ワインボキャブラ天国【第154回】「タイユ・ゴブレ(ゴブレ仕立て)」 英: goblet pruning 仏: taille en gobelet
- 2022.12.18
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「タイユ・ゴブレ(ゴブレ仕立て)」
英: goblet pruning
仏: taille en gobelet
ゴブレット(コップ)に見立てた仕立て法です
ブドウ栽培の「仕立て法」、2つ目のご紹介はブドウ樹を横から見るとゴブレットのような形に育てていくその名も『タイユ・ゴブレ(ゴブレ仕立て)』です。上の2枚の画像でも分かる通り、幹を基に数本の梢を放射状に伸ばし育てていく形ですね。
別名「株仕立て」とも呼ばれ、ローマ時代からブドウ栽培に使用されてきた非常に古い仕立て法だそう・・・確かに、一番シンプルに植えただけの状態ですしね。斜面の場合には1本添え木を立てることもあります。
ちなみに葉が茂っていない時の状態だと、幹はこんな形に植えられています。
「ゴブレ仕立て」は、どんな産地で採用されているのか
これまでの画像はいずれもスペインの生産者から提供された画像でして、この仕立て法が採用されているのは「温暖で乾燥した地域」が主。スペインやポルトガルなどヨーロッパ南部をはじめ、フランスならブルゴーニュ南部のボージョレ地方、コート・デュ・ローヌから南フランス、イタリア南部やオーストラリアなどが挙げられます。
この方式で栽培した場合、最も葉が茂る時期には上の画像のように枝葉が各方向に元気に伸びた状態になります。
日影が多く出来ると同時に風通しも悪くなってしまうため、多湿のエリアではカビ害の発生が危惧されます。また、樹の背が低いため地面の温度による影響も受けやすく芽吹きの時期に霜の害を受けるなどの可能性もあります。そのために前述したような温暖で乾燥地域での使用が向いているわけですね。
かつてはブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイなど「ゴブレ仕立て」」がでも使用されていたそうですが、次第に現在主流の『ギュイヨ式』が採用されるようになっていきました。ピノ・ノワールという品種が生理的にこの仕立て法に対して適性が低いことが判明したこと、また上記のような気候的影響を受けやすいことも切り替えを進めたと言われています。
ブドウ栽培についての研究が進むにつれ、品種・栽培地そして目指す収穫量やワインのスタイルに適した仕立て法が採られるようになり、より品質の高いブドウが得られるようになってきたということですね。ワインについて知るには、栽培法について知ることも非常に大事なことだと思います。
それでは今回はこのへんで・・・次回は日本の生食用ブドウの栽培でもお馴染みの「棚仕立て」についてご紹介していきたいと思います。
今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました!
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