ブドウの足踏み

≪1枚の写真からワイン造りの現場に迫る≫

『グラス越しの風景 -1枚の写真から-』
第12回『ブドウの足踏み』

多分、ワイン好きの方なら一度は写真を見たことがあるかと思います。ブドウを足で踏んで潰しているところ。かつてワインが今よりも宗教的な意味合いの強いお酒だった時代、「穢れの無い処女」が踏んだ果実でワインを造るというのが、そのワインの純潔性を象徴する手段だったのでしょうね。（＊一部の地域では逆に、収穫後の蔵は女人禁制だった、というところもあるそうです。）

ですがさすがに現在はこんな原始的な造り方を続けている生産者はありません。衛生的にも問題がありますし、何よりも量が造れないですから。この製法で何千本、何万本もワインを造ったら、何人の穢れなき処女が必要になる事か・・・。

とはいえ、産地や生産者によってはその年の収穫を祝う儀式やイベント的にこの足踏みを実施しているところもありまして、この写真もそんなイベントで撮影された一枚です。ブドウの上にビニールシートを敷いてその上から踏み潰し、その果汁で本当にワインを仕込むことだってあります。

テロワール追及や伝統製法への回帰がトレンドの現在。この「足踏み」が、じつは最もおいしく作る製法だ・・・なんていう研究結果が出たら面白いなあ、と密かに思っています。まあ、もしそうなったら生産者は本当に大変だと思いますが　笑

ということで今週の「グラス越しの風景」はこの辺で。また次回、1枚の写真を見ながらワインのことを書いていこうと思います！