ワインボキャブラ天国【第120回】「マセラシオン・カルボニック/炭酸ガス浸漬法」 英:maceration 仏:maceration carbonique
- 2022.03.27
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「マセラシオン・カルボニック/炭酸ガス浸漬法」
英:maceration
仏:maceration carbonique (最初のeに右上がりアクセント 発音は「マセラスィオン・カルボニーク」)
目次
『マセラシオン・カルボニック=炭酸ガス浸漬法』とは
今回のテーマは『マセラシオン・カルボニック=炭酸ガス浸漬法』。
前回第119回のの『マセラシオン/浸漬・醸し』の回を未読の方は、まずはそちらを読んでからのほうが分かりやすいかと思います。このコラム巻末にリンクボタンがありますので、そちらから是非第119回に行って戴いて、その後戻ってきてくださいね。
さて、『マセラシオン・カルボニック=炭酸ガス浸漬法』。こちらは、アルコール発酵が進行中のの醸造タンク醸造内に炭酸ガスを注入して充満させることで果実に圧力をかけ、色素成分を通常よりも速いスピードで抽出するための製法です。炭酸ガス浸漬法を実施している醸造タンク内は「嫌気性の環境」、つまり酸素が殆ど無い環境条件下になり、二酸化炭素がブドウの皮を透過して果肉にまで入り込み、細胞内で発酵活動が刺激されるために発酵の進行速度があがり、同時に果皮からの色素成分が早く抽出されると言われています。
『ボージョレ・ヌーボー』の仕込みで良く採用される手法なんです
この製法は実は皆さまにもお馴染みのワインに使われています。フランス ブルゴーニュ地方ボージョレ地区で「その年に収穫されたブドウを素早く仕込み、11月の第3木曜日に新酒として楽しむワイン」。つまり『ボージョレ・ヌーボー』の醸造に採用されることが多い手法なのです。
『ボージョレ・ヌーボー』は毎年11月の第3木曜日に解禁されるワインですが、ブドウの収穫時期は早くても8月の末頃から。
世界各地への輸送が10月末頃には行われますので、収穫から出荷までの期間が2か月ほどしかありません。短期間でワインを仕込み、且つ「出来立てで飲んでもおいしいスタイルに仕上げる」ために、この『マセラシオン・カルボニック』製法が取られます。仕込みの時間を少しでも短縮し、その後短期間でもワインを落ち着かせてから各市場に送り出す…まさに、ヌーボーにうってつけの製法だと言えますね。
(*『ボージョレ・ヌーボー』について詳しく知りたい方は、
『なるほどのあるワインコラム 「ボージョレ・ヌーボーはまずいって本当?」』
をご参照ください。)
ボージョレ・ヌーボー独特の香りはこの製法に由来するとも
この製法を行った副産物として、ボージョレ・ヌーボーには独特の「いちごキャンディのような甘い香り」が生じます。また、果皮に含まれる成分の中から色素が突出して早く抽出されるため、色調はしっかり赤ワインの色合いが付いていながらタンニン分による渋み・苦味の少ないワインに仕上がります。
粉砕・発酵前に酸素が豊富な環境に含まれていたブドウは、二酸化炭素が豊富な環境で生産されたブドウでは、異なるスタイルのワインに仕上がる・・・という研究結果はなんと19世紀後半には発見されていたそうです。
同じブドウでも発酵の環境で味が変わる・・・やっぱり、ブドウもワインも生き物だということですね。
それでは今回はこのへんにしておきましょう。今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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