あ、せかんどおぴにおん 第21回「シャトー・ラモット・ギニャール 2012年」
『あ、せかんどおぴにおん』第21回
「シャトー・ラモット・ギニャール 2012年」
目次
このコラムについて(ここは毎回同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
21回目にとりあげるのは、「シャトー・ラモット・ギニャール 2012年」です。
貴腐ワインとは
貴腐ワインは「貴腐ブドウ」によって作られるワインです。貴腐=腐った、と言う文字ですが、果実が単純に腐ったわけではありません。ある限定的な気候条件のもとだけで発生する「ボトリティス・シネレア」という菌(カビ)がブドウに付着。ブドウ果実中の水分だけを無くしてしまい、ブドウはまるで干しブドウのように枯れてしまう・・・。これが「貴腐」状態です。
この状態のブドウは、水分だけを失っている分果汁の濃縮度は高まり、極限まで高い糖度の果汁を持ったブドウができます。この僅かに残った甘い甘い果汁を搾って仕込むのが、「貴腐ワイン」。フランス語で「Pourriture noble(プリチュール・ノーブル)=高貴に腐った」と言われ、つまり日本語の「貴腐」という一瞬目を疑う名称は、ちゃんと直訳された名称なんですね。
今回のワインは貴腐ワインと呼ばれる甘口ワインです。貴腐ワインとは何か。答えはもう商品ページに書いてありました。高貴に腐る。良い言葉です。菌が付着するというとどこかマイナスなイメージを想起させるかもしれませんが、そもそもワインが造られる発酵過程そのものが菌によるものですから、人間は菌をうまく利用して美味しいものを造ってきたわけです。
菌が付着し水分が失われることで、果実の濃縮度が高まり、糖度の高いブドウができる。なんか簡単に聞こえますが、特定の条件が揃わないとなかなかうまくいきませんし、何より非常に手間がかかります。詳しくは下記のコラムを参照いただければと思います。
条件が揃い、かなりの手間をかけないと生まれない貴腐ワインは非常に貴重です。そんな貴重な存在の中でも、特に品質が高いとされているのが世界三大貴腐ワインと呼ばれる代表的な産地の貴腐ワインがあります。今回のワインは、その一つ、ソーテルヌのワインなのです。
世界三大貴腐ワインの一つ:ソーテルヌ
世界三大貴腐ワインについては、こちらのコラムを参照ください。というか先ほどと同じです。。
実はこのコラムで使われている世界三大貴腐ワインの一つ、ハンガリーのトカイの写真は、私がトカイを訪問した際に撮影したものです。実際に訪問してみると、貴腐ワインの生育条件である霧がかった場所であることが実感できました。
今回テイスティングするソーテルヌの貴腐ワインは、フランス・ボルドー地方にあるソーテルヌ地区とその周辺の5つの村で栽培されたもの。セミヨンを主体にソーヴィニヨン・ブランやミュスカデルなどをブレンドして造られています。
長いので誰も読んでいないと思いますが、以前にワインと美術でオランダとボルドーの関係を取り上げた際にもソーテルヌは出てきました。実はボルドーを商業的なワイン産地へと変えたオランダ人自身が甘口の白を好んだことから、一部地域では栽培品種を黒ブドウから白ブドウへと変えさせたということがあったそうです。その地域には現在のソーテルヌも含まれていたとか。17世紀のこのころからソーテルヌの甘口ワイン文化は始まり、現代では世界三大貴腐ワイン、しかもそのなかでももっとも有名な産地へとなったのです。
今回テイスティングするシャトー・ラモット・ギニャールはソーテルヌの中でも2級格付けを与えられている、好条件の立地を誇るシャトーです。その分ハーフボトル(375ml)でありながら、税込3,000円(2012年ヴィンテージ:2022年4月現在)と結構いい値段をするわけですが、せっかく貴腐ワインを試していただくなら、この品質の高いハーフボトルでぜひお試しいただければと思います。
ということで本当に品質が高いかどうか、いよいよテイスティングです。
使えるテイスティング用語
と、その前に。貴腐ワインに使えるテイスティング用語のご紹介です。
ワインボキャブラ天国のシリーズは店長による、すでに120回を迎えている長期連載コラムですが、非常にわかりやすくテイスティングの表現が広がる内容です。ぜひご自身でワインを試飲される際には、使いたい語彙を探して、より深く理解してから自分なりにコメントを考えると、表現の幅はどんどん広がっていきますよ。というわけで、やっとテイスティングです。
いよいよテイスティング
≪こんな香り・味わいのワインです≫:
焼きリンゴに蜂蜜をかけ、ほんの少しのスパイスをちりばめたような香り、極限まで凝縮された甘みと力強さ、そして貴腐ワイン独特の優しい酸味が口の中を一気に包み込みます。この力と均衡してマリアージュできるのが、塩味と青カビの複雑味を兼ね備えたブルーチーズ、または同等の甘さとまろやかさを持つ、クリームを使ったスイーツ類など。ブルーチーズの個性的な香りは蜂蜜の香りに中和され、その独特の強い香りまでが心地よいものに変貌していきます。
店長のテイスティングコメントはこんな感じでした。
まず私が強く感じたのは、冷やしたほうが絶対に美味しい!ということです。コーラをぬるい状態で飲むと美味しくないように、こういう甘口ワインは十分に冷やした状態で飲むことで、もっとも全体のバランスが整い、心地よい甘さとなります。
香りは店長が言うような、焼きリンゴ、蜂蜜、あるいは煮詰めたイチゴジャムのような香りも。スパイスをちりばめたような、なんて書いてますが、私はその中でも特にシナモンのようなふわっとした甘い香りを強く感じました。
非常に魅力的な甘みがとろりと口の中を満たします。このとろみがたまらないのです。とろみの奥から甘みがじんわりと染みでてくるような、口の中で非常に長く楽しめます。そして酸味、あとは最後のふわっと抜けるアルコール感も相まって、甘みととろみに似合わずとてもすっきりとして爽快感があります。甘とろとすっきりのバランスがかなり心地よいです。貴腐菌バンザイ\(^o^)/といったところです。
マリアージュでお薦めなのが、同調系のシナモントーストやいちごジャムトースト。香ばしく焼き上げたトーストとの相性も最高です。
ハーフボトルで3,000円。なかなかに高級スイーツかもしれませんが、その贅沢感ははかり知れないものがあります。心を浮遊させるような心地よい甘口貴腐ワインの世界を、ぜひ皆さんも堪能してみてください。
以上。皆さんも是非お試しいただければ幸いにございます。
宜しければ下記のお料理パパの記事も是非ご覧ください。
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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