ワインボキャブラ天国【第109回】「二次発酵 前編」 英:second fermentation 仏:fermentation secondaire
- 2021.12.18
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「二次発酵」
英:second fermentation
仏:fermentation secondaire (発音は「フェルモンタシオン・スゴンデール」)
「二次発酵」とは?
二次発酵とは文字通り二段階目の発酵。つまり、前回ご紹介した「アルコール発酵」をもう一度実施することです。
でも、既にブドウはワインになっています。
それなのに何故もう1回発酵させるのでしょうか。アルコール度数が足りないから、もっと強くするために2回発酵させるの?
ここで、もう一度アルコール発酵の化学式を思い出してみましょう。前回第108回の復習です。
アルコール発酵: C6H12O6→2C2H5OH+2CO2」
「ブドウ糖 C6H12O6を酵母が食べて、エチルアルコール 2C2H5OH と二酸化炭素 2CO2 を生み出す」という式ですね。
今回2回目の発酵でポイントになってくるのは、この「二酸化炭素=CO2」を生み出す、という部分です。
1回目のアルコール発酵で、ブドウは炭酸ガスを含んだワインに変わります。通常のスティルワイン(炭酸ガスを含んでいない赤ワイン・白ワイン)としてボトリングする場合は、基本的には発酵によって発生させた炭酸ガスを放出させてしまいます。
一方で、フレッシュで爽快感のあるワインを出来たてのうちに美味しく楽しんで欲しい・・・という場合はスティルワインでも微量の炭酸ガスを残したままボトリングすることも。例えば、仏ロワール地方の「ミュスカデ」や、アルザスのリースリングなどの若いヴィンテージのものに微炭酸を感じることがあります。
スパークリングワインに仕上げるための、2段階発酵
つまり…フレッシュに楽しんで欲しいタイプのワインに微量の炭酸ガスを残すことの更に一段階先が「スパークリングワイン」なのだと考えてみてください。ただ、1回目のアルコール発酵で発生させたCO2だけではスパークリングワインとしては力不足のため、炭酸ガスをもう少し足す必要があります。そのために、出来上がったワインにもう一度一定の糖分と酵母を加え、2回目の発酵を促すのが「二次発酵」ということです。
次回後編にてご紹介をしますが、シャンパーニュやスパークリングワインの発明はこの「二次発酵」が偶然発生してしまったことに由来するもの。発酵後のワインから酵母を濾過する技術が進んでいなかった時代に、瓶詰めされたワインの中に残っていた酵母が勝手に再発酵をしたために炭酸ガス入りのワインができました。
それを見つけたのがかの「ドン・ペリニヨン」で…というのが有名な話(信じるか信じないかは、あなた次第です)。
現代ではこの「二次発酵」を様々な技術・手法でコントロールし、ガス入りワインの安定的な製造が可能になりました。
次回後編では、引き続き具体的な二次発酵の手法についてご紹介していきたいと思います。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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