今月のおすすめワイン本【2022年7月】ロバート・パーカーの伝記本をご紹介!

今月のおすすめワイン本【2022年7月】ロバート・パーカーの伝記本をご紹介!

読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本をご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ。
42冊目に選んだのは、実は随分と昔に出版されていたのですがなかなか手が伸びなかったこの本(分厚い上に、値段もそこそこ高いんです…)、読んでみたら予想をはるかに飛び越えて非常に面白かったです。
ワイン愛好家の道を極めて頂点に立った男の伝記『ワインの帝王 ロバート・パーカー THE EMPEROR OF WINE』(白水社 エリン・マッコイ著、立花峰夫・立花洋太訳 税込定価3,740円 *古本が安くておすすめです!)、この人にあまり良いイメージを持っていない方にこそ、是非読んで頂きたいと思います!

 

そもそも『ロバート・パーカー』って誰??

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Robert_M._Parker_cropped.jpg

彼の人物紹介については、以前コラムコーナーにアップした記事から抜粋しましょう。

『パーカー氏は、1947年アメリカ東部メリーランド州生まれ。22歳の時、留学している恋人に会うためにヨーロッパを旅行したのをきっかけにワインに目覚め、帰国後に仲間達と「ワイン・アドヴォケイト」創刊のきっかけとも言えるテイスティング会を結成します。(ちなみにその時会いに行った恋人というのは現在の奥様だそう。。。)

その後、目指していた弁護士の資格を取得し職を得たものの、ワインへの情熱が次第に大きくなると同時に、当時出版されていたワイン誌の批評に疑問を抱くようになり、1978年に現在の「ワイン・アドヴォケイト」の前身となるワイン誌を自ら創刊して、消費者に対して情報を発信し始めました。』

この記事ではあまり具体的に書いていなかったのですが、実は知っておくべきは彼の出自。
本書の前半は彼がまだ有名なワイン評論家になる若かりし日の記述が多いのですが、それは「弁護士から世界的なワイン評論家に・・・」なんて聞くと「どうせお金持ちの家に生まれて、子供のころから親がいいワイン飲んでて、弁護士で儲かったから道楽で評論家になったんでしょ?」とついつい穿った見方をしてしまっていたのですが、パーカーは酪農を営むごく普通の家庭に生まれ、両親ともにワインを飲むことなんかほとんどなかったそう。上記のように、貧乏学生だった頃にフランスに留学している恋人に会いに行き、そこでフランスの豊かな食文化とワインに出会い、人生が変わったのだとか。

持っているお金を少しでも多くワインやおいしい食事に使うため、切り詰めながらボルドーを旅した記録などは非常に親近感を感じました。そう言えば、僕も初めて自費でフランスの産地巡りをした時はお金が無くて、毎日50~80kmくらいを自転車で走って生産者訪問をしたのですが、それを想い出しました…暑かったなあ。

また、彼は当初の本業であった弁護士(*田舎の農業信用銀行の雇われ弁護士、というこれまた法律家としては割と地味なスタートでした。)としても非常にリベラルな考え方を持っていて、銀行に最初の黒人弁護士、女性弁護士を雇い入れたのも彼だったそうです。周囲からの反対・反発があっても自身の思いを貫き通す生き方のスタイルは、若き日の様々なエピソードから既に垣間見えていました。

*以前公開したコラムはこちら。彼の採点法などについて詳しく知りたい方は是非こちらも読んでみてください!

「PP」「WA」の表示は要チェック! ワイン評論家ロバート・パーカー・Jr氏を知っておこう。

『ロバート・パーカー』のワイン評論に対する考え方

そんなロバート・パーカーがワイン評論で世界に認められるようになったのは、こんな考え方・姿勢があったからでした。
再度、上記コラムページから抜粋します。

『彼が既存の情報誌に疑問を持ったのは、記事の内容に多かれ少なかれスポンサーの影響を感じた点。スポンサーに配慮して、正当な評価が消費者に届いていないと感じたのです。そこで、彼の雑誌ではスポンサーを募ることはせずに読者からの購読料と自らの持ち出しで出版費用を賄い、感じたままのコメントを消費者に届けたのでした。その姿勢が徐々に知られ、消費者からの信用を得るようになるとパーカー氏の知名度も上がっていき、評論家として職に専念するようになりました。』

『よく語られているのは、1982年ヴィンテージのボルドーワインのプリムール・テイスティングでの逸話です。プリムールというのは、まだ樽の中で熟成しているワインを売買する先物取引を指すのですが、今やグレートビンテージとして名高い1982年ワインの将来性をその時見抜いたのは、パーカー氏ただひとりだったと言われています。第一線で活躍している評論家達が否定的な見解を下す中で、唯一、正反対の評価を下すのは確固たる自信と勇気がなければできないこと。そして、まさにパーカー氏の評価通りに1982年のボルドーワインが伝説にも残るような素晴らしいワインへと変貌を遂げたことで、パーカー氏の優れたテイスティング能力が世界に認められ「神の舌を持つ男」との異名を持つきっかけとなったのでした。』

