あ、せかんどおぴにおん 第3回「ヴーヴ・オリヴィエ・エ・フィス セクレ・ド・カーヴ ブリュット」
目次
『あ、せかんどおぴにおん』第3回
「ヴーヴ・オリヴィエ・エ・フィス セクレ・ド・カーヴ ブリュット」
このコラムについて
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
3回目にとりあげるのは、当店イチオシのシャンパーニュ、ヴーヴ・オリヴィエ・エ・フィス セクレ・ド・カーヴ ブリュットです。
ロゴの右下には「レコルタン・マニピュラン」の文字。
レコルタン~とは何ぞやと思った方、ご安心を。後述します。
産地について
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区トレルー・シュル・マルヌで1922年に創業された。所有畑は18ha。
1922年の創業以来、伝統のシャンパーニュ造りを大切にするヴーヴ・オリヴィエ。エペルネから30kmほど西に離れたトレルー・シュール・マルヌ村の最良区画である粘土比率が高く石灰を含有した土壌の南向き斜面に畑を所有し、その入念に丁寧に手入れされた畑のブドウはあのボランジェが長年にわたって買い付けを行う程のクオリティだ。
まずは産地についてです。
こちらの地図で確認すると、「Tours-sur-Marne」と書いてあるところが、トレルー・シュル・マルヌです。ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区というのは、この地図でいうと真ん中の部分。シャンパーニュの主要地域は3つの地区に分かれていて、北から、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランです。そしてそれぞれ主要な品種が、ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネとなっています。ムニエはヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のブドウの7割を占めるそうです。
このトレルー・シュル・マルヌは霜が発生しやすいエリアのため、芽吹きが遅く、成熟が早いムニエが多く植えられています。特にヴーヴ・オリヴィエの所有する畑は川の右岸に位置し、川に面した南向き斜面に畑が広がっているため、ブドウが豊富な日照を浴びることができます。また土壌は粘土質で、重たい土壌です。これらの豊かな日照と重たい土壌が果実にふくよかさを与えます!
ちなみにムニエとはフランス語で「粉屋」を意味し、葉の裏側が粉をまぶしたように見えるので名付けられたそうです。かつては二等品種的な扱いでしたが、最近ではワインにボディとリッチさを与える品種として評価が高まっています。今回取り上げる「セクレ・ド・カーヴ ブリュット」はブレンドですが、半分以上の55%をムニエが占める品種構成です。
生産者について
近年フランスのワイン専門誌で注目を集めるRM。ギド・アシェットでは初掲載で星を獲得した
その入念に丁寧に手入れされた畑のブドウはあのボランジェが長年にわたって買い付けを行う程のクオリティだ。21世紀の今も木製のプレス機(コカールと呼ばれる、シャンパーニュ伝統のプレス機)を使用することにこだわり、ゆっくりと荷重を掛けてプレスをすることで純粋でクリアな果汁を絞り出す。まだまだフランス国内のシャンパーニュ愛好家にしか知られていない小規模生産者ではあるが、近年は専門誌などで注目を集め、その高いコストパフォーマンスは非常に高い評価を獲得している。THE CHAMPAGNEが太鼓判を押す、お買い得生産者だ。
まず冒頭に出てくるRMとは何か。これはレコルタン・マニピュランの略です。それに対して一般的に有名なシャンパーニュの生産者、例えばモエ・エ・シャンドンやボランジェなどの大手生産者はネゴシアン・マニピュラン(通常は略してネゴシアン)に分類されます。
この違いは原材料にあります。ネゴシアンは一部は自社畑栽培のブドウを使用している場合も多いですが、基本的にはブドウ栽培農家・小規模生産者からブドウ・ワインを買い付け、それを原料としてシャンパーニュ製造を行う生産者です。しかしレコルタン・マニピュランは自社畑で収穫したブドウのみでシャンパーニュを生産します。
このヴーヴ・オリヴィエのブドウは、あのボランジェが長年にわたって買い付けを行うということで、品質は折り紙付きです。そのブドウを使って、土地の特徴を知り尽くし、だからこそそのブドウの特徴を最もよく理解している生産者自身が、そのブドウのポテンシャルを最大限に発揮できる方法でシャンパーニュを製造することができるのです。非常に手間がかかり多くを生産することはできませんが、より1本を丁寧に造り上げます。有名生産者のように知名度も高くなく、大々的な広告を出す余裕もない。だからこそ良いワインを造る生産者をこちらから出向いて探す必要があります。フィラディスが探し出した、税込5,000円以下で販売できるものとしてトップクラスの品質のシャンパーニュ。。。
と、いうことになっているんですが、、実際はどうなのか??いよいよテイスティングです。
いよいよテイスティング
≪店長のテイスティングコメント≫
選018年春にシャンパーニュで開催された試飲会で発見、THE CHAMPAGNE店長が一発で気に入って買い付けを決めた1本です。こんなにおいしいシャンパーニュが4,000円台、また高級シャンパーニュが売れなくなってしまいますが・・・それでも推したい1本!
