ワイン職人に聞く、10の質問【第83回】ジャスト・ビー・ワインズ(スペイン リアス・バイシャス地方)
- 2021.07.04
- ワイン職人に聞く、10の質問
- アルバリーニョ, グラス, スペイン, ソムリエ, フランス, ペアリング, マリアージュ, ワイナリー, 写真, 哲学, 生産者, 白ワイン, 職人, 試飲
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第83回
『ジャスト・ビー・ワインズ(スペイン リアス・バイシャス地方)』
醸造家:ベレン・バレラさん(写真一番右)
連載シリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、今回話を聞いた生産者はスペイン西部、大西洋に面した潮風薫るワイン産地リアス・バイシャスで2015年に創業したばかりのニューカマー『ジャスト・ビー・ワインズ』。オーナーで醸造家のベレン・バレラさんが10の質問に答えてくれました。
味わいに潮のニュアンスを感じさせる個性的な土着品種「アルバリーニョ」は、写真のように頭よりも高い棚仕立てでブドウを栽培するのが特徴的。日本の食用ブドウの栽培法とも似ていて、何か親近感を感じますよね。最近ではその塩っぽいニュアンスと豊かな果実味のバランスが世界のプロソムリエたちから注目を集め、新鮮な素材を生かした料理とのペアリングに良く合うワインとして人気が急上昇しています。
おばあちゃんから子供たちまで、家族総出でブドウ栽培に取り組み、世界のワインファンに新たな味わい体験を拡げようと取り組む新興ワイナリー『ジャスト・ビー』。ファミリーを率いるベレン・バレラさんのインタヴュー、お楽しみください!!!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒私は元々経済学や財務を学んできた人間だから、もともとはビジネス、マネジメントの世界で生きていくつもりだった。大学卒業後にリアス・バイシャスの大きなワイナリー「PACO&LOLA」で仕事をするようになって・・・その仕事の中でワインと恋に落ちてしまった 笑
実は私の実家も小さなワイナリーでね・・・昔からアルバリーニョのワインだけを造っていたのだけど、ある時からは元詰めをやめてブドウを全て協同組合に売る状況になっていた。「PACO&LOLA」で働きながら、私は自分のルーツである実家のワイナリーについて色々考える機会があった。そしてあるとき「もう一度、家族のワイナリーを復活させたい」と思うようになったのよ。
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒毎年、出来上がったワインを瓶詰めするときね。その年に家族・チームと一緒に一生懸命取り組んできた仕事の成果がボトルの中に詰められて、それを初めて味わうときは本当に素晴らしい気分。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった、大変な)ときは?
⇒ワイナリーが一番大変な時は、疑いようも、迷いようもなく収穫の時。私たち人間には決してコントロールしようのない気候や環境要因の中、何か月にもわたって困難を乗り越えてきたブドウたちがどんな結果を生み出してくれるのかにやきもきしながら、自分たちがこれまでやってきたことを信じるしかない、そんな時だから。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒あらゆる局面の、ひとつひとつの判断全てが大切だと思う。畑やセラーでのほんの小さな行動が、出来上がりのワインに大きな変化をもたらすこともあるから。私は的確な判断の積み重ねこそが良いワインを造ると信じているから、どこかひとつのプロセスに重きを置くことは無いわね。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒キャラクターのはっきりしたワイン。
やっぱりワインは地のもの、ブドウが育ったその土地のアイデンティティが反映されてこそ、と思う。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒私が一番大好きなワインは、D.O.モンテレイの『キンタ・ダ・ムラデッラ』。世界レベルで評価されるべき、スペインワイン最高峰の一つだと思うわ。その中でも特に素晴らしかったのが「ゴルビア・ブランコ 2014年」、ガリシア地方固有の土着品種ドニャ・ブランカ100%で造られるとても個性的なスタイル。このワインにもう夢中なの 笑
*訳注:ベレンさんお気に入りの『キンタ・ダ・ムラデッラ』は、ワイナリー和泉屋さんで取り扱っています。興味がありましたら是非飲んでみてください!
↓↓↓
https://wizumiya.co.jp/products/list?category_id=927
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒『ジャスト・ビー』は、まさきさっき書いたような「キャラクターのはっきりしたワイン」。果物らしい味わい、そして酸とミネラルが豊富に含まれていて、幅広い料理、味の方向性に合わせられるスタイルなの。それでも何か一つの食材を・・・と言うなら、やっぱり新鮮なシーフードかな。海の近くで産まれたワインだからね。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒チャンスがあるならワイン造りをしてみたい場所は世界中に沢山あるけど・・・やっぱり私はフランスワインに弱いのよね 笑 だから、選ぶならフランスのロワール地方、そこで自分の理想のワインを造りたい。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒「グラスの中で、畑に語らせる。」
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒ワイン好きの皆さんが、新しい味・新しいワインにトライする機会を沢山持っていてほしいな、と思う。新たな味わいの発見・出会い、そしてワインそれぞれが持つストーリーを楽しんで!
・・・ベレンさんへの一問一答インタヴューは、以上です。今回のインタヴューは如何でしたか??
ベレンさんからの回答、自分の大好きなワイン、ワインを造ってみたい地域について聞いたところなどは「I have a weakness for ~」と答えられていて、「私はあのワインに弱いのよね」みたいな感じでなんだかとても可愛かったです 笑
今回インタヴューを訳すのにあたって、そう言えば『ジャスト・ビー』をしばらく飲んでいないことに気付いて反省、改めてじっくりと試飲したのですが・・・やっぱり、本当においしいワイン!!たっぷりの果実味にほんの少しの塩っぽさ、そして溌溂とした酸・ミネラル。日本の家庭料理に実に良く合います。
今これを訳しているのは6月、ちょっと湿度が高く蒸し暑い日。こんな日の夕暮れに、良く冷えたアルバリーニョとまずはカリッと焼いた厚揚げにネギと大根おろし・・なんて感じでしょうか。夏の晩酌にもってこいの白ワイン、是非飲んでみてください!
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