あ、せかんどおぴにおん 第33回「モンテカルヴィ キャンティ・クラッシコ」
『あ、せかんどおぴにおん』第33回
「モンテカルヴィ キャンティ・クラッシコ」
目次
このコラムについて(ここは毎回同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、20代のFiradis WINE CLUBのスタッフ、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
33回目にとりあげるのは、非常にお得なイタリアワイン。「モンテカルヴィ キャンティ・クラッシコ」です。
キャンティって何?
「キャンティ」地域はまさに玉石混淆。産地ブランドに胡坐をかき、ふさわしくない品質の低いワインも数多く存在するイタリアで選定が最も難しいエリアのひとつです。そんな地域だからこそ長い時間を費やして選んだフィラディスの最終回答がここに。絶対に一度はお試し戴きたい、自信の『キャンティ・クラッシコ』です!!
今回取り上げるワインの商品説明にはこんな風に書いてあります。自信の『キャンティ・クラッシコ』と書いてありますが、そもそもキャンティとは何でしょうか。(クラッシコってなんだよと思った方もいると思いますが、そちらについては後ほど説明いたします。)
実はフィラディスワインクラブにはこんなページがありまして、この4つの銘酒のひとつにキャンティが含まれています。キャンティとは、イタリアワインの銘酒の一つなのです。
キャンティもブルネッロと同じくトスカーナ州の銘酒です。
元々は14世紀から存在するようで、現在のサンジョヴェーゼ主体のスタイルになったのは18世紀ごろだといわれています。
親しみやすい味わいが特長。チェーン展開するカジュアルイタリアンやスーパーの店頭にも必ず置かれていて、ワインに全く興味が無い方でも一度は名前を聞いた事がある、とてもポピュラーな銘柄です。
このページに飢えのように記載されている通り、キャンティはサンジョヴェーゼという品種を用いた、非常に歴史のある非常にポピュラーな銘酒です。フィレンツェで有名なイタリア中部のトスカーナ州。そのフィレンツェとシエナの間に横たわる丘陵地帯をキャンティと呼び、古くからこの場所で造られたワインはキャンティ酒と呼ばれていました。
余談ですが、あのコロンブスが15世紀に産まれたのもこのキャンティ地方ですし、16世紀の初めに隠遁生活をしていたマキアヴェリが『君主論』を書いたのも、このキャンティ地方の山荘でした。なんとマキアヴェリの父親の記録に、商店の支払いにキャンティのワインを代金として使ったという記載があるそうです。
そして、当時からこの地域のワインは質が高かったという記録がちゃんと残っています。
しかし時代が下るごとに、本来のキャンティ地方以外のブドウを使うようになり、粗悪品も増えていきました。なんと、キャンティといえば安酒というイメージが付きまとうようになっていってしまうのです。。
キャンティの質
さて、
自信の『キャンティ・クラッシコ』です!!
と商品説明に書いてありましたが、では『キャンティ・クラッシコ』とは何なのでしょうか。
クラッシコとはつまりクラシックということ。実はキャンティの中でも差別化を図り、特定のより優れた地域で造られるキャンティを『キャンティ・クラッシコ』と呼ぶようになりました。
なんていう風な努力もしているのですが、依然として粗悪品は多いのが現状です。(ちなみに、キャンティという名称のイメージ低下を受けて一部のトスカーナの生産者たちがキャンティに見切りをつけ、外来種のカベルネ・ソーヴィニヨンなどを使ってボルドー風なワインを造るようになりました。これが「スーパー・タスカン(スーパー・トスカーナ)」と呼ばれるブームにもつながっていきます。)
しかし古くから優れた産地であり、確実にポテンシャルはあります。あとは良い生産者を見つけられるかどうかです。そこでフィラディスがたどり着いたのはモンテカルヴィという生産者でした。
有機農法で丁寧に育てた樹齢85年以上のブドウ樹1本から750mlボトル1本分しか造らないという徹底的な収穫制限により実現した凝縮感と複雑性。そして巷にはびこるヤワなキャンティが決して持っていない野性味に溢れる作品です。
優れたキャンティとなるとどうしても価格が上がってしまうのですが、このモンテカルヴィのキャンティは3,000円。実は「フィラディスワインクラブ30」という3,000円以下のワインページに載せるために、ちょっと無理して3,000円に抑えている節もあります。。ぜひ皆さんにも、キャンティという産地のポテンシャルをこのワインで体感していただきたいです。
サンジョヴェーゼという品種
最後にキャンティの条件でもある、主体となるサンジョヴェーゼという品種について。
サンジョヴェーゼは非常に栽培が難しい品種です。晩熟品種のため、気候に恵まれた暑い年には非常に濃厚・パワフルでアルコール度数の高いワインになる一方で、 雨が多く冷涼な年は酸・タンニンばかりが強調されたバランスの悪い出来になってしまいます。また、区画あたりの植樹本数・1本のブドウ樹から収穫する房数によっても、ワインの凝縮度や果実の密度に大きな差が生まれやすい品種でもあります。
だからこそ、「非常に当たりハズレの多い品種」でもあるのです。
そして繰り返すようですが、モンテカルヴィは自信を持ってお薦めできる”アタリ”のキャンティ。
では一体どんな味わいなのか。いよいよテイスティングです。
テイスティング
≪こんな香り・味わいのワインです≫:
実に上品に、綺麗に、美しくまとまったキャンティ・クラッシコ。純度が高い…というとちょっと語弊がありますが、果実感のまっすぐな透徹感が全体を強く印象付けます。
サクランボや苺、ラズベリーの甘い香りに始まり、大樽熟成によるごくごく軽いクリーム感。スパイスや動物的薫りなどのクセは一切なく、収穫から数年たった今もフルーツのピュア感は少しも損なわれずに綺麗なまま。ソフトなタッチで始まる味わいは果実のフレッシュな酸味と甘みがしなやかに、伸びやかに広がるスタイル。後半にほんの僅かに残る樽熟のビター感、重過ぎず不足も無い適度なタンニンがワインの奥行きと深さをしっかり演出していました。やはりこの生産者は腕利きですね、一切のブレやズレがありません。
店長のコメントはこんな感じです。
私が感じた印象は、きれいなタンニンのしっかりとしたワイン、だということです。
赤いチェリーやプラムといった果実の香り。店長が書いているように非常にピュアな果実感です。そして、ハーブのニュアンス、なめし革やマッシュルームの要素も感じ取れました。
味わいはなめらかで綺麗な果実感と、しっかりとしたタンニン。タンニンの量はしっかりと感じるんですが、あくまでソフトな果実が凝縮して存在しているので、バランスが良く撮れています。果実のフレッシュな酸味もあります。
果実のうまみはしっかりありながらも、決して甘い!という感じではありません。このちょうどいいタンニンとのバランスと凝縮感が、お肉料理との相性を抜群にします。肉汁が多いほどいい、という感じですね。。トスカーナのティーボーンステーキが食べたくなります。
西岡パパはハンバーグと合わせていました。
皆さんはどう感じるでしょうか。ぜひレビューをお待ちしております。
キャンティという名前にあまり印象を持っていない方でも、こちらはぜひ試していただきたいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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