【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【2月】
2月。畑のブドウ木はまだ眠りについているものの、その内側では少しずつ目覚める準備が始まっています。冬の間の剪定も見通しがついたこのタイミングで、余裕のできた時間を使ってプロモーション活動を行う生産者も少なくはありません。国内外の取引先での試飲会に顔を出したり、ワインセミナーに招かれたり、世界中から大勢の生産者やワイン関係者が集まるワインの見本Vinexpo(ヴィネクスポ)が開催されるものこの時期です。
ラクレット
春の訪れを前に、まだもう少し寒さは続きます。今回は、そんな寒い日の定番料理について触れてみたいと思います。冬の定番料理といえば、日本であれば鍋料理でしょうか?おでんも良いですよね。
フランスにも冬の定番といえる料理が色々あります。生牡蠣やポトフがメジャーですが、ワインのすすむ筆頭格といえば、わたし的には「ラクレット」。日本でも最近は知名度が高くなりました。ホクホクのじゃがいもやソーセージ、ピクルスなど、好きな食材に溶かしたラクレットチーズをかけて頂く料理です。元々はスイスが発祥で、削るという意味の「Racler(ラクレ)」が名前の由来となっています。レストランなどでは大きな丸いラクレットチーズを半分にカットし、その断面を専用の機械で溶かして、まさに「削って」食材にかけてサーヴしてくれます。
「チーズフォンデュはしないけれど、ラクレットは良くするよ」というフランス家庭は多いもの。一家に一台といったら大袈裟かもしれませんが家庭用ラクレット機を持っている人は多く、ラクレット用にカットされたチーズもスーパーなどで気軽に手に入ります。野菜の下準備をして、買ってきたシャルキュトリー(ソーセージやハムなど)をお皿に盛って、バケットを切れば準備完了。あとはラクレット機についている小さなトレーで各自が自分のペースでチーズを溶かして食材にかけていただきます。この自分でチーズを溶かすという作業がまた楽しいのです。冬の間、家族や友人とラクレット機を何度となく囲んで楽しみます。もちろん、テーブルにはワインが欠かせません。ラクレットに合わせるのならまずは辛口の白ワインといきましょう。トロッと溶けたチーズを口に含んでワインを飲む。無限ループの始まりです。
カスレ
冬になると食べたくなる定番料理をもう1つ。「カスレ」。たっぷりの白インゲン豆に鴨や豚、羊やソーセージなどの肉類を加え、ニンニクやハーブと一緒にトマトベースで煮込み、最後に暖炉やオーブンでパリッと表面に焼き色をつけた料理です。このカスレはフランス南西部ラングドック地方を代表する郷土料理。その発祥は14世紀中頃に英仏間で起こった百年戦争まで遡り、イギリス軍に包囲された街の人々が倉庫にたくさん保管されていた豆と自宅に残っていた食材を持ち寄って作った一皿が起源と言われ、本来はその名の由来となっている「Cassole (カソール)」という土鍋で作ります。肉の旨味をたっぷりと吸い込んだ白インゲン豆はなんともいえない深い味わいで、一緒に煮込んだお肉を崩しながら熱々を口に頬張ります。香ばしさ漂うカスレには、しっかりした赤ワインを。相乗効果が抜群です。
うーん、ワインが飲みたくなってきました!
そろそろ手を止めて、我が家の在庫から今夜のワインを決めてこようと思います。
皆様も今宵、美味しいワインライフをお楽しみ下さい。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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