ワインと食事の「マリアージュ」について、整理してみよう④『「テクスチャー」のマリアージュとは』
これまで3回に渡って続けてきた「マリアージュ」の解剖。
マリアージュには3つのセオリーがあるとした上で、
①ワインと食材が共通して持つ要素を合わせる『同調のマリアージュ』
②お互いの突出した部分を和らげ合う『中和のマリアージュ』
ときて今回が最後の一つ・・の予定だったのですが、一つだけ、大切なことに触れるのを忘れていました。
それについてお話した後で、次回3つ目のマリアージュについてお伝えします。
(突然出てきた天ぷらも、今回のお話に関係があるのです!)
今回付け加えたいのは『テクスチュアのマリアージュ』です。
但し、これは新たな4つ目のマリアージュでは無い、と考えておいて下さい。
あくまでも、3つのマリアージュを生むための前提条件のようなもの。
この前提が成立していないと、3つの扉の前にさえ辿り着くことが出来ないかもしれないのです・・・!
『テクスチュアのマリアージュ』とは???
では始めましょう。
「テクスチュア」はワインのテイスティングでも時々出てくる用語ですが、
最も分かりやすく日本語に訳すなら「食感」という言葉がしっくりくるかと思います。
料理・食材にはかならず「食感」があるように、ワインにも「食感」があります。
「口当たり」という言葉もありますが、これはどちらかというと口に含んだ瞬間のタッチを表現するイメージ。
ニュアンス的にはやはり口の中でワインを転がした時に感じる「食感」のほうが近いでしょう。
この『テクスチュアのマリアージュ』は、
料理・食材の食感と、ワインの食感を合致させるというだけのことです。
最も簡単に言うならば、
まろやかな食材にはまろやかなワインを、噛みごたえのある料理には骨太なワインを、
冷たくシャキッとした料理には良く冷えたワインを・・・
というような、「風味(フレーヴァー)」以外の要素のマリアージュです。
具体的な例を出しましょう。
“Crispy(クリスピー)“という表現があるのをご存じでしょうか。
和訳が非常に難しい言葉なのですが、
日本語にしか無い「擬音的な食感」を英語で伝えるために結構便利なボキャブラリーではあります。
「パリパリ」「サクサク」「カリカリ」「シャキシャキ」等の擬音表現は、
英語に直すと大体“Crispy“で事足りるのではないかと思います。
では、例えば「カリカリに揚げたてのCrispyな海老の天ぷら」には、
どんなワインが合うのでしょうか。
ここで「甲殻類を油で揚げたこってり系料理だからやっぱりシャルドネかな」
と、フルーツ感たっぷりの濃厚な南エリアのものなどを選んでしまうと、食感の不一致が起こります。
衣のカリカリ感に、こってり・もったりした濃厚なワインが合わさると、
せっかくの”Crispy感”が打ち消されてしまうからです。
では、ここでどんなワインを持ってくるべきなのか??
この時に前提となるのが『テクスチュアのマリアージュ』。
つまり、ここで合わせるべきは同様の食感を持つ「Crispyなワイン」ということです。
料理の食感とワインを合わせる、とは??
Crispyという言葉はワインテイスティングでも頻繁に使われる言葉で、
僕たち日本人には結構ニュアンスが理解しにくいのですが・・・
「シャキッと整った、ミネラル感のあるワイン」的なイメージです。
白ワインだったら、ロワール地方のソーヴィニヨン・ブランやアルザスのリースリング、
北イタリアのピノ・グリージョなどもこの系列に入るでしょうか。
これらのワインを用意すると、料理・ワインのテクスチュアの方向性がまず合致し、
その後で「香り・味わいのマリアージュ」にチャレンジ。
やっと、『同調』や『中和』そしてもう一つのマリアージュを検討できる段階に入るわけですね!
難しそうにも思えますが、実はテクスチュアのマリアージュはとてもシンプル。
まずは主に、料理や食材の柔らかい・硬い、に着目してみてください。
基本的には、柔らかめの料理には温かい地域でできた濃厚なスタイルのワインを、
歯応えのある料理には、ミネラル感のある冷涼地域の白や渋みのあるがっしり系赤、というイメージです。
例として、テクスチュアのマリアージュを分かりやすく実感できるワインを、ワイン専門商社フィラディスの直販ショップ Firadis WINE CLUBより2つ選んでみます。
実際にマリアージュをお試し頂くと、その食感のシンクロに気付いて戴けるのでは思いますよ!
①シャキッとした料理に、きりっと整ったミネラル豊かなワインを合わせるテクスチュアのマリアージュ
サーモンとオレンジ、セロリのサラダに『ドメーヌ・ド・テール・ブランシュ アルシミー』
②柔らか~く煮込んだ料理に、まろやか柔らか系赤ワインを合わせるテクスチュアのマリアージュ
豚肉のトマト煮に、南フランスの『ドメーヌ・デュ・ジョンシエ リラック・ル・グルマン』
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