あ、せかんどおぴにおん 第13回「エティエンヌ・ルフェーヴル ブラン・ド・ノワール グラン・クリュN.V.」
『あ、せかんどおぴにおん』第13回
「エティエンヌ・ルフェーヴル ブラン・ド・ノワール グラン・クリュN.V.」
目次
このコラムについて(ここは毎回同じことが書いてあります。)
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
13回目にとりあげるのは、「エティエンヌ・ルフェーヴル ブラン・ド・ノワール グラン・クリュN.V.」です。
シャンパーニュの畑でブドウ畑を眺めながら楽しむ。なんという贅沢でしょうか笑
店長絶賛のブラン・ド・ノワール
Firadis WINE CLUBのメールマガジンを読んで下さっている方は僕がこのシャンパーニュを推薦しまくっているのを嫌というほど見ているかもしれませんが、そのくらい個人的にはお気に入りの1本です。
店長は商品コメントにこのように書いております。それほどまでのシャンパーニュとはいったいどのようなものか。あるいは誇張に過ぎないのか。しっかりと探っていきましょう。今回もあくまで前提から確認しつつ、それを踏まえた上でテイスティングしていきます。
まず大前提としてこのワインはシャンパーニュです。そりゃそうですね。そしてその中でも「ブラン・ド・ノワール」という種類のシャンパーニュです。それではブラン・ド・ノワールとは何でしょうか。
ブラン・ド・ノワールとは黒ブドウ100%でつくられるシャンパーニュのことです。ブラン・ド・ノワール=「黒の白」。黒ブドウでも果皮を漬け込まずに絞った白い果汁だけでワインを仕込めば、白いシャンパーニュができます。だから黒の白。ただし、果汁を絞るときに黒い果皮から流れ出る色素がワインに色を付けるため、あくまで色合いはピンクやオレンジ色のような印象になることが多いです。
そしてこのブラン・ド・ノワールは黒ぶどうの中でも、ピノ・ノワール100%でできています。シャンパーニュの主な品種はピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエ。この3つだけで9割9分ほどを占めますが、その他にもピノ・グリ、ピノ・ブラン、プティ・メリエ、アルバンヌといった品種が使用されます。
それを踏まえたうえで、ピノ・ノワール100%でできているということがポイントです。
ブレンド
ではピノ・ノワール100%がどうしてポイントなのか。これはフィラディスのシャンパーニュ選びのポイントにも繋がってきます。
実はシャンパーニュの多くは単一品種ではなく、ブレンドで造られるということです。
一般的に有名なシャンパーニュ、特に大手メゾン(モエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、テタンジェなど)のものは一部の上級キュヴェを除いてほとんどがブレンドです。しかもブレンドというのは品種のブレンドというだけでなく、栽培される村、あるいはヴィンテージまでも(だからシャンパーニュはノンヴィンテージが多いです。)ブレンドしてシャンパーニュを造っています。
シャンパーニュは北緯49度くらい、だいたい樺太くらいの緯度であり、非常に冷涼です。このくらいの緯度が、いわゆるブドウの栽培ができる北限といわれています。(温暖化で状況はまた変わってきていますが。)そのため、ブドウ栽培には過酷な環境なのです。だから年によって品質が安定しなかったり、栽培量も大きく変動します。
それを解消するシステムがブレンドです。様々な場所、ヴィンテージ、品種を用いてシャンパーニュの品質を安定させるのです。大手メゾンはブレンドの技術で勝負しています。毎年条件が異なる中で、どのブドウをどれだけ使えば、そのブランドを担うだけのシャンパーニュを完成させられるか。徹底的に追求します。その技術は驚異的です。栽培家は大手メゾンのブレンド技術を信頼し、しかも安定して自身のブドウを買い取ってお金に変えてくれるので、とても助かるし、安心するというわけです。
ただしこれには問題もあります。つまり多くのシャンパーニュにはテロワール=土地の特徴という概念が抜けて落ちてしまう側面があるのです。
ヴェルズネイ村
日々レストランや当店でシャンパーニュを選ぶ際にも、この地理関係や各村の特徴が分かっていさえすれば、「その時最も選ぶべきシャンパーニュ」を正しく選択する羅針盤となります。
さて話はなぜピノ・ノワール100%がポイントなのかということでしたね。そして多くのシャンパーニュはテロワールの概念が抜け落ちていて、それを重視するのがフィラディスだと申し上げました。
今回のシャンパーニュ。一部は生産者の本拠地があるヴェルジー村のブドウを使用していますが、ほとんどが隣のヴェルズネイ村のブドウを使用しています。
このどちらの村も優れたブドウが育つ、シャンパーニュのグラン・クリュです。そしてどちらも優れたピノ・ノワールが栽培される北部のモンターニュ・ド・ランス地方に位置しています。さらにこのヴェルズネイ村はシャンパーニュにおける「ピノ・ノワール最高産地」の一つなのです。(詳しくはこちらのページをご参照ください。)
つまりテロワールにこだわるフィラディスが選んだこのシャンパーニュは、シャンパーニュの中でも随一のピノ・ノワールを生み出す産地のピノを100%使用したブラン・ド・ノワールだということになります。そりゃあ美味しいだろう、ということです。
ちなみに大手メゾンではグラン・クリュのブドウ、しかもこのヴェルズネイのような特に品質の高い産地のブドウは、上級のキュヴェにしか使用されていません。そして当然ブランド力の高さを維持する宣伝費などもワインの価格に反映されるということもあり、価格はどうしても高くなってしまいます。一般的な知名度は低いながらも、それよりも手頃な価格で楽しめ、しかも純粋なテロワールを堪能できるシャンパーニュを楽しんでもらう。これがフィラディスのやり口です笑。
