ワインボキャブラ天国【第104回】「ピジャージュ/櫂(かい)入れ」英:punch down 仏:pigeage
- 2021.11.13
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「ピジャージュ/櫂(かい)入れ」
英:punch down
仏:pigeage (男性名詞 発音は「ピジャージュ」)
収穫したブドウをタンク/樽などに入れて発酵させ、果皮、種子、時には果梗(房の枝部分)に含まれる様々な成分を果汁に抽出していく工程の中で行う作業のひとつが『ピジャージュ/櫂(かい)入れ』です。
その名の通り、「櫂」を発酵槽のワインに入れ、液面に浮かび上がってくる果皮などの固形成分=「果帽」を押し入れる作業です。上記してある通り英語ではこの作業を「Punch Down」「Punching of the cap」などと呼びますので、まさに果帽をパンチして押し込み、全体を攪拌するということです。これによって果皮成分の抽出を促進することが出来ます。
そして、最も重要な意味合いは発酵中のワイン、酵母に酸素をしっかりと送り込むこと。発酵は炭酸ガスの生成を伴うため、発酵槽内の固形物は液面に浮かびあがり、表面を覆ってしまいます。酵母という微生物は酸素の無いところでも生きていけるのですが、酸素からエネルギーを取り込んで増殖を重ねていくため、液面が覆われて酸素が不足すると発酵が適正に進行しなかったり、タンク内の位置により発酵の進度にばらつきが出てしまう。これを防ぐために櫂を入れて攪拌作業を実施するというわけです。攪拌には同時にワイン中でのバクテリア発生なども防ぐ効果があります。
ワインの発酵槽、特に木の大樽タイプで横から見ると台形で円錐を途中で切ったような口細・末広がり型になっているのは、液面の面積を狭くして櫂入れをしやすくするという機能的な意味合いもあります。
例えばこんなタイプですね(それほど天面が窄まっている訳ではないですが、意味合いは理解して戴けるかと思います)。
最新型のステンレスタンクなどは、この「櫂入れ」を手作業でやる必要のない機能が付いているものが多く、普通の円柱形をしています。
その機能についてはこのコラム次回第105回で紹介していきたいと思います。次回のテーマは「ルモンタージュ=ポンピングオーバー」、お楽しみに!
それでは今回はこのくらいで・・・。
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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