同じワイン、ヴィンテージ違いを飲み比べると分かること(垂直試飲”と“水平試飲”の意味①)
先日Firadis WINE CLUNのお客様向けに開催したイベント「フィラディスワインフェス」にて、
あの『シャトー・マルゴー』の2007年、1997年、1987年を比較試飲する、というワークショップを実施しました。
2017年の現在から数えて10年前、20年前、そして30年前のワインを順に試飲していく試み。
今回からのマメ知識コラムでは、この“垂直試飲”というテイスティング方法、そしてその反対の“水平試飲”についてお話をしていきたいと思います。
“垂直試飲”とは、
「同じ生産者の同じワインを、異なる生産年=ヴィンテージで複数揃えて比較するテイスティング法」です。
今回シャトー・マルゴーの試飲ワークショップでは1987年、1997年、2007年の3つで試飲しますが、
もっと数多くのヴィンテージを一堂に用意して比較する場合もあります。
では、この“垂直試飲”をすることで見えるものとは何なのでしょうか??
大きく分けると2つあると思います。
1. 各ヴィンテージの特徴(作柄がどう表現されているか)
2. 熟成のポテンシャルと香味変化の傾向
です。
まず①各ヴィンテージの特徴、について。
これについては皆さんもイメージしやすいかと思いますが、
一般的には「良い年・悪い年」等と表現される、各年のブドウの作柄の特徴、ですね。
その年の気候状況は国・地域・村・畑単位まで細分化されて異なりますので、
「ヴィンテージチャート」と呼ばれる作柄年表には、国・地域毎に各年の評価が記されています。
この年のボルドーは★★★、この年は★、という感じです。
(*ネットで「ヴィンテージチャート」という言葉を入れて検索すると
関連サイトがたくさん出て来ますので、見たことのない方は是非一度見てみてください。)
でも・・・以前のメルマガで書いたのですが、
ヴィンテージを評価する上で単純に「良い」/「悪い」の二元論だけで捉えてしまうのは
ワインを楽しむ上でとても勿体ないことだし、そもそも片手落ちである、と思います。
天気の良かった年だから問題無く良い、この年は雨が多かったから残念、
という先入観を持って試飲をすると、ワインを楽しむ上で正しい評価をし損ねる場合があります。
生産者が心血を注いで造ったワインには、たとえ気候に恵まれなかったヴィンテージでも、
必ず『その年ならではの価値・個性』があるからです。
どんな生産者も、決して「今年は天気が悪かったからしょうがない、来年がんばろう」なんて考えません。
不十分な条件下だったとしても、“その年ならでは”の個性を表現するために全力を尽くすものです。
結果出来あがるワインは、その年にしか表現しえない確かなキャラクターを持っていて、
恵まれたヴィンテージよりやや軽めに感じることはあるものの、
逆に類稀なエレガンス・バランスを獲得している、なんていうケースもあります。
概してそういったワインは、
例えば通常自分のワインの飲み頃を「20年後」と設定しているようなワインでも、
10年15年後に素晴らしい飲み頃になって楽しむことが出来ます。
早く楽しめる、それも一つのメリットですよね。
雑誌やワイン評論家のヴィンテージ評価が非常に高かった場合、
投機目的での購入などが相次ぎ、ワインの価格が高騰してしまいます。
ですが、それ以外の年ならば本来の適正価格を遥かに超えるような法外な値が付くこともありません。
もしも飲んだことのない生産者のワイン(ボルドーのグラン・クリュなど)を初めて飲むのだったら、
評価の飛び抜けていない年のワインを手頃な価格で飲んでみるのも良いと思います。
その生産者としての「歴史の残る名作」ではないかもしれませんが、
造り手としての考え方やセンス、難しい年を乗り越えたかどうかの力をある程度判断することもできるからです。
まあそもそも、本当に熱意ある生産者のワインは、たとえ評価としては良くない年と言われていても、
十分に満足出来る素晴らしいワインになっているものですけどね。
ここで文字数が尽きてしまいました・・!
次回は引き続き“垂直試飲”を実施する意味、についてお話をさせて戴きます。
次のテーマは垂直試飲で分かる、「熟成のポテンシャルと香味変化の傾向」。
また長くなりそうなお話ですが・・・・少し待っていて下さいね。
そうそう、今回実施したシャトー・マルゴー垂直試飲はあっという間に満席になってしまいご参加戴けなかった方も多いので、
いずれ別のワインを使って「垂直試飲」セミナーをやってみようかとも思っています。
楽しみにしていてください!
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