あ、せかんどおぴにおん 第7回「フアン・ヒル シルバー・ラベル」
目次
『あ、せかんどおぴにおん』第7回
「フアン・ヒル シルバーラベル」
このコラムについて(いつも同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
6回目にとりあげるのは、フアン・ヒル シルバーラベルです。
まずは一番人気のこれをお試し戴きたい!
商品ページを見てみると、一番上にキャッチコピーとしてこのように書いてあります。
まずは一番人気のこれをお試し戴きたい!開業以来の累計ご注文本数断トツNO.1のフルボディ赤です。
フィラディスは開業してから丸6年が経っています。シルバーラベルはその6年間で最もご注文をいただいている商品、いわゆるお店の顔です。Firadis WINE CLUBのワインの品質は、このワインを飲んでいただければわかる、というほどの自信のある一本なのです。常にイチ押しであり、たくさんのセットに入っている。おそらくメールマガジンをお読みいただき、このコラムまで読んでいただいているようなお客様であれば、一度はお試しいただいた経験があるのではないでしょうか。
ただ、改めてこのワインは何がすごいのか、あるいはどうしてこんなに美味しいのか。その理由、背景を改めて知って頂くことで、納得をもってワインを楽しんでいただけることができるかと思います。
もちろんまだ飲まれたことのない方はぜひこの機会に。そして美味しくないと思われた方は、ぜひ手厳しいご意見をレビューにお寄せいただければ幸い(?)です。
スペインワインの魅力
まずは大きなところから。スペインワインの魅力についてです。挙げればきりがないかもしれませんが、ひとまずこんなところでしょうか。
・比較的暑い気候であることから果実感たっぷりのわかりやすい味わいが楽しめる。
・フィロキセラ(害虫)の被害を免れたような樹齢の高いワイン(100年以上!)を堪能できる。
・土着品種が豊富で地域ごとの個性が多様である。
・欧州経済共同体に加盟した1986年以降革新的に品質が高まり、世界的な注目を集めるワインが次々に誕生している。
などいろいろあります。ただあえてこれらをひっくるめてスペインワインの魅力を一言で表すのであれば、
コスパが高い。
これに尽きると思います。品質の向上に価格が追い付いていないのです。
特に低価格帯のワインにおいては、価格に対する品質の高さは圧倒的。
ですから3,000円以下でとっておきの30本を選ぶ、Firadis WINE CLUB30はスペインワインの数が多いのです。
このコスパが高いワインの典型例、その究極がシルバーラベルなのです。
フミーリヤという産地について
海抜700-850m地点に広がる畑の土壌は、その厳しい自然条件ゆえに、石がゴロゴロとした砂っぽい石灰質で痩せている。
夏は40度に達するほど暑く、冬はしばしば氷点下に見舞われるほど寒さが厳しい大陸性気候のフミーリャは、年間 3000時間もの日照時間に恵まれるが、降水量はわずか300mmと非常に乾燥した土地である。〜土地固有のブドウであるモナストレルは、古樹では樹齢50年を超え、若樹ではモナストレルに加え、シラー、カベルネ、メルロー、プティ・ヴェルド等のフランス系品種も栽培されている。どのブドウもこの痩せた土壌に相性が良く、厳しい環境の中で収量は自然と制限され、粒の小さいブドウからはフルボディで香り高く、色調、アロマ共にリッチなワインが生まれる。土地の性格をそのまま引き出したワインは、スパイスとフルーツのニュアンスに溢れ、また同時に、畑の海抜の高さから、凝縮感だけでなくエレガンスも備えている。
さて、シルバーラベルの産地、フミーリヤはスペインの南東部の内陸に位置します。写真からも分かる通り特別厳しい環境ということで、収量が自然と制限された猛者たち(=ブドウ)が生命力を発揮して力強い味わいになっていくわけです。しかも寒暖差の大きさはただ力強いだけでない、酸とのバランスが取れ香り高い、エレガントなワインをもたらすという素晴らしい産地です。
この文章の中だけでも、先ほど触れたスペインワインの魅力が詰まっているのが分かるでしょうか。暑くて果実感たっぷり。フィロキセラ前のブドウではありませんが、樹齢の高さ。土着品種=モナストレル。モナストレルはフランスではムールヴェドルと呼ばれる品種ですが、スペインのこの辺りが原産地である可能性が高く、歴史的に(なんと二千年以上!)この地で栽培されてきた品種です。
そしてもう一つ先ほど触れたのは、世界的に注目を集めるワインという要素でした。もちろんこのシルバーラベルも世界的に注目を集めていると言っていいのですが、もっとわかりやすく注目度の高いワイン、フアン・ヒルは実はその立役者でもあるのです。
フアン・ヒルは立役者
オーナーのミゲルさんです。
4代目当主のミゲル・ヒルはフミーリャの伝統を守る昔ながらのワインメーカーである一方、現代スペインワインの立役者でもある。スリー・リバーズを手掛ける天才醸造家クリス・リングランドを醸造監修に迎え、スペイン最高峰のワインを目指した壮大なプロジェクト『エル・ニド』では、彼自身がオーナーの一人となり、見事フミーリャのポテンシャルとモナストレル本来の質の高さを世界に知らしめた。
