ワインボキャブラ天国【第121回】「ミレジム」 英:vintage 仏:millesime
- 2022.04.03
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「ミレジム」
英:vintage 仏:millesime (男性名詞 発音は「ミレズィム」)
『ミレジム』とは?
今回取り上げるワイン用語は『ミレジム』。上に併記したように英語では「ヴィンテージ」となる言葉です。
ワインの場合「ヴィンテージ」は「そのワインの原料となったブドウが収穫された年」を意味します。仕込まれた年、瓶詰めされた年、などでは無くあくまでも「収穫年」ということを覚えておいてください。これはヨーロッパやアメリカでも、またはそれらの地域と季節が反対で収穫期が異なるオーストラリアや南米など南半球の国々でも同じ。ブドウは毎年春に新芽が出てから蔓を伸ばし、花が咲いてから実を付け、冬には一旦枯れる多年生の植物ですので、この年に1回の収穫がされた年が「ミレジム/ヴィンテージ」ということになります。
ワイン評論家や愛好家が「〇〇年はグレート・ヴィンテージ(偉大な年、当たり年のような意味)」「〇〇年はオフ・ヴィンテージ(あまり作柄の良く無かった年)」のような形で収穫年の良し悪し表現されることがあります。これはどんなワイン産地でも毎年気候が少しずつ変わるため。雨の多かった年、気温が上がらなかった年などはブドウの生育にとって決して万全に恵まれた条件とは言えないためこのような評価をすることになります。
『ミレジム』にはニュアンスの異なるもう一つの意味も。
「ミレジム/ヴィンテージ」は基本的にはシンプルに「収穫年」を意味する言葉ですが、同じ言葉が少し発展的な意味を持って使用される場合もあります。それは主にフランス シャンパーニュ地方でのケース。ちょっと長くなりますが説明していきましょう。
シャンパーニュ地方において、一般的にスタンダードクラスのワイン(各生産者の一番お手頃な価格帯のシャンパーニュ)はその年に収穫されたブドウだけでなく、複数年の原料ワインをブレンドすることで、毎年安定的に同じスタイルのシャンパーニュをリリースし続けられるようにしています。フランス北部に位置するシャンパーニュ地方は地域的に気候が冷涼であるため、年によってはブドウが完熟しない場合もありました(*近年は温暖化の影響で大分熟度が安定化してきているようです)。
特別に寒かった年や雨の多かった年など、収穫年によって大きく品質が変わってしまうことを避けるために毎年少しずつワインをリザーブしておき、それらを適切にブレンドしていくことで一定の味わいスタイル、品質を担保してきたわけです。注ぎ足し注ぎ足しで受け継がれてきた老舗焼き鳥店や鰻店のタレ、みたいな感覚ですね。
これらのシャンパーニュは「ノン・ミレジメ(形容詞として使用される場合末尾が「メ」に変わります)」「ノン・ヴィンテージ(フィラディスでは頭文字を取ってN.V.、などと表記しています)」と呼ばれ、単一年のブドウで仕込まれたワインとは区別がされています。
一方で、シャンパーニュで収穫年号の入った「ミレジム(ミレジメ)」「ヴィンテージ・シャンパーニュ」は、気候に恵まれ作柄の良かった年、ブドウの出来がその生産者の目指す理想的なスタイルに仕上がると判断された年にだけ仕込まれ、特別な位置づけとなっています。有名な『ドン・ぺリニヨン』や『クリスタル』などはこのジャンルに入るシャンパーニュですね。つまり、ここで言葉の持つニュアンスが少し発展し「ミレジム」という言葉だけで「作柄の良かった年」という意味合いを含むことになります。
例えば有名なシャンパーニュ『サロン』は、20世紀の100年の間に33ヴィンテージしかリリースされませんでした。品質に高い理想を掲げているため、それに見合うブドウが収穫できたのが3年に一度くらいだったということですね。当然、リリースされたときの価格はびっくりするほど高くなりますし、リリースの少ない希少なシャンパーニュとして世界中で取り合いに・・・。
「ミレジム」の表記されたシャンパーニュを楽しむときは、生産者が「今年はミレジム造るぞ!」と心を躍らせて仕込みに取り組んだことを思い描き、特別な味わいを楽しんで頂ければと思います。
それでは今回はこのへんにしておきましょう。今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
【今回紹介の用語「ミレジム」に関連したその他のコラム】
シャンパーニュの分類を識ることは、基本中の基本。
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https://firadis.net/topics_detail.html?info_id=426
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