出典:https://winejournal.robertparker.com/the-wine-advocate-print-edition-has-a-brand-new-look

上の画像左は、ロバート・パーカーが1978年に創刊した当時の『ボルティモア-ワシントン ワイン・アドヴォケイト』。右側が2017年の『ロバート・パーカー ワイン・アドヴォケイト』の表紙です。創刊当時はまだ地元地域の名前が冠されていて、ローカルなミニコミ誌的に細々と発行されていました。彼の評論は自費で調達したワインをテーマ別に集中的にひたすら飲み、書いていくスタイルだったので、購読者の少ない創刊当時は生活費を切り詰めてワイン代を必死に捻出していた模様…そんな彼につい腹を立ててしまう妻の様子なども描かれています。当時他の評論家が当然のように行っていたスポンサーを意識した忖度ワイン評論とは一線を画す、パーカーの強い信念が感じられました。

また、彼の評論に使用されるボキャブラリーも当時としては画期的だったと思います。実際の飲み手となる一般消費者に近い感覚でワインの香りや味を紹介するため、例えば「『ミルキー・ウェイ(チョコレート菓子)』とピーナッツ・バター・クリームを混ぜ合わせたような」なんていう表現も出てきます。このあたりには僕も結構を受けていまして、フィラディスワインクラブでワインの香りや味を出来るだけ具体的に、飲んで頂く皆さんがイメージできるように描写するのは同じ考え方です。勿論、レベルははるか下ですが・・・汗

何故、彼に悪いイメージを持つ人も少なくないのでしょうか?

彼について語られる際は「功罪併せ持つ」という角度からのものが非常に多くなっています。そして時には、彼に対しワインの世界を変えてしまった極悪非道の悪人のように表する場合も無くはありません。では、それは何故なのか・・・?同コラムページから最後の抜粋です。

『ワインというのはそもそも嗜好品。彼が高い評価をつけるワインの傾向が見え始めると、コンサルタントを雇ったり、自分の意とは違いながらもパーカー好みのワインを作ろうとする生産者が現れ始めました。その気持ち、分からなくもないですよね? 高得点がつけば、セラーもタンクも新調できてしまうかもしれないのですもの。

パーカー氏の好むワインは果実味が濃厚で凝縮感のあるボリューミーな味わい。新樽でしっかり熟成させた、いわゆる「樽を感じる」ワインとされ、ぶどうの特徴やその土地の個性を反映したワインを作る以前に、パーカーポイントでの高評価を目指す生産者が増えてきたのです。この現象は「パーカリゼーション(パーカー化)」という言葉を生み出し、少しずつ問題視されるようになっていきました。』

つまりのところ真実は、ワインを「良い方に評論して欲しい」と思った一部の生産者たちにこそ非があるものと考えるのが正しいですよね。自らの評論の手法・哲学・スタイルを貫いた結果として巨大化していったロバート・パーカーという存在に対し、それに縋り付いておこぼれを貰おうとした信念なきものたち。その構図は、実は彼が若かったころから全く変わっていないものだったということが、本書を読むと非常に良く分かります。
伝記本というものは様々な誇張や美化があるのも当然だと思いますが、僕としては本書はかなり客観的かつ冷静に事実を記していると感じました。この一冊でパーカーに対してのイメージが大きく変わる人も多いと思います。

その上で僕は思うのは、「それでも、ワインはあくまでも嗜好品だから、どんなに凄い評論家でも自分の味の好みとは違うこともある」ということ。パーカーが100点を付けたワインが、自分にとっても100点かどうかはその人の味覚次第。
フィラディスワインクラブでも彼の点数を掲載することが良くありますし、僕が個人的に絶賛してお勧めすることもありますが、それはあくまでも他人の舌が導いた意見、参考程度に受け止めて戴ければ十分です。自分の好みに合うもの=自分の100点ワイン!という姿勢で、ワインを楽しんでくださいね。

という訳で今回のワイン本紹介はこのへんで。さて、次回はどんなワイン本をご紹介しましょうか・・・おっと、たこんな面白そうな本を見つけてしまった・・・早速ポチっとな、と。早く届かないかなあ。。。

ロバート・パーカーの公式HP「Robert Parker Wine Advocate(コンテンツ閲覧は有料です)」はこちら
↓↓↓
https://www.robertparker.com/

*本日ご紹介した書籍は、Amazon他にて新品・古書等で購入できます!

『ワインの帝王 ロバート・パーカー THE EMPEROR OF WINE』
(白水社 エリン・マッコイ著、立花峰夫・立花洋太訳 税込定価3,740円)*古本結構あります
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https://www.amazon.co.jp/『ワインの帝王 ロバート・パーカー THE EMPEROR OF WINE』
 
『ワインの味の科学 I TASTED RED』
(ジェイミー・グッド著/伊藤伸子訳 エクスナレッジ 税込2,420円)
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https://www.amazon.co.jp/『ワインの味の科学 I TASTED RED』 

 

CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
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