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【ワインと美術:短編】メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

【ワインと美術:短編】メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

どんちゃん騒ぎ

 

ヤン・ステーン『テラスの陽気な集い』1670年ごろ
ニューヨーク、メトロポリタン美術館

飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。酒に溺れた雑然とした人々の様子が描かれている。宴に出ている人々はとても楽しそうだが、同時に醜悪でもある。真ん中上部では酔っ払った老人が抱き抱えられた小さな子供にワインを渡そうとしている。お前も仲間に入れと言っているようだ。そして真ん中手前の女性は空のワイングラスを片手に鑑賞者を誘惑する。鑑賞者もこのテラスでの陽気な集いに誘われている。

一番左に描かれた滑稽な帽子を被り顔を紅潮させた人物こそ、この絵画を描いたヤン・ステーンである。彼は自身の家庭をモデルに、その”乱れ”を自虐的に描いた。ヤン・ステーンはこのような賑やかな庶民の暮らしをユーモラスに描いた風俗画で有名な、当時のオランダを代表する画家である。現代でもオランダ語で「ステーンの一家」が散らかった様子を意味するほど、人々に親しまれている。

時代を描き留める

以前の「ワインと美術」でも記した通り、空前の繁栄を誇った17世紀のオランダでは富を得た市民たちが芸術のパトロンとなった。絵画においては従来の注文者と異なり教養に乏しい市民の需要に応え、古典を描いたものではなく小型肖像画や親しみやすい風俗画、風景画などの作品が増えた。そして画家たちはそれぞれ競争力をつけるため、狭い専門分野に特化して腕を磨くようになる。風俗画を専門としたヤン・ステーンのように。

築いた富で酒に溺れて人生を楽しむ。そんな人々が当時のオランダにいたこと、そして同時にこの絵画を自虐的に楽しんでいた市民たちがいたこともこの絵画は教えてくれる。酔いがいつか冷めるように、オランダの黄金時代は17世紀の後半には早くも終わりを迎えるが、繫栄の中でワインを楽しむ人々の姿は絵画となって現代まで伝え残るのである。

メトロポリタン美術館展

東京・乃木坂の国立新美術館で5月30日まで開催されている「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」には、15世紀のルネサンスから20世紀初め頃までの様々な時代の作品がニューヨークから出展されている。有名画家の絵画ばかりが、日本初公開の46点を含む65点。今回ご紹介したオランダ絵画も日本初公開の1点として展示されている。

 

篠原魁太

<参考>

メトロポリタン美術館公式ホームページ
【ワインと美術】レンブラントとオランダの光と影。巻き込まれるボルドー。

 

 

 

 

 

 

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