ワインのある景色―11月 (31)
- 2026.11.01
- ワインのある景色
目次
籠を手に森へ フランスの秋を告げる「きのこ狩り」
夏から深まる秋にかけて、森の中に顔を出すたくさんのきのこ達。フランスでは「きのこ狩り」が秋の風物詩として親しまれ、休日になると籠を手に森を歩く人々の姿を見かけるのは地方ではありふれた秋の風景です。私有地への立ち入りはもちろん禁止ですが、国有地など公共の森林では一定量までは自由に採取できるところが多く、きのこ狩り名人達は人には内緒のお気に入りの場所を持っています。
五感を刺激する 魅惑のフランスきのこ図鑑
森に生えるきのこは実に多彩で、中でも人気なのはセップ茸。イタリア語名のポルチーニの方が日本では浸透しているかもしれません。フランスの松茸とも称されるセップ茸は肉厚で、火を通すとナッツのような香ばしさが立ち上リます。黄金色の傘が波打つジロール茸、傘の下が白くモコモコしている、その名も「羊の足」という意味のピエ・ド・ムートン、「死のラッパ」なんておどろおどろしい名前の黒く細長いトランペット・ド・ラ・モールなども人気です。名前も色々、面白いですよね。ちなみに日本でマッシュルームと言われているきのこはシャンピニヨン・ド・パリ(パリのきのこ)といいます。その昔、パリの地下で栽培されていたことが由来とか。
「森の香り」が繋ぐ きのことワインのマリアージュ
森の中では知らないきのこと出会うことも良くあります。毒きのこなのか?食べられるのか?
達人と一緒に森に入れば安心ですが、知識がなくてもフランスでは大丈夫!採取したきのこを薬局に持ち込むと、薬剤師が鑑定してくれるのです。ですので「悩んだら摘む」の精神で挑みます。そんな気軽さが許されるのもきのこ狩りが身近なレジャーとして根付き、人々の暮らしに溶け込んでいるからでしょう。
摘んだきのこはご近所さんにお裾分けをしたり、その日の食卓を潤して季節の恵みを実感させてくれます。オリーブオイルとバター、ニンニクで香ばしくソテーしてパセリを散らしていただくのは定番中の定番。シンプルながら、メインになるほどのご馳走です。白ワインや生クリームと合わせてソースにしたり、煮込み料理に添えたりと、素朴ながら奥行きのある一皿をワインと共に楽しみます。きのことワインのマリアージュは口福です。
よくワインのテイスティングでは「湿った落ち葉や下草」、「森の香り」といった表現が使われるのですが、こうした香りはきのこが育つ環境ときのこが持つ香りと重なります。つまり、ワインときのこは共通の香りの土台を持っているので相性が良いのです。柔らかな赤ワインを合わせれば土の香りと果実味がきのこの香ばしさを引き立て、まろやかな白ワインならクリームやバターのコクをやさしく包み込むー森の景色が目に浮かぶ、そんな調和を生み出します。
料理の国境を越える旨みと、秋の万能レシピ
森の香りとともに味わう秋の恵み、 それは日本でも同じですね。野生と栽培が入り混じる日本のキノコの多彩さはフランスに負けてはいません。松茸の清らかな香り、舞茸の力強い旨み、しめじになめこ。豊かな森の恵みは土瓶蒸しや天麩羅,炊き込みご飯など滋味深い和食にとどまることなく、リゾットやパスタ、グリルやスープにと自在に使われ、その旨みは料理の国境を軽やかに越えていきます。私はこの季節、様々なきのこをみじん切りにしてオリーブオイルとバター、ニンニクで水分が飛ぶまで炒め、塩コショウをしたものを作り置きしておきます。バケットに塗って、その上にチーズやハムをのせたり、生クリームと合わせてパスタソースにしても美味しく頂けます。きのこがお嫌いでなければ、ぜひ試してみて下さい。きのこが溢れるこの季節ならではの簡単な万能一品です。
2023年5月から、「定期ワインコース」のお客様にお届けする冊子「エフスク」にコラムを連載しています。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)

・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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