ワインボキャブラ天国【第152回】「(ブドウ樹の)剪定、仕立て」 英:pruning 仏:taille
- 2022.12.04
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「(ブドウ樹の)剪定、仕立て」
英:pruning
仏:taille(女性名詞:発音は「タイユ」)
目次
今回から数回に分けてブドウ樹の「剪定・仕立て」についてご紹介します
今回紹介する用語「pruning/taille=剪定、仕立て」は、ブドウ栽培において非常に重要な作業であり、その方式/スタイルを説明するための言葉でもあります。ワイン産地によって異なる「〇〇仕立て」のような派生用語も沢山ありますので、今回はシリーズとして代表的なものも紹介していこうと思います。ただ、これらの言葉はワインの香りや味わいを表現するときに使える語彙ではありませんので、ブドウ栽培に興味のある方だけでもお読み戴ければ嬉しく思います!
それではまず「剪定」とはどんな作業か、というところから始めていきましょう。
ワインの原料となるブドウはいわゆる「多年生植物」です。1年間の間に蔓・葉が育ち、花が咲きそして果実が成り、冬に落葉した後も根と幹は残り、次の年はまたそこから新たな茎が伸びる。長ければ100年以上にも渡って生育することのできる、非常に長生きの植物です。
こういった作物の場合、冬の落葉後は植物自体が冬眠状態になる「休眠期」に入ります。その間、次回の収穫でも良いブドウが収穫できるよう枝を切り、樹形を整えていく作業が必要となります。簡単に言うとこれが「剪定」です。
なぜ、冬の間に「剪定」の作業を行うのか?
基本的に「剪定」の作業は、冬の休眠期に実施します。勿論夏の間にも適宜剪定の作業は行うのですが、それについては別の回でご説明をしますので、今回は「冬季の剪定」について知って頂ければと思います。
収穫が終わり枯れた葉を落とすと、ブドウ樹はその年の休眠期に向けて養分の貯蔵モードに入ります。つまり、木の中を血液のように流れる樹液が活動をストップするわけです。樹液の流れが止まった時点で枝を切らないと、折角貯めようとしていた養分が切り口から流れ出てしまうことになります。なので、冬の早い時期に切るのも良くないですし、暖かい年ですと2月頃でもブドウ樹が活動を始めている場合もありますので、作業が遅れると切り口が塞がらず、樹液が流れ出してしまうことになります。流れ出た樹液の湿気で切り口から枝が腐ってしまうこともあるので、これを防止するために、切り口には植物用の傷薬を塗ることもあるんですよ。
「剪定」作業をする目的は?
今回の最後は、何のために「剪定」を行うのか?について。
「剪定」の目的は簡単に言うと「樹形のバランスを保つ」こと、つまり1本のブドウ樹が健全に成長できる形に樹の形を整えていくことです。蔓が伸び、葉が茂ったときにしっかりと光合成をおこなえるよう、伸びる枝の数を調整して間引きしておくわけです。また、あちこちに蔓葉が伸びてしまうと作業スペースが狭くなり効率が落ちてしまうので、一定の方向に向かって成長をさせることで適切な場所を確保する、という目的もあります。
同じ地域、いや同じ畑の区画の中ですらブドウ樹の生育には差が出てくるため、畑の状況を熟知し、昨年の生育結果を見極めながら樹1本ごとに適切な選定を行う必要があります。つまり、生産者にとってはブドウの生育期間中いかに1本1本の生育状態を把握・分析し、適切な作業を実施できるか、が良いブドウを収穫することに繋がります。生産者が良く言う「その年畑でどれだけの時間を過ごしたかが、ブドウの品質に直結する」というのは、冬のこの段階から始まっているという訳ですね…極寒の季節も畑を毎日訪れる造り手たち、彼らの日々の努力に心から敬意を払います!
次回からは、様々なワイン産地で採用されている「剪定の仕方=“仕立て法”」についてひとつずつ紹介をしていきます。様々な仕立て法のメリットが分かると、気候や風土毎に採用されている手法の意味が分かり、畑を見るのがさらに楽しくなりますよ。
それではまた来週…今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました!
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