ワインボキャブラ天国【第103回】「抽出」英:extraction 仏:extraction
- 2021.11.06
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「抽出」
英:extraction
仏:extraction (女性名詞 発音は「イグズトラクシオン」)
「extraction」は「抽出」や「引き抜くこと」を意味する単語。
ワインの製造工程においてこの言葉が使用されるのは収穫したブドウをタンク/樽などに入れて発酵を開始する段階、果皮、種子、時には果梗(房の枝部分)に含まれる様々な成分を果汁に「抽出」していく作業のことを言います。
ここで果皮から抽出する成分は主にワインの色合いを決める色素アントシアニン、様々な香りの成分、そして渋みの基となるタンニン分などが挙げられます。そして、これらをどのくらい抽出するかで出来上がるワインのスタイルが変わっていきます。
この抽出作業は赤ワイン、ロゼワインに限らず生産者やワインによっては白ワインでも行われます。近年人気の「オレンジワイン」とは、通常の白ワインの醸造工程では搾汁後に搾り滓として取り除いてしまう白ブドウの果皮をそのまま長時間浸漬することで色素やタンニン分(黒ブドウよりは少量ですが、白ブドウの果皮にも含まれます)を多く抽出し、オレンジ色に近い濃い色合いそして果皮成分由来の複雑な香味を持たせたワインです。
赤ワインの醸造においてはこの「抽出度合いの見極め」が味わいのバランスを決める重要なポイントになっており、近年は「このワインは抽出が強い/弱い」「あの生産者は抽出が上手い」など、ワインや造り手の技術を評価する言葉としても良く聞かれるようになっています。
かつては「えぐみの元」としてネガティヴに捉えられ、技術進化によって除去されるのが一般的となっていた果梗。アンリ・ジャイエなどブルゴーニュの職人的生産者たちがそれをスパイシーで複雑な香味成分を形成するものとして捉え「全房発酵(房まるごとを発酵槽に入れて仕込む手法)」が脚光を浴びて以来、えぐみや過度の渋味が出ないよう絶妙な適正値まで果皮・種子・果梗の成分抽出をしていることがワインの重要な評価基準となりました。
この「抽出」作業には、様々な手法が存在し、最近はそれらの用語もワイン生産者のウェブサイトや評価誌等でよく目にするようになりました。次回第104回からは、この「抽出法」の幾つかを紹介していきたいと思います。
「ピジャージュ」「ルモンタージュ」「デレスタージュ」など、皆さんも耳にしたことがあるかもしれませんね。技術的な内容なのでちょっと難しい部分もあるかもしれませんが、出来るだけ分かりやすく紹介していきたいと思います!
それでは今回はこのくらいで・・・。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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