エティエンヌ・ルフェーヴル
小規模生産者の苦悩は世界共通、そのスピリットを後継者に正しく伝えられるか否か、だ。ヴェルズネイで50年に渡ってシャンパーニュ造りを続けてきたルフェーヴル家も同様、先代が退く際には廃業の際に。家族全員がシャンパーニュ醸造から手を引き、ブドウをメゾンに売却して生計を立てようとした時にひとり反発したのが現当主のエティエンヌだ。安易なメゾンへのブドウ売却を一切拒否、兄弟とも別れ一人険しい道を選んだ気骨ある男は、ヴェルズネイの自然とテロワールを尊重したリュット・レゾネによるワイン造りを始めた。彼の造るワインは、素晴らしい熟度を感じさせる豊かさを持ちつつも、厳粛で繊細なストラクチャーが根底に感じられる。困難に一人立ち向かった男が作るシャンパーニュとして、これほど「らしい」ものはない。
例によって前段が長くなってしまいましたが、最後に生産者のことも押さえておきましょう。カッコよく「困難に一人立ち向かった男」なんて書いてありますね。このエティエンヌ・ルフェーヴルはいわゆるRM(レコルタン・マニピュラン)という自社の畑のブドウを使ってシャンパーニュを造る生産者です。そして前述の通りヴェルジー村に本拠地を構えながらも、ヴェルズネイ村にたくさんの畑を持っています。
つまり大手メゾンが喜ぶいいブドウをいっぱい持ってるし、どうしても自身でシャンパーニュを造るのは手間もかかるしリスクも高い。こういった自身のブドウを用いるシャンパーニュの生産者は、常に大手メゾンに売ったほうがいいのではないかという誘惑にさらされます。しかしこの生産者は断固として拒否し、自身でのシャンパーニュ造りを貫いたということですね。その頑固さによって、現在でも皆様に優れた土地のブドウのみを使用し、一番そのブドウに詳しい生産者自身で仕上げたシャンパーニュを、皆様に提供できています。
いよいよテイスティング
≪店長のテイスティングコメント≫
一言で表現するならば、シャンパーニュにフローズンミックスベリーを溶かし込んだようなイメージでしょうか。白シャンパーニュなのに、味わいはオレンジやベリー系フルーツなど明るい色の印象が強く感じられるはず。プレス時にブドウ果皮から抽出された微かな味わいがこれほどの存在感を示してくるとは、果実そのものに力があることの証明ですね。
きめ細やかな泡がたっぷりのフルーツ感と共に口の中に広がっていく実に贅沢なファーストタッチ。ここは素直にシャンパーニュに心も身体も任せてしまい、どっぷりと浸っちゃいましょう。ベリー系果実の瑞々しい印象にオレンジやアプリコットの甘酸っぱさ・・・全体的に柔らかな丸みを感じるのですが、それが過剰に膨張しないよう繊細な酸が輪郭をきれいに整えています。抜栓したてから果実の甘味・広がりとも十分ですが、時間を経ると甘さが蜜っぽく濃密に。僕は敢えてガスが弱まるまで待つこともあります。安定感と落ち着きが出て、より「浸れる感」が出るんですよね。やっぱりおいしい、僕の最高のお気に入りです。ガスが抜けてもおいしい1本、是非しっかり味付けのお料理と一緒に!
さていよいよテイスティング。店長は上記のように書いています。
私はこのワインを一言で表すならば、ストレートの重厚感だと思います。100%ジュースにもストレートと濃縮還元がありますよね。そのストレートのイメージです。
外観はきれいな桜色。この時点で味わいの厚みを想起させます。そして香りはオレンジ、赤系のベリー。通常のピノの赤ワインほどは強くないですが、それでもしっかりとベリーの香りを感じます。そしてふっくらとしたトースト香もしっかりとあります。
そして肝心の味わいです。これが重厚感たっぷりなのです。すっきりとした酸とストレートな果実感=たっぷりとした旨味。そしてほのかなタンニンがしっかりと果実の厚みを支え、さらに味わいを力強く形作ります。このタンニンの要素は二つが合わさる味わいの立体感としての魅力でもあり、またタンニンが感じられることによってコントラストとして果実の甘みの要素が際立つ魅力でもあります。最後はあくまですっきりと、そして時間をかけて味わいがゆっくりと口の中から消えていく。とても余韻が長く、果実とタンニンが両方ともバランスよく口に残ります。この余韻の長さは、まさに色合いの印象のような、桜の花びらがひらひらと風の抵抗を受けながら落ちていくイメージです。うまいこといっているようで、あんまりうまくないですね。。
とにもかくにも見事な満足感。まさにピノの品質の高さを感じるシャンパーニュだと思いました。
店長がしっかりとした味付けの料理とといっていたり、タイ料理の『カオ・マン・ガイ』とマリアージュさせた西岡パパもある程度ボリューム感のあるものを合わせるのが良いといっています。西岡パパは逆にあまりにガッツリした料理だとシャンパーニュが負けてしまうとも言っていますが、これだけしっかりと飲みごたえがあるのでそこはそんなに気にせず、このシャンパーニュはまるでロゼのような、かなり幅広くいろんな料理に合わせやすいと私は思います。ぜひいろいろな料理と合わせてみてください。
ちなみにここだけの話、、このシャンパーニュは非常に人気でなおかつ次の入荷まで時間が空いてしまうため、この先一旦完売となってしまうことが予想されます。ぜひこの機会に早めにお買い求めください。
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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