ワイン職人に聞く、10の質問【第61回】ランスロ・ピエンヌ(仏シャンパーニュ地方ヴェルジー村)
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』
第61回 ランスロ・ピエンヌ(仏シャンパーニュ地方ヴェルジー村)
オーナー・醸造家 ジル・ランスロさん *写真右
4代目当主のジル・ランスロさんは、普段はとても優しく穏やかで気のいい農家のオジサン・・・といった風貌ながら、シャンパーニュの話をするといつも眼光が一気に鋭く、そして饒舌に。
テロワールについての分析、自分のワインが目指す方向について熱く語る時の彼は、まさにワイン職人・・・いや、更にシンプルに「ワイン人」と呼びたくなる印象です。
コート・デ・ブラン地区の中でも際立って個性的なキャラクターが現れるクラマン村。
そのテロワールに真に愛されたランスロ・ピエンヌの作品、一人でも多くのシャンパーニュ好きに知って頂きたいと、切に願います。
それでは今週も一問一答インタヴュー、お楽しみくださいね。
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒物心ついたころから、何かを創造することに対する強い志と熱意があったんだ。私の父のようにワイン造りやテロワールを理解することに大きな情熱を持っている人と暮らしていたから、いつか自分も素晴らしいワインを創り上げてみたい・・・と自然に思ったんだろうね。
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒一番嬉しかった瞬間だって?一つには絞れないな、だって山のようにあるからね!!でも、やはり毎年訪れる収穫の季節に、まさに完璧、と言って良い状態にブドウが実って、『ランスロ・ピエンヌ』でしか持ち得ないアイデンティティのあるワインが造れる、と感じた時かな。
そこからスタートする醸造過程からブレンドまで、沢山の選択を積み重ねてワインを「誕生させる」瞬間に至るまでが一番幸福な時間だよ。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒コントロールできないことが起きてしまう時。
仮に畑や蔵で完璧な仕事を下と思えても、気候条件や発酵の結果などを制御することは不可能だ。
我々が葡萄を所有してワインを造っているのではなく・・・もしかすると、その逆が真なのかもしれない。我々のほうが、葡萄に全てを与えられているというような。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒テロワールの姿かたちを的確に照らし出したような、そのヴィンテージで最高の配合を見つけ出すこと。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒ピュアで精緻、そして香りと味わいにまるで別次元のような複雑性とバランスを感じさせるワイン。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒『シャトー・ラヤス シャトーヌフ・デュ・パプ』の2002年ヴィンテージ。ワイン自体は勿論素晴らしかったが、畑とワイナリーを訪問して醸造家と一緒にこのワインを開けるという特別な経験をしたんだ。今でも決して忘れられない最高の時間だったよ。
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒新鮮な魚や帆立貝のカルパッチョに、『ターブル・ロンド』や『マリー・ランスロ』。クリーミーでミネラル豊か、まさにクラマンらしい私のシャンパーニュには、素材を生かしたシンプルな料理が良く合う。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒もしも新しいワイナリーを造るとするなら、私は「どこで」よりもその場所で「誰かと一緒にやる」ことに興味があるんだ。お互いがプロジェクトに熱意と責任を持ち、そして互いに敬意を払いながら新しいものを創り上げる・・・
そういった意味では一番興味があるのは、やはり日本だね。新しいことを始める価値のある場所だと信じている。そして、テロワールの面で興味がある場だったら、アルゼンチンも非常に興味深いと思っているよ!
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒ワイン造りの最初から最後までワインの状態を常に正確に把握すること。そして、自分の造るワインをより深く知ろうと努め、常に自然とワインを尊重すること。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒何度か訪れての印象だけど、日本は様々な文化が存在し「香り豊かな国」だと思う。本当に大好きな国だよ。
そっと目を閉じ、僕のシャンパーニュを口にして、そして様々な思い出をワインと一緒に楽しんで!
・・・ジル・ランスロさんへの一問一答インタヴューは、以上です。
如何でしたか??
前回彼のドメーヌを訪れたのは、ある日の夕方の時間帯。
90分ほどの約束で訪問と試飲で時間を取ってくれていたジルとスタッフたちは、ワイン造りの話が盛り上がると2時間過ぎても3時間過ぎても、夕食の時間の直前まで僕の質問とありとあらゆる見学の希望にずっと付き合ってくれました。
香りと味わいに「別次元の複雑性とバランス」。
ジル・ランスロさんがその技と知見を余すところなく注ぎ込んだシャンパーニュたちは、確かにその理想が体現されていると思います。
この傑出したクオリティと「クラマン村」のアイデンティティが表現された2つのシャンパーニュ、是非お楽しみください!
≪「円卓の騎士」から名付けられたランスロ・ピエンヌのフラッグシップ!≫
『ランスロ・ピエンヌ ターブル・ロンド・グラン・クリュ N.V.』
≪純粋なクラマン村のテロワールを理解するならば、このミレジムこそが答えとなります。≫
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