ワインボキャブラ天国【第106回】「デレスタージュ/澱抜き静置法」英:rack and return 仏:delestage
- 2021.11.27
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「デレスタージュ/澱抜き静置法」
英:rack and return
仏:delestage (男性名詞 発音は「デレスタージュ」)
収穫したブドウをタンク/樽などに入れて発酵させ果皮成分を抽出する際に、槽内の発酵の進度バランスを整えたり、酸素を供給したりするために行う作業として、これまでに
① 『ピジャージュ』:「櫂=攪拌用の棒」を発酵槽のワインに入れ液面に浮かび上がってくる果皮などの固形成分=「果帽」を手動で押し入れる作業
② 『ルモンタージュ/ポンピングオーバー』:発酵タンクに据え付けられたポンプの力を利用、タンク下部から発酵中のワインを抜き出しタンク上部に流し入れて戻すことで液面の固形物を沈め攪拌する作業
の2つを紹介してきました。本日取り上げる『デレスタージュ』は『ルモンタージュ』と基本的には同じような作業です。異なるのは、ルモンタージュがポンプによってタンク内の果汁を上下に循環させるのに対し、デレスタージュは果帽が液面に浮上した時点で果汁のみを完全に取り出して分離してしまい、果帽(果皮・種子・果梗)と果汁に分けた状態で数時間静置、その後再度発酵タンクに戻して一緒にします。
澱(=今回は果帽を指します)を抜いて静置するので、「澱抜き静置法」という名称が付けられました。
この手法を取ることによるメリットは、主に以下3点であると考えられています。
・ルモンタージュと同様、タンク内にある果汁の抽出状態を均一化できる
・分離された果帽を空気に触れさせることで酸化が進行し、タンニン成分が柔らかで優しいタッチになる
・酵素の働きにより果皮成分の特にフェノール化合物の抽出を促す
一旦果汁と果帽を分けておくことで、過度な抽出・プレスをしなくても果皮成分がワインに浸出する効果があるんですね。元々はローヌ地方などで盛んに採用されていた手法のようですが、最近は欧州のほかの国々でも採用する生産者が増えてきているとか。ワインの製法も本当にどんどん変わっていきますね…キャッチアップしていくのが大変です!
それでは今回はこのくらいで・・・。4回続いた抽出工程作業のシリーズもこれで一旦終了です。
次週は久しぶりに製法から離れた用語を取り上げようと思いますので、技術的な部分にはあまり興味の持てなかった方も是非読んでみてくださいね。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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