香りに感じるのは、洋ナシや桃のコンポートのような実に甘やかな印象。とても濃厚なフルーツ感が柔らかく優しく広がる中に、ジンジャービスケットやトーストのイメージ。味わいはあくまでも柔らか。完熟した果実の甘やかな印象に、決して尖りの無い控えめな酸が乗る感じ。だれもが「バランスが良く飲みやすくておいしい」と感じられる、実に純粋なシャンパーニュです。アフターには焼きアーモンドやコーヒー豆を挽いたばかりの香ばしい香りがほのかに漂ってきます。
リフレッシュするというよりは、リラックスするためのシャンパーニュ、という感じ。日曜の午後、夕食には少し早いかな・・・という時間帯から開けたいと思う味わいでした。キンキンではない程度に冷やして、少し大きめのグラスで飲んでみてください!
早速私もテイスティングです。
ある方がレビューで仰っている通り、確かに店長のコメントは美辞麗句、というか表現が巧みなせいで逆に本当かと疑ってしまいそうなほどかもしれません。しかしご安心を。私は芸がないので稚拙な表現で思ったままを綴ってみます。
以前に飲んだ時も感じた印象ですが、全体的な印象としてこのシャンパーニュはやはり「深みが魅力のシャンパーニュ」だと思いました。フィラディスでは試飲をする機会が多く、偉そうにシャンパーニュも様々飲む機会がありますが、この価格帯でこの深みは別格だと感じています。
まずは香りから。りんご、梨、桃、オレンジピールのような香りなどフルーティーな香り。そしてそれを包むようにシャンパーニュらしいクリーミーな、クッキーのような安心感のある香りが強く広がっていきます。香ばしいゴマのような香りも感じます。
そして口に含むと、まずは香りの印象通りの明るい果実の味わいがあり、その後からじわじわと沁みる深みが残っていきます。果実の厚みというより熟成の厚みというのでしょうか。これがワインの中心でどっしりと構えています。その深みをじっくりと堪能した後、最後はほろ苦さが残り、喉を細かい泡が通り抜け、すっきりと気持ち良さを感じました。
キリッとドライな中にたっぷりと深みを感じるシャンパーニュ。この深みはとても癖になります。
このシャンパーニュ、実は熟成期間が60ヶ月以上、ということでノン・ヴィンテージの法定熟成期間の15ヶ月を優に、というかミレジメ(つまりヴィンテージのあるシャンパーニュ)の36ヶ月も優に超える熟成期間なのです。これが深みの由来なのではないかと思います。
お前はそれを知っていて、その先入観から熟成の深みを強く感じただけではないのか?と思われるかもしれません。しかし私は、これには幾分自信があります。フィラディスワインクラブのシャンパーニュとしては最低ラインの4,000円台で買えるこのセクレ・ド・カーヴを、皆さんもぜひお試しください。
そしてぜひ、レビューに皆様のご意見もお寄せいただければと思います。
商品ページには醸造家のインタビューも載っております。
さらに例によって、、
西岡パパはペアリング料理に何を選んだのか。こちらも是非。ちなみに醸造家はインタビューで、「色々な茸を使ったリゾットの組み合わせが最高!ポルチーニやモリーユが特にお気に入りなの。」と答えています。
以上、Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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