辛口ワインは辛くない。「辛口」「甘口」を知ろう。
- 2021.02.10
- ちょっと知りたい、もっと知りたいワインの話
- イタリア, シャンパーニュ, スパークリングワイン, スペイン, フランス, ラベル, 発酵, 白ワイン, 赤ワイン
白ワインやロゼワインはすっきり爽やかなものから優しく癒してくれる甘いものまで、実に味わいが豊かです。ボトルの裏ラベルに良く記載されている「辛口」「甘口」という表現。「やや辛口」「やや甘口」と更に細かく表記されていることもありますが、この味わいの目安を参考にワインを購入される方も多いのでは。。。赤ワインの味わいを「ボディ」という言葉を使って表現するのに対して、白ワインやロゼワインの総体的な味わいはこのように「辛口」「甘口」で表現されます。
「辛口ってどのくらい辛いの?」「辛いの、苦手〜」と「辛口」を避けてきた方、大丈夫です! 安心して下さい。辛口ワインは辛くありません。
目次
辛口ワインは辛くない。
カレーや韓国料理の甘辛度を表すのに唐辛子マークがよく使われていますよね。唐辛子の数が多くなるほど辛くなるといったような。あの表記、わかりやすいですよね。でも、ワインの甘辛はあの唐辛子マークの意味する辛さとはまったく別物です。唐辛子の辛さは英語でいうところの「hot」ですが、ワインの辛さは例えるならば「dry」。そして「辛い」のではなくて「甘くない」なのです。
ワインが辛口になったり甘口になったりするのには、残糖度が影響しています。残糖とはワイン中の糖分のことですが、そもそもなぜ「糖分」ではなくて「残糖」という言葉を使うのでしょうか? それはワインの醸造工程を知ると納得できます。
ワインはぶどうに含まれている糖分が発酵によってアルコールと二酸化炭素に分解されることで生まれるのですが、 この時にどれだけ糖分を残すかによって甘辛度が変わってくるのです。甘口を造るのであれば、好みの甘さになった時点で発酵を止めて糖分を残します。ワイン中に「残った糖分、残した糖分」なので「残糖」という訳ですね。発酵が進むほど糖分が分解されて残糖が少なくなっていくので、甘さも減っていきます。要は「甘くない」ワインになっていくのです。口に含んだ瞬間に甘味を感じる残糖の多い「甘口」に比べて、すっきりと爽やかな第一印象を与えてくれる「甘くない」ワイン、それが「辛口」ワインです。フランスやイタリア、スペインなどEUの基準では、スティルワイン(私達が一般的に楽しんでいる非発泡性ワインの総称)の残糖が1リットルあたり4g以下のワインを「辛口」としています。
「辛いのはちょっと。。。」と尻込みされていた方も是非試してみて下さいね。
辛口、甘口の見分け方
裏ラベルに辛口、甘口の表記があれば迷うことも無いのですが、全てのワインに記載があるわけではありません。ではどのように「辛口」「甘口」を見分けたら良いのでしょうか?
残念ながら、それには決定打がありません。でも、目安となるものがあります。それは「アルコール度数」です。
ワインの醸造は発酵が進むほど糖分が分解されてアルコールに変わっていくので、糖分が少ないほどアルコール度数が高くなっていきます。なので、通常は甘口に比べて辛口の方がアルコール度数が高くなり、一般的には13%が甘口、辛口のボーダーラインとされています。13%以上が辛口、それ以下が甘口の可能性が高いということになりますので、覚えておくとひとつの目安になるかと思います。
ただし、これは全てのワインにいえることではなく、甘口でもデザートワインといわれるアルコール度数の高い特別な甘口ワインもあることも覚えておいて下さいね。
一目で分かるシャンパーニュの辛口、甘口
裏ラベルを頼りにしなくても、一目で甘辛度がわかるワインがあります。それはシャンパーニュ。
シャンパーニュは醸造工程の最後に「門出のリキュール(リキュール・デクスペディション/Liqueur d’expedition)」と呼ばれる糖分を含んだリキュールを添加します。この工程をドサージュ(Dosage)というのですが、この作業によってシャンパーニュの甘辛のスタイルが決まり、出来上がったシャンパーニュの糖分の量によって甘辛度の名称が決まっています。ほとんどのシャンパーニュのラベルに記載されているので、その名称を覚えておくと甘辛度が一目見てわかります。一般的に多く流通しているのが、「Brut」で、普段、私達が口にしているのも「Brut」が多いといえるので、その味わいを基準に甘辛度をイメージしてみて下さい。
*下にいくほど甘口となります。
糖分3g以下/L | Brut Nature(ブリュット・ナチュール), Pas Doze(パ・ドゼ), Dosage Zero(ドサージュ・ゼロ) |
糖分0〜6g以下/L | Extra Brut(エクストラ・ブリュット) |
糖分12g以下/L | Brut(ブリュット) |
糖分12〜17g以上/L | Extra Dry(エクストラ・ドライ) |
糖分17〜32g以上/L | Sec(セック |
糖分32〜50g以上/L | Demi Sec(ドゥミ・セック) |
糖分50g以上/L | Deux(ドゥー) |
上の表記はシャンパーニュに限られたものではなく、フランスのスパークリングワインにも用いられます。
実はEU共通の規定なので、イタリア・スペイン・ドイツなどのスパークリングワインにも適用されます。参考までに各国どのような表記になるかをあげておきますね。発音は違ってもスペルが一緒だったり、どことなく似ていますよ。
イタリア | スペイン | ドイツ | |
糖分3g以下/L | Brut Nature(ブルット・ナトゥーレ) | Brut Nature(ブルット・ナトゥーレ) |
Brute Nature(ブリュット・ナトゥア), |
糖分0〜6g以下/L | Extra Brut(エクストラ・ブルット) | Extra Brut(エクストラ・ブルット) | Extra Brut(エクストラ・ブリュット) |
糖分12g以下/L | Brut (ブルット) | Brut (ブルット) | Brut (ブリュット) |
糖分12〜17g以上/L | Extra Secco(エクストラ・セッコ), Extra Dry(エクストラ・ドライ) |
Extra Seco(エクストラ・セコ) | Extra Trocken(エクストラ・トロッケン) |
糖分17〜32g以上/L | Secco(セッコ), Dry(ドライ), Asciutto(アシュット) |
Seco(セコ) | Trocken(トロッケン) |
糖分32〜50g以上/L |
Semi Secco(セミ・セッコ), |
Semi Seco(セミ・セコ) | Halbtrocken(ハルプトロッケン) |
糖分50g以上/L | Dolce(ドルチェ) | Dulce(ドゥルセ) | Mild(ミルト) |
赤ワインには使わない?「辛口」「甘口」の表現
「辛口」「甘口」という表現、では、赤ワインには使わないのでしょうか?
いえいえ、使いますよ。甘口の赤ワインもあります。ただ、甘口の赤ワインはとても少ないのです。通常、赤ワインは味わいの奥深さ、複雑味を引き出すために糖分がなくなるまで発酵させるため、辛口となります。私達が口にする赤ワインのほとんどが辛口なので「甘口」「辛口」と表現する必要がないのです。そのため「辛口」「甘口」ではなく、「ボディ」という言葉でその味わいの多様性を表現するのです。
今回は「辛口」「甘口」という表現について見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
ワインを選ぶとき、飲むとき、語るとき、ちょっと思い出していただけたら嬉しいです。
楽しいワインライフをお過ごしください。
ライター紹介:新井田由佳
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。
知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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