ワインボキャブラ天国【第126回】「ウイヤージュ(補酒)」 英:ouillage 仏:ouillage
- 2022.05.08
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「ウイヤージュ(補酒)」
英:ouillage 仏:ouillage (男性名詞 発音はそのまま「ウイヤージュ」)
目次
『ウイヤージュ=補酒』とは?
今回の言葉は、前回第125回の中でほぼご紹介してしまっているのでその補足的な内容になります。
ですので前回『天使の分け前』をまだ未読の方は宜しければそちらを読んでから今回を読んで戴くと良いのではないかな、と思います。
勿論、今回も概要については(繰り返しとなりますが)書きますけどね。
【前回未読の方は宜しければまずこちらを…】
ワインボキャブラ天国【第125回】「天使の分け前」 英: angels’ share 仏: part des anges
さて、改めてご紹介となりますが『ウイヤージュ』についてご説明させて戴きます。
オーク製の木樽などでワイン(その他のお酒)を貯蔵・熟成させる際には、水分やアルコール分が蒸発することで液量が目減りしていきます。
木樽は完全密閉では無く、さすがに液体はほぼ通しませんが気体の出入りは自由なため、長い熟成の間には水分・アルコール分は蒸発/揮発して空気中に出ていくわけです。これによって樽内の液量が減った分が前回取り上げた『天使の取り分』です。
ワインは樽の空寸部分に残った酸素との接触により酸化し品質が劣化してしまいますので、目減りした部分に別途用意してあった同じ年の同じワインを入れて空寸を補います。これが『ウイヤージュ=補酒』です。
『補酒』をする方法
では『ウイヤージュ=補酒』はどのように実施するのか…ここが今回知って(見て)戴きたいポイントです。じつは大変にシンプルな技法でして…下記の画像のように大型のジョーロ型器具にワインを入れ、樽1本1本が一杯になるまでワインを注ぎ入れていく、という作業です。
今回僕は初めて『ウイヤージュ』という言葉で画像検索をしてみたのですが、例えば『シャトー・ムートン・ロスチャイルド』や同系列の『シャトー・ダルマイヤック』『シャトー・クレール・ミロン』などの有名シャトーがこの作業をジョーロによる手作業で実施していることが確認できました。醸造関連機器にかなりの投資をし最新設備を導入しているこれらのシャトーが手作業で実施をしているところを見ると、今も手作業が結構一般的なものと思われます。
(*その他、ページトップの画像のように別タンクからパイプのようなものを引いて補酒していく作業方法もあります)
ジュラ地方の『クラヴラン』が620mlの理由
そして最後に、前回「補酒をせず、敢えて空気に触れさせて酸化のフレイヴァ―を付けるワイン」として取り上げたフランス ジュラ地方の「ヴァン・ジョーヌ」についておまけ知識を一つご紹介しましょう。
ジュラ地方では『クラヴラン』と呼ばれる、容量620mlの独特なボトルが使用されているのはご存知でしょうか?
ちなみに、こんな形のボトルです。(*ワインは『ドメーヌ・フィリップ・ヴァンデル ヴァン・ジョーヌ』です。)
この「620ml」という中途半端な容量になったのは、1Lのワインを「ヴァン・ジョーヌ」規定の熟成期間6年3か月間を熟成させた場合におよそ380mlが目減りして620ml程度になるから、だとか。
6年もあると天使も3分の1以上を飲んでしまうんですね・・・かなり大きな「分け前」です 笑
それでは今回はこのへんにしておきましょう。
今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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