ワインボキャブラ天国【第88回】「トリュフ」英:truffle 仏:truffe
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「トリュフ」
英:truffle
仏:truffe (女性名詞 発音は「トゥリュッフ」)
今回ご紹介するワイン表現ボキャブラリーは『トリュフ』です。
ワインでこの表現が使用される場合、基本的には「黒トリュフ」のイメージを意味しています。
ということで今回もトリュフマメ知識、いってみましょうか!
トリュフがキノコの1種だと、ということは皆さんもご存じだと思います。ただ、この種に分類されるのは何と100種類以上もあるとか・・・ですので、地中に埋まっていた丸いキノコなら何でも芳しい良い香りがする、という訳でも無いようですね。トリュフは紀元前16世紀ごろの文献には既に記録があり、なんとピタゴラスが健康への効能を説いたこともあるそうですよ。
トリュフの産地はフランス、スペイン、イタリア と一部東欧諸国でほぼ生産量の全てを占める模様。大規模かつ高品質なトリュフの産地として知られるのがフランス南東部のペリゴール地方、「ブラック・ダイヤモンド」とも呼ばれています。そしてかのブリア=サヴァランが『美味礼讃』の中でトリュフを「台所のダイヤモンド」と表現したことも受け、美食の代表的食材になっていったのかと思われます。
ちなみに例の『世界三大珍味(トリュフ、フォワグラ、キャビア)』という考え方は、日本人がバブルの時代に勝手に言い始めたんですかね。僕の知る限り、フランスやイタリアではほとんど認知されていない感じ。誰かに話しても「??」という顔をされます。
さてそれでは本題、トリュフの香りが見つけられるワインをご紹介していきましょう。
まずは第20回で紹介した「キノコ」。
ここではキノコの要素を『香りに土っぽいニュアンスを持っているタイプのもの、例えばブドウ品種で言うとメルロ種を多く使っているワインなどに見つけることが多いと思います。土のような香りの中に、少しカビっぽい感じがあるな・・・と思ったときなどに、「きのこ」をコメントに付け加えていくとワインのスタイルが具体的に伝わりやすいかと思います。』と紹介しています。
続いて第83回「腐葉土」の回も参照してみます。
ここでは『この香りが見つけられるワインを大きく括りますとまずは「良好な熟成を経た赤ワイン」です。例えばボルドーのポムロールやサン・テミリオン地区などメルロ種を主体としたワインが良い環境で長い時間かけて熟成を遂げた際に、湿った土の香りを帯びてきます。』と紹介しました。
僕にとってのトリュフの香りは、基本的にはこの2つの中間に位置する感じ。メルロだけでなくカベルネ・ソーヴィニヨン、マルベックなど非常に色の濃いブドウ品種が熟成した際に持つ香りで、マッシュルームなどのキノコよりも強く、でも腐葉土ほどの湿り気や発酵感は感じない。ちょっと曖昧な表現ですが、そのポジショニングで使用しています。今非常に良い飲み頃を迎えているワインだけが放つことのできる、美食の香り・・・是非、ボルドー、特に右岸地域の熟成ワインを楽しむ時にはこの香りを探してみてくださいね。
それでは今回はこのへんで。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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