新発想マリアージュに出逢えるお店 第一回 蜀郷香(シュウシャンシャン)の四川料理
- 2022.02.28
- 新発想マリアージュに出逢えるお店
目次
新発想マリアージュに出逢えるお店
コロナ禍で外食をする機会は減ってしまいましたが、やはり自宅では味わえない魅力が飲食店にはたくさんあると思います。プロのお料理、サービス、素敵な店内の雰囲気など、しっかりと外食ができる状況になれば、すぐにでも堪能したいものですね。
申し遅れました。ワイン専門商社フィラディスの営業部門、中小路と申します。
私は日々飲食店様や酒販店様にワインの販売をするだけでなく、ワインに関連するあらゆる面でサポートをしております。中でも重要なのがマリアージュについてです。そのお店ならではのお料理にどんなワインを合わせると最も美味しく感じ、お客様に最も喜んで頂けるのか。特に難しく同時にやりがいを感じるのが、ソムリエさんがいらっしゃらないことの多い和食、焼肉、焼鳥、中華などのお店です。料理長や大将と一緒に試食、試飲をしながらじっくりと選んでいます。
美味しいワインを飲みたいけど、洋食以外のお店に行きたい、かつ素敵なマリアージュを楽しみたい!
そんなグルメな方に少しでもお役に立てる様に今後、シリーズとして私が出会った素敵なお店とお料理のマリアージュをご紹介させて頂きます。
*もちろんご自宅でワインを楽しむ際にもきっと参考になる情報ですので、自身でのマリアージュにもぜひ役立てていただければと思います。
四川料理とワインのマリアージュ
蜀郷香(シュウシャンシャン)にて
四谷三丁目駅を降りて、外苑東通りを歩くこと3分。杉大門通りに少し入った建物の2階にあるのが蜀郷香です。オーナーシェフの菊島弘従さんは20歳の時に四川料理界の巨匠、趙楊氏に師事。新橋の名店、趙楊では調理場を2人で切り盛りしていました。銀座交詢ビルに移転後は、日本で初となる、スーシェフとして金牛国賓宴席(一名300,000円コース)を調理。その後は六本木メビウス400、銀座趙楊の料理長を経験し独立。12席の小さなお店、蜀郷香をオープンしています。
四川の伝統宴席料理を得意とされていて、メニューには麻婆豆腐や回鍋肉など四川料理の定番から、自家製チャーシューに牛肉の四川煮込み、火鍋や薬膳料理など、まさに趙楊氏直伝のメニューがずらり。激辛メニューはもちろん、薬膳中心のコース、四川の郷土料理まで、確かな腕と柔軟なアイデアで、思う存分四川料理の真髄を楽しませてくれます。
辛さの奥にある旨味を引き出すワイン
四川料理というと、テレビなどで紹介されているイメージから「辛さ」を思い浮かべがちではないでしょうか。
私も激辛料理は大好きなのですが、菊島シェフのお料理の真髄は旨味にあります。すべての味の基本となるスープは毎日仕込んでいて、鶏ガラと豚ガラ、ネギ、生姜を入れ丸2日間煮込んでいます。
辛さというのは、人間の感じる五味(甘味、塩味、旨味、酸味、苦味)には当たらず、知覚の対象としては「刺激」にあたります。当然、口の中に刺激だけを与えても美味しく感じるはずはありません。この辛さという刺激が際立たせ、引き出す甘味や旨味こそが四川料理を美味しいと感じる理由の一つではないでしょうか。
ワインを合わせるポイント
ほんのりとした甘味を
お料理の大事な甘味、旨味を生かすためには、ほんのりとした甘味のあるワインが相性〇です。甘くなりすぎると辛さの奥にある旨味までをも覆ってしまいます。一見、辛さを中和してくれて食べやすいかも?と感じるかもしれませんが実はお料理の良いところをこれでもかと見えなくしてしまいます。
辛さと同じ「刺激」であるタンニン(渋さ)の強くないワインを選ぶ
口の中で異なる刺激が複数存在すると、おいしさを知覚するどころではなくなってしまいます。赤ワインでも白ワインでも渋さの少ないものの方が合わせやすかったです
真髄である旨味を引き出すために
酸が強いと口の中で長く続く旨味をリセットしてしまう効果があるため、あくまでも酸は穏やか、それでいて旨味がしっかりと乗っていて、程よい甘さがあり、テクスチャーが柔らか―。そんな旨味に同調してくれるワインが相性よく楽しめました。
香りもお料理の大事な要素です
特に菊島シェフのお料理は複雑にスパイスを絡めて、食欲をそそる絶妙な香りがたちのぼります。そこに、合わないフレーバーを足すワインよりは、同系統の香りで同調させつつ、香りに複雑さをもたらせるタイプのスパイス感をもったワインの方がお料理を更に昇華してくれました。
ぜひ試してほしい!このお料理とこのワインのマリアージュ!
