ワインボキャブラ天国【第76回】「ピーマン」 英:bell pepper 仏:poivron
- 2021.04.10
- ワインボキャブラ天国
- カベルネ・ソーヴィニヨン, フランス, ボルドー, 価格, 生産者, 香り
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「ピーマン」
英:bell pepper
仏:poivron (男性名詞:発音は「ポワヴロン」)
今回取り上げたこの言葉を見て「ピーマンの香り・味がするワインなんて本当にあるの??」と感じた方も結構いらっしゃると思いますが、結構あるんですね・・・
かつては『カベルネ・ソーヴィニョン』種の使用比率の高いボルドー(特に低価格帯のもの)や、ロワール地方の『カベルネ・フラン』100%使用のワイン、例えば『シノン』などに特徴的に見つけられる香り、と定義されていたくらいです。
しかし実はこの「ピーマンの香り」は、ブドウ品種の個性に正統に由来する香味ではありません。
我々がピーマンという野菜に思い描くイメージと言えば「青臭く、苦みの強い(これが食材としては魅力でもあるのですが)」だと思いますが、実はまさにそのイメージ通りの原因によって現れた香りです。
『カベルネ・ソーヴィニヨン』や『カベルネ・フラン』はきちんと完熟した段階で収穫されれば豊かなベリー系果実の香りがアロマの主軸となり、青臭さや茎っぽい香りは全くありません。
ですが特に『カベルネ・ソーヴィニヨン』は収穫期が遅く訪れるため、天候被害を早めに回避する目的で完熟前に収穫をしてしまう(*「今ならそこそこ良い作柄だけど、完熟を待つ間に大雨が降ったら台無し・・・ちょっと早いけど、もう今のうちに摘んでしまおう!」みたいな感じです)生産者も多く、未熟な果実で仕込まれたワインに青臭いピーマンの香り=『グリーンノート』が発生してしまう。
つまり、ピーマンの香りがするワインはネガティヴに評価すべきもの、ということです。
僕たちフィラディスのテイスターチームがボルドーワインの選定をする際は、この『グリーンノート』が感じ取れたワインに対してはかなり厳しい評価をし、採用を決めることはまずありません。
予期出来ない突然の天候被害を避けるため、安全な段階で収穫を済ませたい気持ちは痛いほど理解できますが、そこはやはりブドウの熟度がベストになるまで堪えに堪えてその年最高のワインを造ってもらいたい、と思ってしまう・・・
だからこそ、例えば非常に困難だったヴィンテージにも関わらず完熟を待った生産者の素晴らしいワインに出会えた時の嬉しさは格別ですし、惜しみなく賞賛をしたい気持ちでいっぱいになります。
カベルネ系のワインにピーマンの香りが見つかったときは、残念ながらちょっと未熟果だったのかな・・・と判断をしつつ、抜栓から少し時間を置き、果実味が開いてきた段階で楽しむなどの工夫をしてみましょう。
それでは今回はこのへんで。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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