ワインと食事の「マリアージュ」について、整理してみよう③『「中和」のマリアージュとは』
- 2020.05.29
- なるほどのあるワインコラム
- カベルネ・ソーヴィニヨン, ボルドー, マリアージュ, メルロ, レシピ, 肉料理, 赤ワイン, 香り
これまで、マリアージュという言葉の全体像を把握することからスタートし、
マリアージュには大きく分けて3つの方向性があるということ、
そのひとつめである最もシンプルなマリアージュ『同調のマリアージュ』についての説明をさせて戴きました。
そして今回はふたつめの扉を開けてみようと思います。
その扉に書いてある言葉は・・・・「『中和』のマリアージュ」です。
実はこれが、最も一般的に“マリアージュ”という言葉に対して持たれているイメージかもしれません。
例えば「脂身の多いお肉に渋い赤ワイン」という組み合わせがこれに当たります。
分厚い脂の部位も含んだ牛肉のステーキを食べる時に、
濃厚で渋みがしっかりとしたカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインを合わせる、
というケースが最も典型的な例でしょうか。
肉だけを単体で食べる時にはしつこく重く感じてしまう脂。
それにカベルネ主体の赤ワインが豊富に含むタンニンが重なるとき、
1.まず、お肉の方は、脂のしつこい重さがワインの渋みで覆われながら洗い流されて、
飲み込むときにはとても食べやすくなっている。
2.一方ワインは、がっしりとパワフルで厳しさを感じるような渋み(タンニン)分があっても、
お肉の脂味が溶けだした時の柔らかい甘さとコクによって覆われ、飲みやすくなる
このように、料理とワインそれぞれの“突出してしまっている味わい要素”が、
パートナーの持つ逆方向の要素によってカバーされてバランスが整う、というマリアージュ。
これを僕たちは「『中和』のマリアージュ」と呼んでいます。
どうでしょう、皆さんがいちばん最初に「マリアージュ」に対して持っていたイメージって、
これだったんじゃないでしょうか?
お肉料理に赤ワイン、という最も基本的なセオリーの前提となっているのがこの考え方、ということです。
ワインには無い脂身と、お肉には無い渋味が互いに手を繋いで中和しあう。
そのパートナーシップを成立させるための手法も、このマリアージュは比較的簡単です。
仮にお肉が既にあり、これからワインを自由に選べるとするならば、
その脂身が重ければ重いほど比例してタンニンのがっしりとしたタイプのワインを選べば良いでしょう。
逆に、ワインもお肉も既に決まってしまっていて、ワインは比較的軽めのメルロ主体のものだけ、
という時は、お肉の調理法を変化させて『中和』に近付けていきます。
例えば、以下の3つの方法が考えられます。
①少し酸味のあるソースをかける(ベリーソースやバルサミコソースなど
②焼き方を強めにして脂を落としていく(肉を縦にしてトングで持ち、脂の面を直接鉄板に押し付けるなど)
そして最も単純な手法としては、
③薄切りにして歯応えを軽くし、口の中に肉とワインが同時に滞留する時間を短縮する
というやり方もあります。
お肉が分厚いとどうしても長く噛むことになるので、軽めのワインだと先に味わいが流れ落ちてしまいます。
ですが、渋みが強く重めのワインの場合はタンニン分が長時間口の中に残るので、
噛み終える瞬間までしっかりと肉の味わいと中和できるということですね。
ワイン専門商社フィラディスの直販ショップ Firadis WINE CLUBで選んでいるワインとレシピでこれを体験して戴くとしたら、こちらのページを参考にしてみてください。
当店のボルドーの大定番『シャトー・ベルヴュー・ラ・ランデ』に、この地の代表的な郷土料理である骨付きラム肉のグリルという組み合わせ。
ラムの脂身と独特の香りが、カベルネ・ソーヴィニヨン由来の繊細ながら力強いタンニンと、メルロ由来の柔らかな果実味できれいに中和して、とても食べやすくなるマリアージュです。
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