『○○型ワイングラス』は、本当にそのワインに最適な形なのか?最終回
- 2020.05.11
- なるほどのあるワインコラム
- カベルネ・ソーヴィニヨン, グラス, テイスティング, テロワール, ブルゴーニュ, ボルドー, メルロ, 価格, 実験, 温度, 試飲, 赤ワイン, 香り
さて、今回で「○○型グラス」実験レポートも遂に最終回!
これまで細切れに読んで頂いて申し訳無かったのですが、
今回でいよいよフィラディスの辿り着いた結論をお伝えしたいと思います。
ワイン愛好家にとって、もっと幸福な結果を呼び込むグラス選び。
今回の実験レポートを読んで、Firadis WINE CLUBのお客様がもっと自由な考え方で
ワイングラスと向き合って戴けるといいな、と思っています。
それでは最終回、始めましょう!
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≪セッション3:メルロ主体ボルドーワイン2種≫
試飲ワイン①フルール・ド・クリネ 2013年 (メルロ95%、カベルネ・フラン5%)
試飲ワイン②アルター・エゴ・ド・パルメ 2011年(メルロ48%、カベルネ・ソーヴィニヨン37%、プティ・ヴェルド15%)
●まとめ
・INAOグラスについては前2セッションと同見解だった。
・ブルゴーニュグラス大小はカベルネ同様に「果実のフレッシュ感・チャーミングな躍動感・甘やかさ」
を引き出している。全体的には好意的な評価が多かった。
・ボルドーグラスについては2本のワインで意見が分かれた。
メルロ95%のフルール・ド・クリネでは滑らかさを感じるもののやや開き過ぎた印象も受け、
もう少し小さめのグラスの方が良いのでは、という意見も。
一方でメルロ比率が半分程度のアルター・エゴ・ド・パルメは理想的な状態、
ボルドー本来の醍醐味が楽しめると言う意見が多かった。
メルロ比率の高いワインは、柔らかさや果実味を引き出すブルゴーニュグラスでも良いかも、
という選択肢にもメンバーが合意。
≪セッション4:全体総括の意見交換≫
●参加者の意見総括
以上3セッションを終え、議論した内容を総括すると、
- ブルゴーニュグラスは『拡散』のグラス。ワインの持つ要素を外に外に引き出す「演出家」的なグラス。
- ボルドーグラスは『集約』のグラス。ワインの持つ様々な要素を統合し、内に凝縮させる「まとめ役」
ということでした。
それぞれのグラスは、各産地のワインが持つ特性・スタイルを引き出す上で、「一定の正しさ」は備えています。
単一品種でそのワインのテロワール・原料ブドウのポテンシャルが試されるブルゴーニュは「要素を引き出す」グラスに、
複数品種のブレンドにより様々な要素が絡み合うボルドーでは、数多くの要素を「まとめて集約する」グラスに。
グラス形状による香りの立ち方・閉じ込め方や、温度変化による香り・味わいの変化、
その基本ロジックをベースに、各グラスは正しく設計されているのだと言うことを確認できました。
そして・・・今回の検証結果で付け加えたいのは、
「自分がそのワインに対して“求めるもの”」によってワイングラスを使い分けるのも有効、ということでした。
例えば、若いブルゴーニュワインで果実の純粋さ・エレガントさ・華やかさを楽しみたいのならば、
大ぶりのブルゴーニュグラスよりも少し小ぶりなグラスの方が良い。
一方で、同じワインでも複雑さや甘やかさを引き出したいのであれば大きめのグラスを、
赤ワインなのだからタンニンもじゅうぶんに楽しみたいのならば敢えてボルドーグラスを、
という選択肢も決して無いわけではない、ということです。
味わいスタイルによって様々な形状に設計されて、便宜上「○○型」と名付けられたワイングラス。
その形状が引き出してくれる要素の特徴を深く理解していれば、
「○○型」という制約から自由にはみ出して、もっと面白くおいしいワインの楽しみ方が見つかるのかもしれません。
最後に・・・同様のグラス実験をFiradis WINE CLUBの一般のお客さま20名とも実施しました。
その際、1種類のワインをボルドーグラス・ブルゴーニュグラス2つに注いで
ブラインドテイスティングをして戴いたところ、
殆どのお客さまが2つのワインは全く違うワインであると誤認しました。
使用したのはボルドーワインだったのですが、
大部分のお客さまが「ブルゴーニュグラスに入っているのはブルゴーニュワイン」と認識したのでした。
そして、その2つのグラスとINAOグラスに同じワインを入れて、
「グラスワインとしての価格を付けてみてください」という質問をしたところ、
殆どの人が3つのグラスに全く異なる価格を付けたのです。
なんと、INAOグラスだったら500円、ブルゴーニュ大グラスだったら1,000円を超えていても納得、
という方もいらっしゃいました!
グラスの「○○型という名前」にだけ縛られていると、
本当に求めるおいしさから遠のいてしまうこともあるかもしれない。
そして、じぶんのワインの好みを把握し、
そのワインを楽しむときに最もふさわしいグラスを「○○型」に縛られずにチョイスすることが、
究極のグラス選び、なのかもしれません。
そしてそれは時に、1本のワインと出会ったときの印象を、ガラッと変えてしまうのかもしれません。
ワインを楽しむときのグラス選び。
今日から「○○型グラス」という考え方からもっと自由になってみてはどうでしょう・・・?
<終わり>
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さあ、それでは今回のおススメワインです。
ここは当然、皆さんが「自宅でグラス実験」をやってみるなら、の1本でしょう!
ということで、このグラス実験で使ったワインの中で、なかなか面白い結果を楽しめた1本をお薦めしますね。
セッション2の比較試飲で使用したボルドー赤ワイン、
「シャトー・プティ・フレイロン キュヴェ・サラ 2012年」です。
ボルドーグラスを使って飲むことで「要素の集約」がなされ、
とてもまとまりのある上質な飲み口になったこのボルドー産赤ワイン。
一方でブルゴーニュグラスに注ぐと「要素のばらつき・ちぐはぐ感」がはっきりと出てしまったこともあり、
2種類のグラスをお持ちの方が今回のグラス実験を自宅で試してみるのにも最適です。
夏休みの「大人の自由研究」に如何ですか??
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