今月のおすすめワイン本【2022年3月】世界一高いワイン?を巡るノンフィクション・ミステリー
- 2022.03.07
- 今月のおすすめワイン本
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本をご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ。
39冊目に選んだのは…ワイン好きなら秀逸なミステリ小説を読むようにグイグイ引き込まれて本を閉じることが出来ずに徹夜で楽しめてしまうこと間違いなしのこの本。アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーソンが所有していたとされる「シャトー・ラフィット・ロートシルト 1787年」通称“ジェファーソン・ボトル”の真贋を巡るノンフィクション『世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情―真贋をめぐる大騒動』(早川書房 ベンジャミン ウォレスさん著、佐藤桂さん翻訳 税込定価2,420円)をプッシュしたいと思います!
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目次
「高いワイン」にまつわる本、色々出ているのですが・・・
さて、まずは前置きです。
近年、ワインが国際的なビジネスの上で役立つ「教養」のひとつとして認知されるようになったらしく…「とにかくこのへん覚えて置けばサマになるから!」みたいなマニュアル本がやけに多く出ております。
最も話題になったのはこれでしょうか。渡辺順子さん著、タイトルもそのものずばり『高いワイン』。
内容は非常にシンプル。世界のワイン産地各所の「高くて有名なワイン」だけをピックアップし、醸造所の歴史や最低限これだけは把握しておくと接待の席などでも話題に出来そう…というエピソード・ストーリーだけを凝縮して掲載しています。勿論、パーカーポイント高得点獲得などデータもしっかり押さえた編集。
ワインガイドとしても十分に成立していますし、ビジネス本としての実用性もばっちりです。
そしてこことても重要ですね、「字が大きい」 笑
パラパラめくるだけでも重要なキーワードやポイントが素早く目に入ってきますので、接待の時にテーブルの下で開いていても読みやすそうな感じ。若いビジネスパーソンは、いつか来る大事な接待に備えて1冊持っておいても良いかもしれないですよ。
これ以外にも「高いワインを教養として知る」ことをテーマにした書籍は色々出ています。
同じく渡辺順子さんの著作『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』、ソムリエ渋谷康弘さんによる『成功する人はなぜ、高いワインを飲むのか』などなど。
まあ個人的にはあんまり共感する内容では無いのですが 笑、ワインを知ろうという方が一人でも増えるのは僕らにとってもありがたいことではありますので・・・。
(*各書籍の購入ページリンクはコラム巻末に掲載しております)
でも「世界一高いワイン」についての本は、まるでサスペンス映画のような優れたノンフィクション。
ということで、いよいよ僕が本当の意味でワクワクして楽しめた「高いワインについての本」をご紹介したいと思います。この本はネタバレ絶対禁止の作品ですから、大まかなストーリー(実際の出来事ですが敢えてストーリー、と書きます)だけをお伝えしますね。
メインの舞台となるのは、1985年ロンドンのクリスティーズ・オークション。その日に出品されたのは非常に状態のよい「シャトー・ラフィット・ロートシルト1787年」。それはクリスティーズで競売にかけられたなかで最も古い赤ワインというだけでなく、アメリカ第3代大統領トーマス・ジェファーソンが所有していたとされるワインの一本。ボトルは10万5000ポンド(当時の為替レートで約3000万円)でアメリカのフォーブス家の手に渡ることとなりました。(日本でも良く知られる雑誌「フォーブス」のあのファミリーです。)
ですが…この「ジェファーソン・ボトル」の信憑性には疑問の声が。トーマス・ジェファーソンを研究する歴史家が、史料的な裏付けがないと主張、ボトルを持ちこんだドイツの希少ワインコレクターは「パリのとある邸宅の地下の隠し部屋から見つかったもの」だと言うだけで、それ以上は口をつぐんだまま。ナチスが隠していた略奪品だったという噂も…しかし、実はこれは手の込んだ大掛かりなオークション詐欺だったのでは???
まるで、映画『オーシャンズ』シリーズを想わせる関係者たちの丁々発止のやり取りが展開します。マイケル・ブロードベントなどワイン界ではお馴染みの有名人も登場、ラフィット以外にも古い『シャトー・ディケム』を始め様々なワインがオークションのネタに登場するのも、ワイン好きなら面白く楽しめますよ。
この騒動よりも面白かったトーマス・ジェファーソンのワイン好きぶりと、改めて考えた「ワインを集めるということ
僕がこの本で一番面白かったのは実はこの「ジェファーソン・ボトル」の真贋についてのあれこれよりも、トーマス・ジェファーソンという人そのもののエピソードでした。だって、この人本当にクレイジーなほどのワイン好きなんです。
まだ安月給の頃から給料の大半を使ってワインを買い漁ったり、フランスの有名生産者を訪れては直接ワインを買い付けて大量に母国に持ち帰ったりと、やっていることはただのワインオタクと全く変わらないのでした。
とにかく大量のワインをコレクションしていたようなので「ジェファーソンが所有していた」となればどんな古酒だろうがトンデモワインだろうが、「もしかしたら本物かも・・・?」と思わされてしまうのも仕方のないことかもしれませんね。
そして、こういう騒動の話を読み終えて僕が改めて思ったのは「ワインは後の世代に残すものじゃなくて、自分で飲んで楽しむべきもの」ということ。ワインコレクター・愛好家が亡くなり、遺族はワインに全く興味のないためそれをさっさと買い取り屋や中古品売買サイトに売りに出し…というのが日本でも結構増えているようです。飲まないのだから転売することが悪いとは思いませんが、いちワイン屋としては状態や真贋の良く分からない古酒が世の中に気軽に出回るのはあまり歓迎できないなあ・・・とちょっと心配に思っています。
中国の富裕層に大人気の『シャトー・ラフィット』、縁起の良い数字である「8」が付く2008年ヴィンテージ(なんとラフィット自ら中国市場輸出向けボトルには、漢字で「八」の字を印字したほどです)が、ラフィットの年間総生産量を上回る本数が中国国内で流通したと言われています。それって一体どういうこと・・・?言わずもがなです 笑
*例えばこんな関連コラムもありますので良かったら読んでみてください。
気になるワインニュースを総ざらい ~「ワインの税金」と「偽造ワイン対策の最新技術」
↓↓↓
https://firadis.net/column_pro/201806/
ということで今回はこのへんで。
『世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情―真贋をめぐる大騒動』、文章は若干読みにくいかもしれませんが、内容は面白いので是非読んでみてくださいね。
さて、次回はどんなワイン本をご紹介しましょうか・・・おっと、またこんな面白そうな本を見つけてしまった・・・早速ポチっとな、と。早く届かないかなあ。。。
*本日ご紹介した4冊は、Amazon他にて新品・古書等で購入できます!
『世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情―真贋をめぐる大騒動』(早川書房 ベンジャミン ウォレスさん著、佐藤桂さん翻訳 税込定価2,420円)
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『高いワイン』(ダイヤモンド社 渡辺順子さん著 税込定価1,870円)
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『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』(ダイヤモンド社 渡辺順子さん著 税込定価1,760円)
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『成功する人はなぜ、高いワインを飲むのか』(朝日新聞出版 渋谷 康弘さん著 税込定価1,760円)
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