様々な赤ワインの魅力を引き出せるグラスはどれだ??Firadisグラス実験VOL.2 レポート第3回『赤ワイン前編』
- 2020.07.22
- なるほどのあるワインコラム
- カベルネ・ソーヴィニヨン, グラス, グルナッシュ, コート・デュ・ローヌ, シラー, スペイン, テイスティング, テンプラニーリョ, ピノ・ノワール, ブルゴーニュ, ボルドー, メルロ, 実験, 白ワイン, 試飲, 赤ワイン, 香り
『どんなワインにも使える“万能なグラス”は存在するのか??』を検証する実験。
①ボルドータイプ(卵型で少し縦長)の小型グラス
②ボルドータイプの大型グラス(①と同じ形で、容積が大きい)
③ブルゴーニュ型(金魚鉢のようなバルーン型)の小型グラス
という3種類の「自宅に1種類だけ持つならこれ、という時に選ばれそうなグラス」の中に、
どんなワインでも美味しく飲めるグラスはあるのか???を検証する実験です。
*ブルゴーニュ大型のバルーングラスを用意していないのは、
「自宅(やお店)どれか一つだけを選ぶ」という時にそれを選ぶというのは想定しにくいから、です。
前回は白ワインの代表的なブドウ品種3種類のワインを試飲して、
意外なことに①の『ボルドータイプ小型グラス』がどの品種のワインでも最も美味しく飲める、という結果に。
他の2種は、グラスの大きさや深さが逆効果になったのか、全体が間延びしてしまう、という結果でした。
白ワインに続き「赤ワイン7種」で実験!!
そして次は赤ワインでの実験です。
今回は、代表的な黒ブドウ品種×各国を代表する地域の比較的若いワイン、
という基準で下記の7種を選定。自宅で楽しむことを想定したチョイスです。
7種の赤ワインを1本ずつ順番に、3つのグラスに注いで飲み比べて検証していきました。
<赤ワイン7種>
・伊 モンテプルチアーノ・ダブルッツォ(モンテプルチアーノ種100%) 2015年
・仏コート・デュ・ローヌ(グルナッシュ種100%) 2014年
・仏コート・デュ・ローヌ クローズ・エルミタージュ(シラー種100%) 2010年
・仏ブルゴーニュ マルサネ (ピノ・ノワール種100%) 2013年
・仏ボルドー コート・ド・カスティヨン(メルロ種&カベルネ・ソーヴィニヨン種) 2013年
・スペイン・リオハ (テンプラニーリョ種主体) 2011年
・伊トスカーナ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(サンジョベーゼ・グロッソ100%) 2010年
判断基準は大まかに言うと
●その品種・地域の個性・特徴が適切に表現され、そのワインらしく楽しめるか?
●他のグラスと比較して、シンプルに「おいしく」感じるか?
この2点です。
今回は最初の4本「モンテプルチアーノ」「グルナッシュ」「シラー」「ピノ・ノワール」について。
シラーが若干パワフル系ですが、この4本に共通なのは香り高く華やかなところ。
この4本については、香りが綺麗に立ち上がるか?がグラスの良し悪しを判断する重要な要素となります。
これらの4種に本来あるべき共通する香りは、赤系ベリー(に時々黒系)+花の香り、だと思います。
今ワインを飲んでいない方は、頭の中でイメージしてみてください(飲みたくなったらすみません・・)。
そういうフレッシュな心地よい香りが、いくらグラスを廻してもなかなか出てこなかったり、
出てきてもやけに間延びした香りだったりしたら、心地良さが感じられないですよね。
獲れたて果実の新鮮さや、心地よい酸味をイメージさせる香りがストレートに立つのがベスト、だと思います。
そして口に入れた時の味わいでは・・
フレッシュな果物ならではの酸味と甘み、軽いタンニン、そして繊細な旨味、
それら全体がバランス良くきちんと整理され、一体化しているのが理想では。
ベリー系の果物を何粒かいっぺんに頬張った時の、あの感覚ですね。
赤ワインに「万能」なグラスは、存在するのか??
この前提に立って4本をテイスティングすると、
何とまたもや『ボルドータイプ小型』が最も万能的、という結果でした。
若いワインが持つ様々な香り・味わい要素、それらを小柄な造りの中に無理矢理でなく詰めていって、
綺麗に整理した状態で見せてくれる、というようなイメージだったのでした。
『ボルドー大型』は、小型と同様に多くの要素をまとめていく機能はしっかり持っているものの、
どのワインに対してもまとめた後の見せ方が大げさ・派手すぎるというか・・・
果実の甘味等の要素が目立ち過ぎてしまい、全体の印象がぼやけてしまう印象、と僕は思いました。
若いワインにはこの大きさは必要ないかな、と考えます。
そして『ブルゴーニュ小型グラス』。僕にとってはこれが一番クセモノでした。
特にシラーとモンテプルチアーノで感じたのですが「香りの要素が分散してしまう」感じ。
様々な香りを統合して欲しいのに、一点だけ無理に引っ張り出しちゃうイメージです。
白ワインの時と同じように、タイトなワインを緩くほどいてしまうグラス、ですね。
・・・ですが勿論、4番目のブルゴーニュワインではちゃんと本来の実力を発揮。
ピノ・ノワールならではの官能的な香りが広がっていくのを体感できました。
これはやっぱり「型として正解」ということですね!!
というわけで今回の比較的若く、チャーミングなまとまりを楽しむような4本で分かったのは、
「要素それぞれをバラバラな方向に拡張してしまう大ぶりグラスでは、器が大き過ぎる」ということ。
まだ若いのに、無理に背伸びして高級レストランに入って味が分からない、という状況のようなものでしょうか・・。
さて、どうやらこのままいくと唯一の『万能グラス』に成り得る可能性を持っているのは
「ボルドー小型」ということになって来ました。
残りの3本、最もパワフルで手強そうな「ボルドー赤」「リオハ」「ブルネッロ」では、
一体どういう結果が出るのでしょう??
次回、実験レポート第4回「赤ワイン中編」お楽しみに!!
毎回最後に書いているのですが、是非ご自宅にある様々な形のグラス(ワイングラス以外でもOKです!)で
「ワイングラス実験」にチャレンジしてみてくださいね。
例えば、湯飲みやビールグラス等でワインを飲んだらどう感じるか、なんていうのも面白いかもしれません。
グラスによってワインの味がこんなにも変わってしまうのか~!
をじぶんの鼻と舌で実感するのって、ワインを楽しむ上でとても大切な経験だと思います。
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