ワインボキャブラ天国【第153回】「タイユ・ギュイヨ」 英:guyot pruning 仏:taille guyot
- 2022.12.11
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「タイユ・ギュイヨ」
英:guyot pruning
仏:taille guyot
ブドウ樹の剪定における『ギュイヨ方式』とは?
前回第152回ではブドウ樹の「剪定」作業の目的についてご紹介しまして、今回からは具体的なブドウ樹の「剪定・仕立て法」に関するお話を数回に分けて取り上げていきます。ワイン産地毎にどんな栽培の仕方をしているのか、その方式を採用している背景・意味は・・?というような内容ですので、若干いつもよりもマニアックな域に入っていくことになりそうです。お付き合いいただける方だけで大丈夫ですよ!
という訳で最初に紹介するのは「タイユ・ギュイヨ」という、上の画像のような仕立て法です。ボルドー地方やブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイ地域などで一般的に使われている栽培方式ですね。
この言葉を分解して訳していきますと・・・前回ご説明したように「タイユ」が「仕立て」で、「ギュイヨ」はこの栽培法を開発したフランス人の名前です。20世紀初頭に開発されたこの仕立て法は乾燥した気候で肥沃でない土地でのブドウ栽培に向くとされ、主にフランス、イタリア、ドイツなど欧州諸国で導入されていきました。
この方式のメリットは?
そしてこの後に伸ばす枝の数で「サンプルsimple=単体の」「ドゥーブル double=二重の」、という言葉を加えた「タイユ・ギュイヨ・サンプル/ドゥーブル」つまり、ギュイヨ―氏考案の単一仕立て、二本仕立てのようなスタイル分けがあります。
「サンプル」方式は一番太い幹の部分から幾つも伸びてくる梢を、長いものと短いもの各1本ずつだけにして残し(*ちょっと見辛いかもしれませんが上の画像で見てみてください)、そこから芽を生やさせる一方向に成長させていくスタイルです。
1本の樹から収穫するブドウを出来るだけ少なく低収量にしたい時に適した方式ですので、ボルドーやブルゴーニュなど上級ワインの産地で採用されることが多いわけですね。
そして「タイユ・ギュイヨ・ドゥーブル」は長梢と短梢を2本ずつ、双方向に伸ばしたスタイル。こちらですと1本あたりの収穫量はサンプル方式よりも増えますが、樹の植栽密度=単位面積あたりに植えられる本数は、半分となります。
ブドウというのは放っておくと光合成の光を求めてどんどん高いところまで蔓を伸ばして成長していってしまう、非常に生存能力の高い植物です。ですが、幹が高くなればなるほどそれを生かしておくための養分・エネルギーを多量に必要とするようになり、折角果実が実っても十分なエキス分が行き届かなくなる。そのため、敢えて樹を低い状態に保ったままで樹齢を重ねさせ、その上で更に収穫量を絞って凝縮したブドウを獲得しようとするのがこの「ギュイヨ」方式です。低い背丈で横に横に育てていくため、畑での作業効率も良いのがメリットですね。
それでは今回はこのへんで…次回はまた別の仕立て法をご紹介いたしますね。
今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました!
【今回紹介の用語「タイユ・ギュイヨ・サンプル」に関連したその他のコラム】
-
前の記事
ワインボキャブラ天国【第152回】「(ブドウ樹の)剪定、仕立て」 英:pruning 仏:taille 2022.12.04
-
次の記事
ワインボキャブラ天国【第154回】「タイユ・ゴブレ(ゴブレ仕立て)」 英: goblet pruning 仏: taille en gobelet 2022.12.18