生牡蠣×泡、マリアージュ徹底実験 レポート第3回『クリーミー系牡蠣に合うのは、どんなワイン??!』
「生牡蠣×シャンパーニュマリアージュ実験 / 生牡蠣に本当に合うシャンパーニュを探せ!」の最終回。
誰もが知る王道マリアージュと言われるこの組み合わせ、
「定石ペアリングの更に先にある、真のマリアージュ」を見つけよう!という試みです。
改めて今回の実験で用意したものと、実験の流れです。
●牡蠣は2種類を用意。
・最もスタンダードなさっぱりとした味わい系統のもの(長崎県・五島列島産)
バランス良くミネラル感と出汁っぽいコクのあるタイプ。
・ミルキーで濃厚なタイプ(兵庫県・室津産) ぷっくり丸く身の膨らんだ、実に濃厚な味わいタイプ。
●シャンパーニュは10種類を用意。
・ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、複数品種ブレンド。
・ドサージュ(甘味リキュール添加)量3g/L程度のものから、10g越えのものまで
・マロラクティック発酵(乳酸発酵)実施の有無
上記の3条件でバラツキを持たせて選定。
これら全ての組み合わせで、
ワインの銘柄を見ない目隠しのテイスティングによるマリアージュ試飲。
牡蠣2種類(*調味料は一切無し)×シャンパーニュ10種類の20セッションを実施します。
セッションごとの評価は、
0点(組み合わさることでどちらかの悪いところが出てしまう)
~4点(相乗的に美味しくなり、単体を遥かに超える味わいが体験できる正に「マリアージュ」)の5段階で採点。
ひとつのマリアージュを試したらそれについてメンバーがそれぞれの評点を発表し、
マリアージュについて評価・議論をして全体の意見をまとめる、というのが全体の流れです。
前回は、長崎県五島列島から取り寄せた、贅沢なさっぱり系生牡蠣とのマリアージュについて。
「あっさりした味わいの牡蠣なら、酸味がシャープなレモン等の柑橘類的な印象を持つ
シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン、そして甘さの出来るだけ低いものが一番合うはず!」の予想に反し、
なんと、黒ブドウ「ムニエ」種を60%、「ピノ・ノワール」種を30%使用した、
『ヴーヴ・オリヴィエ カルト・ドール・ブリュット N.V.』が最も合うという意外な結果でした。
今回は続いて、兵庫県室津産のミルキーで濃厚な味わいの牡蠣についてのマリアージュを検証します。
こちらの牡蠣は、身の形からして卵型のようにふっくらまん丸。
殻の外からでもその深さがたっぷりの身を予想させてくれる、見るからに「強そうな・濃厚そうな」牡蠣です。
当初の予想は、こちらは数品種をブレンドした「バランスの良いシャンパーニュ」
が最も合うのでは、という意見が多勢。
柑橘類的な酸味でこってりミルキー感を爽やかにしつつ、
その濃厚でボリューム感のある味わいにも負けないリッチな果実味やミネラルが必要、というイメージです。
シャープな酸が突出していてもダメ、柔らかな果実味だけでもダメ、
だからバランスで包み込む、的な感じ。
前回と同様に、目隠し試飲で10本のシャンパーニュを順番に合わせていき、1本1本議論します。
スタートして2-3本で、何人かのメンバーが意見をちらほら出し始めました。
「これは、シャンパーニュじゃなくて他のワインの方がマリアージュしそう・・・。」
10種類、シャンパーニュの多様性をある程度網羅したセレクションをぶつけてみましたが、
結局どのスタイルのシャンパーニュでも、合わないことはないけど完璧にはマリアージュしない。
70点程度のマリアージュに終わった印象です。
ブラン・ド・ブランはミルキー牡蠣の強い味わいと重なると味わいが薄れてしまうし、
ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールだと飲み込んだ後に少しの生臭さが残り、
余韻がどうも心地よくない・・・。
牡蠣×シャンパーニュなら「取り敢えず、合わないものはないだろう」という予想が、
こんなにあっさりと裏切られるとは本当に驚きでした。
オイスターバーに行っても安易に「取り敢えず泡!」なんて頼めないってことですね。
ちなみにメンバーが出した点数での結果としては、またもや『ヴーヴ・オリヴィエ』が全員一致でNO.1に。
今回も、さっぱり系牡蠣の時と同様に、柔らかな口当たりが牡蠣の食感と合い、
フルーツ感のある味わいがミルキーな味わいと重なり、食べやすく心地よくなっていました。
でも、僕たちの感覚としては、それでも85点くらいの感じでしょうか。
「シャンパーニュの中では一番合うけど、他にもっと選ぶべきワインがある」だったなと思います。
例えば・・僕はドメーヌ・ダヴィッドの『ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ』なんかを
合わせてみたいな、と感じていました。
定石のマリアージュだからと言って考えずにワインを選んでしまうと、「何かが違う・・・」とモヤモヤ。
どんな定番マリアージュでも、疑い、もう一度仮説を立てて実際に色々と試す。
それが大切なことなんだな、と今回の実験で思い知らされました。
「これとそれは絶対に無し、うまく合うわけがない」という組み合わせも、
試してみると意外なほど素晴らしいマリアージュを見せてくれるのかもしれません。
それこそ、マリアージュ=結婚、という言葉にふさわしいですよね。
-
前の記事
生牡蠣×泡、マリアージュ徹底実験 レポート第2回『さっぱり系牡蠣に合うのは、どんなワイン??!』 2019.09.08
-
次の記事
同じワイン、ヴィンテージ違いを飲み比べると分かること(垂直試飲”と“水平試飲”の意味①) 2019.09.20