飲み始めた人たちが、
繊細な酸味とエレガンスを重視したピノ・ノワールを知り、更に他のワインへ。
メルロはそんな、新たなワイン愛好家を産み出すという素晴らしい役割も担っていたのではないかと思います。
『メルロ』はそんな、まずは誰でもとっつきやすいキャラクターを持ったブドウだと言えます。
カベルネ・ソーヴィニヨンよりも自然と高くなる糖度、そして果皮が薄いことによってタンニンの量は控え目。
スタンダードクラスのメルロは、ソフトでフレッシュな果実味を楽しめるスタイルのワインが多いですよね。
そして収穫までの栽培期間がカベルネ・ソーヴィニヨンよる2週間程短く、
生産者にとっても安定的に栽培が出来る非常に便利な品種。
今や、ボルドーでもカジュアルワインの基軸品種はメルロに移行しつつあります。
スーパーなどでも売られている大手ブランド(例えば、「ムートン・カデ」など)のボルドーワインで、
バックラベルにブドウ品種が記載されているものを見てみてください。
大部分が、50%を超える比率でメルロを使用しています。
勿論、偉大な造り手のメルロはとっつきやすさだけでない底知れぬ深さ・長期熟成のポテンシャルを持っています。
ですが、品種としての『メルロ』は何となくその名前の響きからも連想させる、
メロウな柔らかさを特徴とするブドウであることは間違いありません。
『メルロ』というブドウ品種名の由来は諸説ありますが、
「ツグミ(仏語でMerle=「メルル」、英語では“Blackbird”です。The Beatlesの曲にもありますよね)」
から来たというのが有力です。
ブドウ畑で熟したブドウをついばむのが大好きな小さな黒い鳥をイメージして付けられた、のでしょうか。
考えてみるとブドウを食べて畑を荒らしてしまう害獣なのですが、
ボルドーには「シャトー・カントメルル(歌うツグミ)」なんていう名前のシャトーもあるくらいですから、
余程畑でブドウをついばみ、さえずる姿が可愛かったんでしょうね。
メルロ種は18世紀頃には既にボルドーの右岸地域、サン=テミリオンやポムロール地域に存在していました。
この品種もカベルネ・ソーヴィニヨンと同様に祖先はカベルネ・フランと言われています。
カベルネ・フランと言うブドウは一体どれだけ偉大なのでしょう 笑!
ボルドー地域は勿論、19世紀頃にはイタリア・ヴェニスの近くでもこの品種の存在が記録されているようです。
その頃は、「Bordo(ボルド)」という品種名で呼ばれていたと言う記録もあります。
現在はフランスではボルドーや南仏、イタリアやスペイン、アメリカを始め、
チリ、オーストラリア、ニュージーランドや南アフリカなど世界中で栽培される国際品種となりました。
前述の通り、甘やかフルーティで飲みやすい味わいと、栽培のしやすさ・収穫量の多さから、
普段から楽しめるデイリーワインの原料として広まって行ったわけです。
一方で、ボルドーの伝統的なメルロの香り・味わいスタイルには、
最もポピュラーなこの印象とは少々異なる香りイメージがあります。
これをご紹介して、今回のメルロのまとめとしたいと思います。
それは、枯葉のようなニュアンスやキノコのニュアンス、ローズマリー・フェンネル等のハーブや、
ブラックオリーブ等のニュアンスです。
フランス語のテイスティング用語で「Sous-Bois(スー・ボワ)」という言葉があるのはご存知でしょうか。
直訳すると「木の下」。
つまり、森の中で木の下に枯葉が落ち積り、そこに雨が降った後に香る独特の「秋の森の香り」です。
ワイン通気取りをからかう時に嘲笑的に使われたりもするので聞いたがあるかもしれませんね 笑
ボルドーのクラシックなメルロには、この枯葉的な印象や、上記のハーブ的なニュアンスがあります。
枯葉やキノコの印象は、メルロ主体のワインが(比較的短期間でも)熟成を経ると現れてきます。
そして、ハーブ的な印象は、早々と完熟・過熟し糖度が高くなるメルロを敢えて完熟させず、
程良い酸が残せるくらいの段階で収穫した時に出現するアロマと言えます。
このちょっと枯れた香り・味わいが苦手、という方もいらっしゃいますが、
この「枯れ葉感・キノコの土っぽさ」もメルロの魅力の一つではないでしょうか。
メルロのワインに合わせる料理を選ぶ時にキノコを使った料理が選ばれるのは、この印象があるからです。
カベルネ・ソーヴィニヨンだったら黒胡椒やベリーソースがワインの印象とマッチしますが、
メルロ主体だったら是非キノコ(茶色っぽいキノコ、お薦めです)を足してみてください。
とても芳醇な、香り高く深みのあるマリアージュが楽しめるはずです。
『メルロ』は、朗らかで優しくて社交的、でもその一方でとても懐が深く味わい深いブドウ品種。
それが人だったら、とても魅力的・・・・メルロみたいな人を目指したいものです!!
さて、今回も最後に、ブドウ品種4種飲み比べのセットを2種類ご案内させて戴きますね。
ワインスターターの方はまず①のセットがおすすめです。
まずは、違いのはっきり分かる赤・白のブドウ品種2種類ずつを飲み比べてみてください。
ワインの「飲み分け」が、これなら自分にも出来る、と実感して戴けるはずです。
そして既に主要ブドウの特徴が理解出来たという方は②のセットにチャレンジしてみてください。
こちらは、個性を掴み、表現するのがちょっとだけ難しいブドウ品種も入っています。
(詳しくはセットのページをご覧ください)
でも、これから先のメルマガセミナーを読んで戴ければ、
ご自分の目と、鼻と、舌で感じて、きっと腹にストンと落ちる瞬間が訪れるはずです。
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