ワイン職人に聞く、10の質問【第66回】ダットン・ゴールドフィールド (USA・カリフォルニア州)
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第66回
ダットン・ゴールドフィールド (USA・カリフォルニア州)
オーナー・醸造家 ダン・ゴールドフィールドさん
今回話を聞いた生産者はUSAカリフォルニアの『ダットン・ゴールドフィールド』のオーナー兼醸造家、ダン・ゴールドフィールドさん。
『ダットン』は、あの『スタッグス・リープ』や『オー・ボン・クリマ』等、名だたる米国の生産者に先立つ程の高い評価で「カリフォルニアで最も偉大な生産者の一人」と称賛されるほど。
カリフォルニアのワイン産地の中でも、冷涼な気候できれいな酸を育むロシアン・リヴァー・ヴァレー。
この産地にいち早く目を付け開拓したのが『ダットン』でした。
栽培しているシャルドネ、ピノ・ノワールとも、ブルゴーニュのクラシック・スタイルを目指しつつもカリフォルニアならではの柔らかな果実味とボリューム感が共存する味わい。
米国内だけでなく欧州のワイン専門家からも高い評価を受ける、確かな実力のワインです。
カリフォルニアワイン好きの方は勿論ですが、ブルゴーニュワインを心から愛する方々に是非とも知って戴きたい生産者ですよ。
それでは生産者の哲学に迫る一問一答インタヴュー、始まりです!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒ワインを好きになったのは、大学にいた10代後半の頃だ。
最初に感銘を受けたのは、ブルゴーニュとバローロだったかな。
その同じ頃、私は山登りが大好きになってね・・・山登りとワインには多くの共通点があると思うんだ。
地形・地理、土地の文化に対する敬意、そして探求・探検と学ぶことの楽しみ。
心の中の同じところに響く感じなんだ。
大学を卒業後も化学の勉強とアウトドアの両方を続けていて、バークレーでの化学フェローシップを通じてカリフォルニアに移り住み、そこから数多くのワイナリーを訪れる機会があった。
ワインメーカーが1年間の季節サイクルの中で取り組む様々なプロセスの技術的複雑性、そして論理性と知的探求心に満ちた仕事に大いに惹かれたよ。
ワイン造りは状況が絶え間なく変化し、しばしば予期しないことが起きることも私にはとても魅力的でエキサイティングに思えた。
私はワインメーカーになることを決意し、ワイン醸造学の大学院に戻ったんだ・・・1984年、遥か昔のことだよ 笑
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒最も嬉しく幸せな瞬間は、その年に幸運にも手にすることができたワインを人々と共有するとき。
その瞬間にその年に自分自身がやってきたこと、感じたことのすべてが蘇ってくるからね。
私はごく最近、親友と一緒にシャルドネ・ウォーカーヒル・ヴィンヤード2017年のボトルを開けたのだが、彼がこのワインを探究心いっぱいに楽しんでくれているのを見るのは私にとって最上の喜びだった。
古木から生まれたこの土地の宝物のようなワインを、心から慈しんでくれているのが伝わってきたからね。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒それは間違いなく、今年2020年に発生した山火事だ。
この1年間畑で努力し続けてきたにも関わらず、煙にやられてしまったブドウを見るのは本当に心が痛んだ。
ワイン造りをすることができるなら、造りの工程の中でたとえうまくいかないことがあってもそれは不幸や苦痛ではなく「挑戦」なんだ。
何もできない、というのが一番辛いよね。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒すべての工程においてじっくり考え、慎重に判断して行動に移すことだ。
全ての変化に注意を払い、常に自分自身に疑問を投げかけ、他の人の意見には謙虚に耳を傾ける・・・一度行ったことは、もう取り返しがつかないからね。
ものづくりでは「自分はやることが全て分かっている」なんて思うようになってしまったらやめ時だと思うよ。
たとえ物事がゆっくりとしか変化しない世界、学び続け、疑問を持ち続けることが一番大切なんだ。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒私の理想のワインは、その個性・キャラクターが何に由来するのかが良く見え、ワイン造りに手を携えてきた人々の姿を想起させるワインだ。
つまり・・・分析をせずとも、ただ感じれば良いワインということ。
優れた職人の技は、造りのプロセスを説明しなくとも、ワイン自体にすべてを語らせる。
私のワインだと、やはりウォーカー・ヴィンヤードやルード・ヴィンヤードのシャルドネはそのレベルに近づいてきているように思える。
本当に優れた職人は、世間の期待ではなく、自分のビジョンだけに従ってワインを造る。
自分の好みとは合わなくても、間違いなく素晴らしいと思えるワインは沢山あるだろう?
つまり、そういうことなんだ。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒「最高の1本」は選べないけど・・・
私の人生で最も魅力的で記憶に残っているワインの1つは、1977年に兄弟と一緒に飲んだ1969年のDRCリシュブール。
当時は今と比べ物にならないくらい凄く安かったんだよ 笑
最近だと、ピオ・チェーザレのオルナート バローロ1999年には大きく影響を受けたね。
そしてブルゴーニュのジャン・ノエル・ガニャール・・・私にとってワイン造りのお手本のような造り手だ。
彼のバタール・モンラッシェは独自のスタイル、繊細さ、そして力を併せ持っている。
私は、素晴らしいシャルドネが本当に大好きなんだ!
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒色々な組み合わせを提案したいけど・・・シャルドネにはやはり貝類の料理かな。
そして日本だったらやっぱり寿司、ピノとシャルドネどちらも良く合うと思う。
特にシャルドネの酸味と、締めサバやウニの寿司は相性抜群!!
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒今一番興味があるのは、オーストリアだね!
あの美しい土地で、グリューナー・フェルトリーナーの陽性なスタイルのワインを造ってみたいよ。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒常に細部に注意を払い続け、努力を怠らないこと。それだけだ!
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒それぞれの産地、ひとりひとりの造り手には独自のスタイルや哲学がある。
専門誌や他人の評価ではなく、自分自身の感覚に素直に耳を傾け、ワインを感じて欲しい!
そして最後にもう一つだけ言わせてほしい、私は素晴らしい日本のウイスキーが大好きなんだ。
日本のウイスキーを知らない人は、本当に損していると思うよ!!
・・・ダン・ゴールドフィルドさんへの一問一答インタヴューは、以上です。
今回のインタヴューは如何でしたか??
それにしてもよく語ってくれました!!
(もしかするとこのコラムシリーズで最も単語数が多かったかもしれません。)
ですが、彼はどれだけの言葉を連ねたとしても、グラス一杯のワインの方が多くを語ってくれる-彼の言葉で言うならば「感じさせてくれる」、ということを強く思っています。
インタヴューを読んで『ダットン・ゴールドフィールド』に興味を持っていただけたのなら、是非彼の作品を実際に体験してみてください。
そしてワインを飲んだ後・・・いや飲みながら造り手の言葉を読んだら、そのワインのことをもっと近くに感じることが出来るはずです!
『ダットン・ゴールドフィールド ピノ・ノワール・ダットン・ランチ』
『ダットン・ゴールドフィールド シャルドネ・ダットン・ランチ』
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