今月のおすすめワイン本【2021年4月】ワイン職人ファミリーの年代記を綴ったフランスのコミックエッセイ・・・とても素敵な本です!
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本を毎月1冊ご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ、今回はフランスのBD(ベデ=バンド・デシネ=フランスで漫画のことを称します)から、ワイン生産者一家のおじいちゃんがかつてのワイン造りや戦争体験などを語るとても素敵な一冊をお薦めしたいと思います。
『じいちゃんが語るワインの話 ブドウの年代記』
(フレッド・ベルナールさん著 田中裕子さん訳/エクスナレッジ 税込2,090円)
画像掲載した表紙の絵から、その独特な水彩画のタッチがお分かりいただけるかなと思います。
全編にわたって、ファミリーがドメーヌを構えるサヴィニー・レ・ボーヌのブドウ畑や街並みが色彩豊かに描かれていて、ところどころに挟み込まれる風景の1枚画を眺めているだけでも楽しめる作品です。
ワイン造りの仕事は継がずバンド・デシネ作家になった主人公フレッドが、大好きな「じいちゃん(頑固なワイン職人、90歳)」からワインにまつわるあれこれを聞く・・・という仕立てになっています。
その話題は酒飲みならではの笑える豪快な話からワイン職人としての哲学やエピソード、そしてじいちゃん若かりし頃、第二次世界大戦中ドイツ占領下のブルゴーニュ地方の暮らしぶりなど様々なテーマに渡っています。
約150ページ、非常に読み応えがありますよ!!
僕はこの本を購入してから飽きずに何度も繰り返し読んでいまして、大好きなページが沢山あるのですが・・・
特に気に入っているのは主人公がおじいちゃんにスペインのワインカクテル「カリモーチョ」について話す場面。
「カリモーチョ」についてご存じない方はどんなカクテルなのか是非調べてみてください。
実は結構昔からあるカクテルなのですが、このお話でワイン職人のじいちゃんがどんな反応をするのか・・・は読んでみてのお楽しみ。
「じいちゃん」のキャラクターにげらげら笑いながらも、おそらくこの本を読み終えた人の印象にいちばん残るのは、やはり第二次大戦中のお話かと思います。
ワインを見つけたら没収してしまうドイツ兵達の目を盗んでワインを運搬する話、隠れ家のカーヴで密かにワインを楽しむために命を懸ける話・・・ズシリと心に響きます。
あの平和でのどかなブルゴーニュが戦時中はこのような状況だったなんて、想像もできないこと。
今日本でおいしいブルゴーニュワインをゆっくりと楽しめること、本当に幸せなことなんだな・・・と、改めて感じました。
酔っぱらいの楽しい与太話と「知っておかねばならない、かつての話」。
軽くなりすぎず重くもなりすぎず、絶妙なバランスで読ませてくれる一冊でした。
フレッド・ベルナールさんの作品で日本語訳がされているのは残念ながらこの1冊だけのようですが、その他の作品も非常に面白そう。
この本をきっかけに日本でも出版されるのを期待します。
最後に・・・この作品はところどころにエドモンド・デ・アミーチス(*イタリアの作家で、『母を訪ねて三千里』の原作者)が書いた「ワインがもたらす心理的影響」という文章が引用されています。
これが非常に良いことが書いてありまして、原文を読んでみたいのですが残念ながら日本語訳の書籍などを見つけることが出来ませんでした。
どなたかイタリア文学に詳しい方、読める場所をご存じでしたら教えてください!
それでは今回はこのあたりで。
次回も、ワイン片手に楽しみたいお薦めの一冊をご紹介させて戴きますね。
*本日ご紹介した書籍『じいちゃんが語るワインの話 ブドウの年代記』詳細については版元エクスナレッジさんのページをご参照ください。
↓↓↓
https://xknowledge-books.jp/book/9784767820088
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