お料理とワインのタイプごとに様々な合わせ方があるのでご紹介いたします!
シャンパン編
☆麻婆豆腐×Saint Anne Brut(サンタンヌ・ブリュット)/Chartogne Taillet(シャルトーニュ・タイエ)
こちらは3種の赤白葡萄品種が程よくブレンドされています。四川料理に合わせる時に大事な「酸で旨味を切ってしまわない」を非常に体現できる1本です。シャンパーニュでは珍しい砂質土壌由来のふんわりとした口当たりと上品で繊細な酸が料理に寄り添います。じわじわと感じられる旨味は見事に麻婆豆腐の旨味と同調し、香りも複雑さをプラスしてくれます。
[ワインの味わいコメント]リンゴの蜜のふくよかさとさわやかさを思わせるエレガントな香りが心地よい。旨みとして感じる細やかなミネラル感と果実のジューシーさに富むアタック。ハチミツやバターのふっくらとしたボリュームに加え、長期熟成の複雑さ、そしてアフターのフレッシュさが全体のまとまりを良くしている。高く広く華やかに感じられるのは、砂を多く含むメルフィのテロワールならでは。
白ワイン編
☆脆皮鳥のサクサク揚げ×Chardonnay Dutton Ranch(シャルドネ ダットン・ランチ)/Dutton Goldfield(ダットン・ゴールドフィールド)
敢えてブルゴーニュではなく、カリフォルニアのシャルドネ。酸が高すぎず、強すぎない果実味が鳥の脂の旨味と同調して後半にかけて旨味、甘味をグングン引き立てます。樽の香りは、火を入れた焦がしのニュアンスとしっかり合うので鳥のパリパリと香ばしく揚げた皮との相性が抜群です。
[ワインの味わいコメント]果実の力強さとリッチさと偉大な酸のストラクチャーを備えた、クラシックなロシアン・リヴァー・ヴァレーのシャルドネを体現するため、グリーン・ヴァレーを中心に様々な区画のブドウをブレンド。熟したオレンジやアプリコット、ハーブ、バニラがほのかに香り涼しげな香り。透明感ある優しい果実に細かな酸が継ぎ目なく溶け込み、目の詰まった複雑な味わいを織りなす。余韻は長くクリーミー。
赤ワイン編
☆水煮牛肉(牛肉の四川煮込み)×Brunello di Montalcino Campo di Marzo(ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ カンポ・ディ・マルツォ)/Il Valentiano(イル・ヴァレンティアーノ)
熟成由来のブラックペッパーや大地の香りが見事にお料理の香りを引き立てます。タンニンは強すぎないものの、しっかりとシルキーになっているので柔らかな牛肉のテクスチャーと見事にマッチし、熟成由来の旨味がこのお皿の素晴らしい旨味に寄り添いました。
[ワインの味わいコメント]
ラズベリーなど赤系果実のエレガントなアロマに、樽由来のバニラや熟成由来のスパイスのニュアンス。しなやかで流れるような味わい。充実した果実感と、高い標高の畑の涼やかな気候がもたらす緊張感を備えている。
上記はお店で楽しめるほんの一部分です。
蜀郷香はコース料理で楽しめるお店なので、もちろんお料理の種類は上記以外にもたくさんあり、実は、他にも素晴らしいマリアージュを見せてくれたワインも何種類もあります。
美味しい四川料理とワインのマリアージュ、体感されてみたい方はぜひお店まで足を運んでみてください!
お店紹介
店名:四川料理 蜀郷香(シュウシャンシャン)
住所:〒 160-0006 東京都新宿区舟町5-25 TSI FUNAMACHI 2F
アクセス:地下鉄丸ノ内線 四谷三丁目駅、A4出口から徒歩3分
都営新宿線 曙橋駅、A4出口から徒歩5分
電話番号:03-3356-0818
ライター紹介
中小路 啓太(なかこうじ けいた)
フィラディス 営業部所属。J.S.A.認定ソムリエ。
飲食店の方のお役に立てる様、ワインに関して幅広くサポート、ご提案を日々行う。
鶏や魚の捌き、焼鳥の串うちなど飲食店の方がされている料理の仕事を素人なりに自分でもやってみるのが趣味。それに合うワインを考えるのも趣味。旅行先で美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲むのは趣味ではなく生きがい。
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