ワインボキャブラ天国【第58回】「粘性の高い=グリセリンの多い」 英:fat 仏:glycerine
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「粘性の高い=グリセリンの多い」
英:fat
仏:glycerine (*e2つ共に右上がりアクセント 形容詞:発音は「グリセリネ」)
「グリセリン」はアルコールの1種。
アルコール発酵により生まれワインには自然に含まれていますが、他の食品では「増粘剤」として添加されることもある物質です。
つまりワインにおいて粘性が高いということは、
⇒グリセリンを豊富に含んでいる
⇒つまりアルコール度数が高い
⇒それはアルコールの基となる糖度の高さに拠る
ということになります。
粘性の高いワインは、味わい的にもアルコールによる甘味を感じたり、同時に口当たりに重みやとろみを感じさせたりします。
この「ワインの粘性」に関して、関連する言葉があるのですが・・・。
「ワインの涙」や「ワインの脚」などという表現を聞いたことが無いでしょうか。
(地域によっては「カーテン」とか「教会の窓」とも言います。)
ワイングラスに注がれたワイン、グラスを斜めに傾けて元に戻すと、グラスの壁面を伝ってワイングラスが舌に落ちていくのが見えると思います。
その際に表面張力でアルコール分が水分を包みこみ、まるで涙が流れ落ちていくように見えることからこのように呼ばれるようになりました。
ワイン好きなら誰もが
「何てロマンティックな表現なのだろう・・・だからワインって素敵なんだよな」
と思わず感心してしまう表現ですよね。
実際、僕がワインの世界に入った1990年代には、この「涙」がゆっくりと流れ落ちるワイン=要するに「粘性のあるワイン」は、凝縮度が非常に高い良質なワインだ、という論法が存在しました。
僕もそれをごく当たり前のように信じておりまして 笑、いつもグラスを傾けては流れ落ちる雫の一筋一筋をじっと見つめていた記憶があります。
ですが、基本的には冒頭に書いたように粘性の高さはアルコール度数の高さに拠るもの。
ワイン自体の凝縮度やおいしさ、熟成度などとは何の関連性もありません。
「ワインの涙」を眺めているのはなかなか乙なものですが、そこで実際に判断できるのはアルコールの強さだけなのですから、それよりはもっと香りや味わいをゆっくりと楽しむことに時間を使った方が有益かもしれませんね。
ということで本日はこのへんで。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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