ワインボキャブラ天国【第159回】「土の香りがする」 英： earthly 仏：terreux

連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです！

取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに！！

ということで今回ご紹介する言葉は・・・

「土の香りがする」
英：earthly
仏：terreux（形容詞：発音は「テリュー」）

「土」を想わせる香りがするワインとは・・・？

このコラムではこれまでに「土壌に由来する香り」をいくつか紹介してきました。
例えば「石灰の香り」とか「火打石の香り」など（＊ページ下部に過去コラムへのリンクをご紹介しています）。
これらは土中の成分をブドウ果実が吸収することにより生成される香り成分と言われていますが、「地中のミネラル分に香りがあるのか？」という議論は、科学的な実証がされていない段階でもあります。

その一方で、今回のテーマである「土の香り」は、上記のようにそのワインの原料ブドウが栽培された「土壌に由来する香り」とは異なり、ブドウ品種が元来持っていた香りの個性と、醸造・熟成のプロセスが絡み合うことで生成される香りです。

「土の香りがするワイン」には、どんなものがある？

では「土の香り」が見つけられるワインには具体的にどのようなものがあるか・・・実例をご紹介します。
まず、品種の特性としてはフランス・ボルドー地方をはじめUSAカリフォルニアや世界各国で広く栽培されているブドウ品種「メルロ」種に土的なニュアンスを見つけることができます。もともとこの品種は黒系の果実（カシスやブラックチェリー、プルーンなど）の香り、赤いベリー系果実の香りが主軸とはなっていますが、若い段階でもその香りの中にやや土っぽいニュアンスを感じられます。

特にボルドー地方の中でも「右岸地域」と呼ばれるポムロールやサン・テミリオンなど、メルロ種を主体とした上級のワインが良い環境で長い時間かけて熟成を遂げた際には、湿った土を想わせる香りが顕著に表れます。以前「腐葉土の香り」という表現を紹介したことがありましたが、それとほぼ同じ香り表現と言っても良いと思います。

「湿った土」「腐葉土」等のニュアンスがあるのと同様に、「乾いた土の香り」も当然存在します。こちらは熟成に使用した木樽の焼き加減（木材内側のローストによって付着する焦げた香り）が若干強めの時などでしょうか。焼き加減が非常に強いと「木の香り」的ニュアンスが強くなりますので、その一歩手前…くらいだと思って戴ければ。
そして、メルロ種以外でも、特に一定の熟成を経た赤ワインには土の印象を感じることが多くあるはず。その時には「湿った土」なのか「乾いた土」なのかまで表現することで、より具体性や奥行きのあるコメントになると思いますよ。

それでは今回はこのへんで・・・今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました！

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