【ワインと美術:短編】ボタニカル・アートとは何か。
- 2022.11.28
- ワインと美術
科学と芸術のコラボレーション ボタニカル・アートとは何か。現在、新宿のSOMPO美術館で開催されている「おいしいボタニカル・アート〜食を彩る植物のものがたり〜」という展覧会ではこのように説明されていた。ボタニカル・アートとは科学と芸術のコラボレーションである、と。 ボタニカル・アートとは直訳すれば植物を描いたアートということになるが、それだけでは要件を満たさ […]
科学と芸術のコラボレーション ボタニカル・アートとは何か。現在、新宿のSOMPO美術館で開催されている「おいしいボタニカル・アート〜食を彩る植物のものがたり〜」という展覧会ではこのように説明されていた。ボタニカル・アートとは科学と芸術のコラボレーションである、と。 ボタニカル・アートとは直訳すれば植物を描いたアートということになるが、それだけでは要件を満たさ […]
19歳の画家 ベラスケス『卵を調理する老女』1618年 エディンバラ、スコットランド国立美術館 ワインの入った瓶とメロンを抱えた少年は片目を影に潜め、厳格な形相である。画面の中心を占める老女は火鉢にかけた鍋で、卵を調理しているところだ。描かれているのは、17世紀のスペインで暮らす庶民。暗い厨房に光が灯る、はっきりとした明暗の中に存 […]
どんちゃん騒ぎ ヤン・ステーン『テラスの陽気な集い』1670年ごろ ニューヨーク、メトロポリタン美術館 飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。酒に溺れた雑然とした人々の様子が描かれている。宴に出ている人々はとても楽しそうだが、同時に醜悪でもある。真ん中上部では酔っ払った老人が抱き抱えられた小さな子供にワインを渡そうとしている。お前も仲間に入れと言ってい […]
ポンペイとワイン 『バッカス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山』62~79年 ナポリ、ナポリ国立考古学博物館 ブドウを身に纏うのは、ワインの神バッカス(ギリシア神話ではディオニュソスと呼ばれる)。ヘビもまたバッカス信仰に関連する。よく見ると山の中腹にはブドウ棚も確認できる。今から約二千年前の西暦79年。中心に描かれたヴェスヴィオ山の噴火による有 […]
フィンランドの饗宴 ガッレン=カッレラ『シンポジウム』1894年 個人蔵 男たちが集う。酒を飲み交わす。ひとしきりの議論も済んで、会も終盤というところだろう。一人が酔ってテーブルに伏せっている。明かりの具合や月と背景の色合いから夜であるとも想像できるが、レストランの壁に描かれているだけかもしれない。左側は背景が赤くなっていたり、固い羽のような […]
プロローグ ゴッホ『タンギー爺さんの肖像』1887年 パリ、ロダン美術館 ゴッホが描いた『タンギー爺さんの肖像』という絵がある。パリのモンマルトルにあった画材店の主人・タンギーが、6枚の日本の浮世絵を背景にポーズを取っている。彼はゴッホに絵具などの画材を出世払いで渡してくれたり、ゴッホの売れない絵をショーウィンドーに置いてくれたりした人物である。心を寄せて […]
奇跡を待つ イエスが育ったガリラヤのナザレの町。それは今日では観光客や物売りの喧騒に満ちているが、オリーブ畠と糸杉と傘松の丘に囲まれたこの町をそれらの騒がしさのなかでじっと見ていると、到るところにみじめな人生が眼に映る。物乞いをする裸足の子供達。観光客に手を出す盲人や跛の乞食。汚水によごれた坂路の両側には狭い、暗い、小さな家々と店とが並んでいる。ヨハネ […]
光 レンブラント『夜警(通称)』1642年 アムステルダム、アムステルダム国立美術館 通称『夜警』 ついにネタ切れか?今回の「ワインと美術」は、初めてワインが載っていない絵画を題材とする。 一年以上の歳月をかけた後の1642年の年初、正式名称を『フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊』というこの大作は、市警団本 […]
哀愁を纏う女 ロートレック『二日酔い』1887~89年 ケンブリッジ、フォッグ美術館 19世紀後半のパリ。彼女は父親を知らない。彼女は母ひとりに育てられ、5歳でパリへと母と共にやってきた。彼女は11歳の頃から生きるために必死に働いた。洗濯女やお針子など、女性の働き口があまりにも限られていた時代。しかし娼婦などにはなりたくない。危険を伴うが金を稼ぐことができ […]
世にも奇妙な旧約聖書の物語 ロレンツォ・リッピ『ロトと娘たち』1645年 フィレンツェ、ウフィツィ美術館 上の絵画は17世紀に活躍したイタリアの画家、ロレンツォ・リッピの作品である。あなたにはこの絵画がどのような場面に見えるだろうか。二人の女性と一人の男性。いちばん右の年老いた男性は紅潮した顔からすでに酔いが回っているのがわかる。それでも真ん中の女性はワ […]
ガルガンチュアを描く、それぞれの時代の表現者たち ギュスターヴ・ドレ 1873年出版『ラブレー著作集』 ガルガンチュアがワインと食事を楽しむ場面 ワインが大好きなガルガンチュア 子供は、生れるやいなや、世間なみの赤ん坊のように「おぎゃー、おぎゃー」とは泣かずに、大音声を張りあげて「のみたーい!のみたーい!のみたーい!」と叫び出し、あらゆる人々に一杯飲めと言 […]
存在の身近さ カラヴァッジョ『バッカス』1595年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館 神の誘惑 頬を染めて少し酔ったような様子の若者は、こちらをじっと見つめながら左手でワインの入った杯を観賞者へと差し出したばかりだ。液体の表面がグラスの縁でさざ波を立てている。鑑賞者に選択の余地はない。彼の宴への誘いを決して断ることはできない。卓の上に並べられ […]