ワインペアリング奮闘記 第82回 シャトー・ル・メイニュー オー・メドック・クリュ・ブルジョワ 2006年×牡蠣
- 2021.01.22
- ワインペアリング奮闘記
- ペアリング
テイスティング:
色調は中央にかけて深みのあるガーネット。エッジはやや明るく、熟成を感じさせます。
ワイングラスを近づけてみると、おお。なかなか香り高いですね。赤から黒までの熟したミックスベリー。ドライフルーツ。チェリーのリキュール。茶系のスパイス。早朝の森を散歩している時のような、しめったふかふかとした土や、針葉樹のような清涼感のある香りも取れます。
口に含んでみると、アタックは中程度。ボディも中程度。果実の熟度を感じます。酸味は角が取れて穏やかですね。
中盤からじんわりとした旨味。ミネラルの下支えもあって、アフターにはタバコのような上品な苦味が感じられました。
全体と年月による柔らかさが出てきているものの、骨格と芯が感じられ、熟成ワインとしての飲み頃だと思います。甘味と酸のバランスも良く、飲みやすくて美味しいです!
熟成したボルドー赤ワインがお好きなら、この一本はおすすめです。
合わせる料理:
前々回、同じボルド・オー・メドックの2006年のシャトー・ベルトラン・ブラネイルを取り上げたばかりですね。
熟成由来の柔らかなテクスチャに合わせて、和牛薄切りとキノコのオイスター炒めにしました。
ここでまた肉じゃ、コラムとして芸がない・・・何とか変わり種を考えたいところです。(笑)
ではいっそのこと、オイスター、つまり「牡蠣」をメインに据えてみるのはどうでしょうか?
少々リスキーな感もありますが、実はボルドーは牡蠣の名産地。現地では赤ワインを合わせることも珍しくないと聞きます。ここは挑戦してみましょう!
調理法ですが、いきなり生牡蠣を合わせる勇気はないので熱を通します。
味付けは、熟成ワインとの相性良しとこのコラムでも実証済みの味噌で行きましょう。
という訳で今回は『牡蠣の味噌鍋』に決定です!
レシピ:
お鍋に昆布出しを引いて味噌とコチュジャン少々を溶き、厚揚げ、豚バラ肉、キノコを軽く煮ます。
牡蠣は片栗粉で下処理したものを3分程茹でました。
グリルして焼き目をつけた長葱、セリをトッピングして出来上がりです。
ペアリングレポート:
実食です。牡蠣鍋はコクがあって文句なく美味しいです。
さて問題は赤ワインを飲み合わせて、どうか?
・・・結論から言って、問題ありません!私がちょっとビビりすぎていましたかね。
牡蠣の臭みが赤ワインによって引き立てられてしまうこともなく、ちょっと意外な組み合わせを楽しむことができました。
特に良かった点は、味噌ベースに加えて厚揚げ、そして豚肉を加えた事です。
染み出した油が牡蠣をコーティングしてくれる事で生臭さが抑えられ、マイルドさやクリーミーに感じられました。
その上で、牡蠣本来の旨味やミネラル感が、ワインとも意外な相性の良さを見せてくれました。
牡蠣の箸休め的に豚バラ肉を楽しむことが出来るのも、赤ワインとのペアリング上ポジティブでした。
・・・と、ここまで思ったよりイケるという喜びを書き連ねてきましたが、ではマリアージュと呼べるほど素晴らしかったのか?と問われると「そこまでは??」です。
牡蠣の持つ強い磯の風味、そして味噌鍋のどっしりとした重心は、熟成によって丸みを帯びたこの赤ワインを凌駕してしまいます。ペアリング的には、まだクリアしなければならない課題がある印象でした。
同じボルドー赤でも、もう少し果実味が凝縮していて味わいの重心が低い、例えばもう少しヴィンテージの若いサンテミリオン等の方が合うかもしれないなと思いました。
赤ワインと牡蠣、奥が深い・・・!
如何でしたか?
課題が残ったものの、今回は楽しい実験になりました。
100%完璧なペアリングはありませんし、家飲みでは「もう少しこんなワインだったら、合うかも?」と次につながる考えを導き出すことができれば、十分ではないかなと思います。皆さんも是非、意外な組み合わせのペアリングにも挑戦してみてくださいね。そして感想を教えて下さい。それでは、次回もお楽しみに!
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