【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【12月】
このコラムではブドウ畑と生産者の1年に寄り添いながら、ワインのある様々な景色をお伝えしていければと思っています。
12月。街が1年でいちばんキラキラと輝く月。クリスマスまでの数週間、街中もショーウインドウも華やかなイルミネーションで彩られ、とても心躍るシーズンの到来です。
目次
クリスマスマーケット
キリストの降誕を待ち望む12月25日までのアドヴェント(待降節)の期間、ヨーロッパでは各地でクリスマスマーケットが開催されます。その発祥はドイツ。世界最古のマーケットの歴史は中世まで遡るといわれています。可愛らしい小さな屋台が広場に立ち並び、まるでおとぎの世界に迷い込んだような雰囲気の中、その国、その地方の伝統工芸やクリスマスオーナメント、伝統料理やお菓子などが数多く販売されていて、地元の人々や観光客で賑わいます。
ホットワイン
そんなクリスマスマーケットに欠かせない飲み物といえば、ホットワイン。ドイツではグリュー・ワイン(Glühwein)、フランスではヴァン・ショー(Vin chaud)、 イタリアではヴィン・ブリュレ(Vin brulé)といいます。作り方はいたって簡単。ワインにシナモンやクローヴ、ナツメグなど数種類のスパイスと砂糖や蜂蜜などの甘味料、オレンジやレモンなど柑橘類を加えて温めれば出来上がり。赤ワインが定番ですが、白ワインで作ったものも時々見かけます。マーケットでは毎年違うオリジナルデザインのマグカップで提供しているところも多く、飲み終わった後に持ち帰ることもできるので、マグカップのコレクターもいるほど人気の飲み物なのです。
家庭でも簡単に作れるので、ぜひ作ってみて下さい。スパイスの配合や使用するフルーツによって味わいも変わりますし、ホットワイン用のスパイスミックスも市販されています。使用するワインはお手軽なもので。私は飲み残しのワインや口に合わなかったワインなどで作ったりもします。アルコール分を残しても良し、しっかり煮詰めてアルコールを飛ばしても良しです。フゥーと香るスパイスとフルーツの甘酸っぱさが美味な、寒い冬のほっとする1杯です。
大役を終えたぶどう木
寒さがだんだん増してくる頃、葉がすべて落ちて見通しの良くなったぶどう畑には生産者が戻ってきます。冷たい空気の中、耳を澄ますと「パチン、パチン」という音が。早くも来年のシーズンに向けて動きだしているのです。
大役を終えたぶどう木は12月頃になると樹液の流れが止まり、休眠期に入ります。木が静かに眠っているこの時期、今シーズンに新しく延びた枝をハサミで1本1本剪定していきます。来年の芽吹きをイメージしながら、寒い中で黙々と木のバランスを整えていく予備剪定と呼ばれるこの作業が、来年のブドウの品質を左右する最初の一歩となります。剪定した枝は、私の住んでいたブルゴーニュ地方の場合、ドラム缶でつくった一輪車に入れて燃やします。燃やすことで枝についている(かもしれない)虫や病気を完全に駆除するのです。さらに寒い地域では根元に土を盛ったり藁を撒いたりして、ぶどう木を凍結から守る準備も進めていきます。あちらこちらの畑で枝を燃やす煙が立ち上る景色は、寒い冬の到来が近づいていることを意味しています。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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