ここで疑問になるのは、『エル・ニド』とは何か。実は『エル・ニド』とは、スペインのフミーリヤのポテンシャルを世界に知らしめようと、フアン・ヒルのオーナーであるミゲル氏がオーストラリアの天才醸造家、アメリカのワインインポーターの2人と協力して始めたワインプロジェクトのことです。つまりフアン・ヒルのオーナーはエル・ニド名義で別にワインを造っているということです。
しかし、これまでフィラディスワインクラブではほとんど触れられることがなかったというのはそれもそのはず、、残念ながら日本への輸入はあまりにも希少であり、全てレストランや酒販店向けに完売してしまうため取り扱いができていないからです。誠に申し訳ございません。
フィラディスの会社ホームページのワイン紹介では、エル・ニドの評価について以下のように記しています。
ファーストヴィンテージの2002年が、世界的ワイン評価誌にていきなりの初登場96点を叩き出し、続く2003年も97点、そして2004年も99点を獲得。点数と共に常に最高の言葉で絶賛され、ウニコ、ピングス、テルマンシア、レルミタといった最高峰スペインワインのひとつとして、国内外問わず確立した存在となった。かの有名なスペインの3つ星レストラン、サン・パウでもオンリストされている。古樹から採れる、完璧に成熟した最高のブドウのみを厳しい選果を経て使用する信念の下、フミーリャのポテンシャルは見事に示され、彼らの大志は成功を収めた。今後更に、世界から渇望されるワインとなることに、疑う余地はない。
これぞまさに、世界的に注目を集めるワインということです。
それでもエル・ニドは買えないじゃないかよ、と思うかもしれません。しかしここであえて触れたのは、フアン・ヒルのワイン造りの技術の高さを物語るためであり、なおかつ彼はフミーリヤを世界に広める立役者であることを強調するためです。
ブレンド用とされてきた品種モナストレルにこだわり、徹底的に品質を高め世界で勝負し、この品種ならびにフミーリヤを世界に知らしめる。それはこのシルバーラベルも同様です。圧倒的なコストパフォーマンスを発揮し、現地では数多くの星付きレストランで使用され、泣く子も黙るワイン評論家ロバート・パーカーには「価格が5倍の一流ボルドーに引けをとらない」と言わしめ、そしてスペインから遠く離れたこの日本のワイン通販サイトにおいて、累計販売数No.1の一番人気ワインになっているのです。
というわけで、いよいよ期待がかなり高まってきたというところで、ようやく(お待たせいたしました)テイスティングです。
いよいよテイスティング
≪店長のテイスティングコメント≫
ワイン商社フィラディスがトップレストラン向けに販売するワインで堂々の年間販売数量1位を誇る超人気商品がこの『フアン・ヒル シルバー・ラベル』。世界的に有名なワイン評論家ロバート・パーカー氏が、この価格帯のワインとしてはあり得ない程の絶大な評価をしたためでしょうか、スペインワインの枠を超え、フレンチやイタリアン、中華や和良くまでなどの専門レストランでもこぞって取り扱いを頂いています。そして勿論、CLUB30の2015-2019年の販売本数ランキングでも、5年連続で2位を大きく引き離してのNO.1!!沢山のお客さまに繰り返しご注文頂いている、絶対ハズさないと自信を持って薦める1本です。
イベント等でお客さまに聞くと、その人気の理由は『とにかく濃厚でフルーティ。凝縮感と力強さが溢れているのに、何故かするすると飲めてしまうから!』ラズベリーやチェリーなど様々な赤い果実を想わせる甘やかな果実味とヴォリューム、それでいて渋みはあくまでも控えめで柔らかく、パーフェクトなバランスが保たれています。そこに樽熟成由来の少しスモーキー&スパイシーなニュアンスが、飲みごたえと本格感を後押し。これだけ力強く濃厚なワインでありながら、ボトル1本をまったく飲み飽きずに楽しめてしまう万人受けする「飲みやすさ」のあるワイン。
さていよいよテイスティング。
一言でいえば、私はこのワインをまとまりのワインだと思いました。
まずは香りから。カシス、ブルーベリー。私はレーズンとまで言っていいような食欲をそそらせる果実の香りを感じました。それから土っぽさ、果実を持ち上げるように支える樽香が香りの厚みを生んでいます。
そして味わいは。圧倒的な存在感のある果実。収量が制限されたことによる凝縮感の高まりもここに結実しているのでしょうか。しかし店長もいうように「飲みやすさ」が存分にあるのは、やはり涼やかさを感じさせる酸とのバランス。しっかりとした量がありながら柔らかいタンニン。これらが果実の強さをただ甘いだけではない、飲み飽きないワインに仕立て上げています。このまとまりが絶妙です。
ワインのテイスティングでは、最初に酸と果実感を強く感じて、後半にタンニンを感じる、とされていますが、この移行期間全てが心地よく、一体となっています。この夏に飲むなら、少しだけ冷やしていても美味しいかもしれません。十分果実の勢いを感じると思いますので。
ここのところあまり批判ができていませんが、一番人気商品の実力は、やはり素晴らしいというほかないです。。
たくさんの異論反論をレビューにてお待ちしております。
また、こちらでは、生産者インタビュー。それから西岡パパのワインペアリング奮闘記はこちら。これらも、よろしければぜひ。
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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