今月のおすすめワイン本【2021年3月】ワイン好きなら絶対に胸熱、日本ワインの未来を担う若者たちのストーリー
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本を毎月1冊ご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ。
今回はご存じの方も多いと思いますが、若き日本ワインの造り手たちの世界を描いたノンフィクション小説『ウスケボーイズ』をご紹介したいと思います。
『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』(河合香織さん著/小学館文庫 税抜570円)
この本をお薦めさせて戴くにあたっては、まずタイトルの『ウスケボーイズ』の由来からご紹介しないとですね。
『ウスケボーイズ』は、元メルシャンの醸造家で晩年はワインコンサルタントとしてご活躍された麻井宇介さんの思想に触発され、ワイン造りに情熱を燃やす日本の若い栽培醸造家グループの名前。
かつてイタリアの「バローロ」で、伝統主義者たちの古いワイン造りをに異を唱え、ブルゴーニュに代表されるエレガントでモダンなスタイルで革命を起こしていったエリオ・アルターレやドメニコ・クレリコなどが「バローロボーイズ」と呼ばれたことに自分たちをなぞらえたのだそうです。
この本は、そんな3人の若者たちの挑戦と苦悩の年月を追い続けたドキュメンタリー。
例えば「プロジェクトX」や、池井戸潤さんの企業もの小説・ドラマなどが大好きな人だったら冒頭から一気に惹き込まれてしまうはず。興奮しますよ~!!
麻井先生の思想は、例えばこんな言葉で表されています。
「海外の銘醸地にコンプレックスを感じながら日本でワインを造る時代は終わった。」
「ラフィットだろうが何だろうが、同じ造り手として対等の立場なんだ。世界に負けないワインが日本でも必ず出来る」
「今までのワイン醸造の常識に従ってワインを造ればいいワインが出来るかもしれないが、人を感動させられるワインは出来ない」
(*本文より引用しました)
このドキュメンタリーでは、麻井先生と彼の思想・信念を受け継ぐ「ボー・ペイサージュ」の岡本英史さん、「kidoワイナリー」の城戸亜紀人さん、「小布施ワイナリー」の曽我彰彦さんの3人がそれぞれに奮闘し、情報交換をしながら(でも、意見は聞かず、すべて自分で判断し決めるそうです)ワイン造りの腕を高めあっていく様子が描かれています。
今や日本ワインを代表する造り手たちが初めてフランスのワイン産地を訪れたときから現在それぞれが取り組む進歩的なチャレンジまで・・・やっぱり、事実はフィクションよりも熱く、!!
止めどころの見つからない本なので、読みながら飲んでいたらボトル2本くらい空いちゃうかもしれません。
ちなみにこの作品、2018年には実写映画化もされ、若き栽培醸造家の主人公を演じた渡辺大さん、麻井先生の晩年を演じた橋爪功さんが素晴らしい演技を見せてくれました。
映画版は原作本のドキュメンタリータッチと若干テンションが異なりますが、こちらもとても良い作品。
こういっては何ですが、この華やかさや派手さの無い地味なワイン職人の話が映画化されるなんて、日本のワイン文化が成熟してきている何よりの証拠ですよね。
今なら動画配信のサブスクリプションサービスなどでも観られると思いますので、未見の方は是非ワインを飲みながら鑑賞してみてください。
(このコラムシリーズ、今後は本だけじゃなくこういたワイン映画も取り上げていこうと思います。良い作品、たくさんありますからね!!)
最後に・・・・麻井宇介先生ご本人の著書の中でも僕がイチ押しの一冊をご紹介させて戴きます。
麻井先生の著作はどれも本当に面白い(なんていうと失礼ですが・・・勉強になるのに楽しめる、という意味合いです)ので未読の方には是非とも読んで頂きたいですが、僕が特にお勧めしたいのは『ワインづくりの思想 銘醸地神話を超えて(中公新書/現在は古書または電子書籍で読むことができます)』 。
ワインを愛する方、または今からワインを仕事にしたいと思っていらっしゃる方には絶対に読んでおいて戴きたいまさに名著。
古書の市場価格は結構高くなっておりますが、Kindle版などは880円で読むことができますよ。
他にも麻井先生には『ワインづくりの四季』や『比較ワイン文化考』などの名著もありまして、現在はこれらの作品群をひとつにまとめた著作集も出ております。
まとめて読むなら是非こちらを!
それでは今回はこのあたりで。
次回も、ワイン片手に楽しみたいお薦めの一冊をご紹介させて戴きますね。
前回の『神の雫最終章 マリアージュ』、今回の『ウスケボーイズ』とドラマティックなストーリーの本が続いておりますが・・・
次回もワインを題材にしたコミックの海外作品を取り上げたいと思います!
*本日ご紹介した書籍『ウスケボーイズ』詳細については版元の小学館さんのページをご参照ください。
↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09406570
-
前の記事
今月のおすすめワイン本【2021年2月】遅ればせながら『神の雫』シリーズ完結に寄せて 2021.02.01
-
次の記事
今月のおすすめワイン本【2021年4月】ワイン職人ファミリーの年代記を綴ったフランスのコミックエッセイ・・・とても素敵な本です! 2021.04.12