ワイン職人に聞く、10の質問【第85回】カン・フェイセス（スペイン・ペネデス地方）

≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー！≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第85回
『カン・フェイセス（スペイン・ペネデス地方）』
醸造家：ジョゼップ・マリア・ウゲットさん（写真）

連載シリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、今回話を聞いた生産者は1768年に創業されたスペインの老舗ボデガ『カン・フェイセス』。シャンパーニュのミレジムのように「良年しか仕込まない」という徹底した品質追及で、250年もの長きに渡ってワインを造り続けてきた生産者です。

今のスペインは確かに新興勢力・・・新進気鋭の若手ワインメーカーに注目が集まりがちですが、この地で古くから凄いワインを造り続けてきた職人たちも確かに存在しています。彼らの礎なくして、今のスペインワインの世界的隆盛は決して成し得なかったはず・・・。伝統の技を伝承させてきた老舗ならではの哲学とスピリットに、今回も10の質問で迫ります！

Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか？
⇒家族が脈々と受け継いできた伝統だから、その中に入ることはごく自然なことだったな。
僕自身も「歴史を繋いでいく」ということに強い興味と責任感があったし、何よりも自分たちの生まれた場所でおいしいワインを造っていくなんて素晴らしい仕事だと思うんだ。

Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は？
⇒そうだね‥これはある意味役得と言えるかもしれないけど、老舗ワイナリーの地下セラーに眠るオールドヴィンテージを味わえるとき。試飲、ではなくて心の底から味わって楽しんじゃうね！

Q3:その反対に、一番辛い（辛かった、大変な）ときは？
⇒それは何より、お天気が協力的じゃないとき、だね・・・。
ブドウが熟していく段階、そして収穫前の段階はとにかく「おとなしくしていてくれ」って思うんだ　笑

Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか？
⇒春から夏にかけて、ブドウが育つ間100％の注意力と観察力を持ってそのクオリティを高めていくことだろうね。

Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは？
⇒「正直で偽りのないワイン」。
ワインは生まれた土地ならではのオリジナリティが余すところなく表現されていなくてはならないと思う。

Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら？
⇒まず、産地やブドウ品種によって「偉大なワイン」「素晴らしいワイン」の概念は異なると思う。
僕は幸いにもこれまでの人生で沢山のワインを味わう機会に恵まれてきて・・・だからこそ思うのは「最高のワイン」をひとつだけに絞って選ぶのは公正な考え方じゃないってことかな。

Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒うちのシャルドネだったら、オーブン焼きにしてソースでしっかりと味付けをしたシーフード料理。日本の醤油も相性が良いと思うよ。
赤の方は様々なブドウ品種を使って複雑性のあるタイプなので、ジビエなどちょっと個性的な風味の肉料理やチーズがおすすめだよ。

Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか？
⇒世界中に魅力的でユニークなワイン産地はあるけれど、それでも僕はこの地中海地域でのワイン造りに執着したいな。何と言ってもここは歴史の中にワインがはじめて誕生した場所・・・人で言えば、赤ん坊の揺りかごみたいなところだからね！

Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒ひたすらワインに問いかけ続け、その声を聴く・・・かな。

Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを！
⇒ワインのコルクを開ける時には、ボトルの中に詰められたその土地の歴史や風景を想い起して欲しいな、と思う。
僕らはワインを造る時に、自然が長い時間をかけて創り上げてきたテロワールの個性に対して常に謙虚であろうとし、そして大きな敬意を払うようにもしているんだ。僕らのそんなアプローチを感じ取ってもらえたら、本当に嬉しいよ！

ジョゼップ・マリアさんへの一問一答インタヴューは、以上です。今回のインタヴューは如何でしたか？？
ワイン造りの仕事をしていて一番嬉しい瞬間が「セラーにある古いワインを飲めること」という回答は初めてだったかもしれませんね　笑　素晴らしい醸造家なのに考えることは僕と大して変わらないので、なんだか妙に親近感が湧きました。
何と言っても1768年創業のワイナリー。一体どんなお宝がセラーに眠っているのか・・・ワイナリーを訪問したらこっそり奥の方まで迷い込んでみたいものです。

『カン・フェイセス』、Firadis WINE CLUBの毎年の入荷数量は決して多くありません。だからこそ、こういう老舗の作品は丁寧に、大切に推し続けていきたいと思っています。
伝統の技が遺憾なく発揮された「成熟の極み」とも言える作品、贅沢にお楽しみください！

『カン・フェイセス　ネグレ・トラディシオ』

『カン・フェイセス　シャルドネ』