ワインボキャブラ天国【第115回】「酵母」 英：yeast 仏：levure

連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです！

取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに！！

ということで今回ご紹介する言葉は・・・

「酵母」
英：yeast
仏：levure (女性名詞：発音は「ルヴュール」）

まず・・・『酵母菌』という種類の菌はありません。

今回のテーマは『酵母』。
『酵母』とは、ワインやビールなどお酒を造る時だけでなく、上の画像のようにパンを焼くとき、その他味噌や醤油、漬物や納豆など発酵食品を仕込み際に使われる菌類をまとめた呼び名です。
但し『酵母菌』という特定の菌がいるわけでは無く、非常に様々な種を含んだ総称的なものです。日本では明治時代頃にビール醸造が海外から持ち込まれた際に、Yeast（イースト）が「発酵の源となるもの＝発酵の母＝酵母」という形で訳されたのがこの名称のはじまりだとのことです。

酵母の種類①野生酵母　英：Wild yeast / 仏：levure sauvage

酵母は、空気中のあらゆる場所に自生している微生物です。
ワイン造りの現場で言えば、畑にも、醸造所にも、セラーにも生息しています。これらの酵母を『野生酵母（Wild yeast / levure sauvage）』と呼びます。

ブドウを収穫してバケツなどに積んでいくと、畑に自生している野生酵母がブドウに付着し、自重などで潰れて流れ出した果汁を勝手に発酵させてしまうことがあります。これらを防ぐためブドウは粒を崩さないよう丁寧に摘み取られ、収穫したら可能な限り迅速に醸造所に運ばれなくてはなりません。

近年、自然派生産者などがこの『野生酵母』に注目し、自分の畑で収穫されたブドウには同じ場所で育った酵母こそが最適という考える造り手も現れてきました。
畑の区画毎に収穫をした場合には、その同じ区画の野生酵母を使用して仕込む…などの徹底ぶりを見せる職人的な生産者もいます。フィラディス取り扱いですとシャンパーニュの『シャルトーニュ・タイエ』がそういった取り組みをしていますね。

『シャルトーニュ・タイエ』のワインはこちら
↓↓↓
https://firadis.net/シャルトーニュ・タイエ一覧

酵母の種類②純粋培養酵母　英 Selected yeast / 仏：levure selectionnee

野生酵母とは違い、「ワイン醸造用」「日本酒醸造用」など目的別に培養された酵母を『純粋培養酵母（英 Selected yeast / 仏：levure selectionnee）』と呼びます。
培養酵母には、例えば発酵させる対象である「ワイン用」の中でも発酵温度やスピード、又は「フルーティな香りをより強く出す」などワインに特定のキャラクターを与える/個性を引き出す種類の酵母なども存在し、生産者は醸造法や目指すワインによって様々な種の酵母を使い分けています。

日本酒の世界では、ラベルに「きょうかい7号酵母使用」「1801号使用」なんていう表記を見かけますよね。これは日本醸造協会という酵母の培養期間が様々な酵母を開発し、蔵元に販売をしているものです。ある酵母を使ったお酒が品評会で金賞などを取ると、多くの酒蔵がそれに追随して同じ酵母を使う…ということもありますよね。日本酒通の人は、酒米の種類や精米度合いだけでなく何号酵母を使っているのか、なんていうところもチェックするようです。

日本醸造協会のホームページには、酵母に関する様々な読み物が掲載されています。酵母に関する誓いを深めたいと思ったら、是非見てみてください。

『日本醸造協会ホームページ』
↓↓↓
https://www.jozo.or.jp/yeast/story/　

酵母は糖をアルコールと炭酸ガスに分解するはたらきを持っているため、体内でも同様に糖が吸収されるのを抑制するそうです。また、食物繊維が多く含まれており、腸のはたらきを活発にして消化を助けるとともに、βグルカンという成分が腸内の免疫力を高める効果も。「腸活」のために発酵食品を多く食べたほうが良い、というのはこういう理由があるからなんですね。

それでは今回はこのへんにしておきましょうか。酵母による「発酵」のプロセスに関しては以下リンク先のコラムでより詳しく細かく紹介をしておりますので、今回の内容でご興味を持たれた方は是非読んでみてくださいね。

今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました！

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ワインボキャブラ天国【第108回】「アルコール発酵」英：alcoholic fermentation 仏：fermentation alcoolique

ワインの醸造について①