あ、せかんどおぴにおん 第11回「ヴィノジア ファランギーナ」
目次
『あ、せかんどおぴにおん』第11回
「ヴィノジア ファランギーナ」
このコラムについて(ここは毎回同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
9回目にとりあげるのは、「ヴィノジア ファランギーナ」です。
ヴィノジアの樽です。
ギリシアからやってきた品種
今回まず押さえるべきは品種です。カンパーニャ州を中心に生産される南イタリアの土着品種、ファランギーナ。この土着=土地に根差した品種というのがイタリアワインの非常に大きな魅力です。どれも個性的で、他の国や産地では体感できない味わい。本来テロワール、つまりその土地に適したブドウを栽培するのなら、環境の微妙な違いごとに品種が変わるというのは必然的なような気もします。それを体現しているのがイタリアなのです。
そして南イタリアの品種は多くがギリシアからやってきたといわれています。この白品種、ファランギーナもその一つ。まだローマ人がイタリア全土に広がらず、ローマにしか住んでいなかったころ。南イタリアは、海洋民族であり冒険好きなギリシア人の土地でした。ちなみに、現在でも南イタリアの主要な都市に港町が多いのはそのためだそうです。彼らがやってきたときにギリシアからワイン造りを持ち込んだのです。
ワインは歴史を楽しむお酒でもあります。今のナポリがギリシア人によって建設されたのは紀元前5世紀ごろ。その頃から現在まで脈々と続いてきたワイン造りです。もしかしたら昔のギリシア人も飲んでいたかもしれないと感じながら飲むのも、面白いです。
カンパーニャ州
数あるカンパーニャ州の土着品種の中でも、その華やかな香りとフルーティさとで地元の多くの人々に愛され、普段からよく楽しまれているのがこのファランギーナ種。
話は前後します。カンパーニャ州の魅力についても、ワインを楽しむうえで重要です。ギリシア人はこのカンパーニャの土地を、「エノトリア・テレス(ワインの大地)」と呼んでいました。当時からワインの理想郷であったのです。その後に入植した古代ローマ人もこの地を「カンパーニア・フェリックス(幸運なるカンパーニア)」と讃えています。
その理由の一つは温暖な気候。ブドウが活き活きと育ちます。そして火山です。あのポンペイの街を灰に沈めたことで有名な(ポンペイもカンパーニャ州に位置します。)ヴェスヴィオ火山の溶岩や火山灰などが、豊かな土壌をもたらしています。商品ページの下の方にある生産者情報にはこのように書かれています。
イルピニア全域に広がる所有畑は海抜400-700mに位置する。石灰や粘土を含むミネラル豊富な古い火山性土壌の畑ではファランギーナ、グレコ、フィアーノやアリアニコといった土着ブドウのみが栽培されており、この独特な土壌に加えて海抜の高さと昼夜の寒暖差が大きい大陸性気候により、ヴィノジアのワインの特徴であるエレガンスとミネラル感がもたらされる。
いかにカンパーニャ州が恵まれた土地であるか、ガッテンしていただけましたでしょうか。
最後に生産者についてです。
ヴィノジア
カンパーニャ州の内陸部に広がる丘陵地帯イルピニアは、タウラジ、フィアーノ・ディ・アヴェリーノ、グレコ・ディ・トゥーフォという3つのDOCGを抱えるワイン造りの中心地域である。この地のポテンシャルを世界に知らしめた先駆的存在、フェウディ・ディ・サングレゴリオの設立者の一人であるマリオ・エルコリーノは、同醸造所で醸造責任者を務めつつ、自らのアイデアを表現できる新たな場所を探していた。アブルッツォのファルネーゼが興した数々の共同プロジェクトにもエノロゴとして参加していた彼は、理想の土地を求めてイタリア各地のブドウを試食していたが、故郷のイルピニアを旅行中に口にしたブドウの香り高さに衝撃を受け、この地で受け継がれてきた土着ブドウから頂点のワインを生み出そうと決意。弟のルチアーノとともにサン・グレゴリオから独立し、2003年にヴィノジアを設立した。
ヴィノジアはサン・グレゴリオの設立メンバーであった、マリオとルチアーノのエルコリーノ兄弟が新たに設立したワイナリーです。サン・グレゴリオというのも、イタリアワイン好きにはよく知られている、カンパーニャを代表する生産者です。詳しくはネットで検索してみてください。
なぜ袂を分かち、新たにヴィノジアを設立したのか。サン・グレゴリオが大きくなりすぎ商業的側面が強くなり、小規模でも高品質のワインを手掛けるワイナリーを目指したと語っています。あくまで土着ブドウの個性、そしてそのブドウが育ったテロワールを最大限に表現する。そして飲む人に、カンパーニャの土着品種を身近に感じてほしいのだそうです。
さらにルチアーノさんはこんな風に語っています。
「サン・グレゴリオでは、醸造について色々と自由に実験ができた。進化を続けるための適切な実験場だったといえる」
つまり、サン・グレゴリオで得た知識や経験が、ヴィノジア設立時に活かされているのです。具体的には、理想的なワイン造りを最小限のコストで実現し、それがコストパフォーマンスの高さをもたらしました。これにより、高品質の土着品種を比較的手ごろな価格で楽しむことができます。
ではヴィノジアのファランギーナはどのような味わいなのか。いよいよテイスティングです。
いよいよテイスティング
画像は2013ですが、2019ヴィンテージでテイスティングしました。
≪店長のテイスティングコメント≫
ライムやグレープフルーツ、レモン、ジャスミンを思わせる香りは非常に爽やかでアロマティックです。軽やかでジューシーな果実と溌剌として伸びやかな酸味がより爽やかに感じさせてくれ、総じてピュアでクリーンな、爽快感と飲み応えのバランスが素晴らしいカンパーニャのファランギーナを代表する1本です。
さていよいよテイスティング。
私の全体の印象は、ボリュームのある緑です。飲んでいて、グリーンの印象が非常に強いワインだと思いました。
まずは香りからグレープフルーツ、レモン、青りんご、ライム、あとはスダチのような印象も。爽やかでありながらどこか暖かさもある。爽やかでありながらとても複雑で多層的な香り。このアロマティックな香りが、ファランギーナの魅力的な個性だと思います。
そして口に含むとあくまでクリーンで涼やか。はっきりとした酸がすっきり。ただ果実感はしっかりとあり、南イタリアらしさも感じます。そのうえで最後はあくまでドライ。この最後のドライさがあることで、幅広く食事にも合わせやすいです。
私は香りにスダチのような印象を感じ、さらに果実の厚みもしっかりあるので、脂の乗ったサンマの塩焼きに合わせてもいいのでは、と思ってしまいました。この秋にぜひ挑戦します。その他、ちょっとさわやかな風味を加えるような感覚で、いろいろな食事と楽しめます。
一つ注意点ですが、開けて次の日くらいまでが香りの複雑さを楽しめる限界だと思います。できれば初日に飲んでしまいたいです。開けたてが一番香りが複雑で味わいも豊かです。千円台の白ワインとしては、かなりな満足感です。
このワインは西岡パパのペアリング料理はまだありません。ですが、同じヴィノジアの同じファランギーナ種を使ったスパークリングワイン、ヤーデのペアリングには挑んでおります。この回では、料理ではなく合うおつまみを選んでおります。
今回は以上。たくさんの異論反論をレビューにてお待ちしております。
あと週限定の生産者セットが大好評だったため、こちらの土着品種6品種セットが新発売しております。ぜひ南イタリアの土着品種を楽しみ尽くしてください!
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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