ワイン職人に聞く、10の質問【第62回】ボーデッカー・セラーズ(USAオレゴン州)
- 2020.10.25
- ワイン職人に聞く、10の質問
- アメリカ, グラス, テロワール, ピノ・ノワール, ブルゴーニュ, マリアージュ, ワイナリー, 写真, 哲学, 樽, 熟成, 生産者, 発酵, 職人, 香り
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』
第62回 ボーデッカー・セラーズ(USAオレゴン州)
オーナー・醸造家 アシーナ・パーパスさん(写真左)
今回話を聞いた生産者はアメリカ合衆国オレゴン州の『ボーデッカー・セラーズ』。
「家族経営」のワイナリーは数あれど、「夫婦2人そろって腕利きの醸造家で、それぞれが自分の名前を冠したワインを別々に造っている」なんていう実に珍しい生産者です。
冷涼な気候とピノ・ノワールの産地として世界的に重要となったUSAオレゴンの仲良しワインメーカー夫婦、ステュワート・ボーデッカーとアシーナ・パーパスの夫妻が表現する「男と女、それぞれのピノ・ノワール」。
冷涼な気候とミネラル豊かな土壌に恵まれたテロワールが、2人の全く方向性の異なるワイン表現をしっかりと下支え。
どちらのワインも、ブルゴーニュ的なクラシックスタイルを守りつつ、アメリカならではの軽やかな自由さが感じられます。
そして男女が仕込む2本のワイン、その明確に分かるキャラクターの違いで、女性的・男性的といったステレオタイプなワイン表現を飛び越えて、実に面白いスタイルに仕上がっています。
ご夫婦、カップルの大切な記念日などにもお薦めしたい『ボーデッカー』の2本のワイン。
その誕生のストーリーが聞けるでしょうか・・・?
それでは今週も生産者の哲学に迫る一問一答インタヴュー、始まりです!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒正直に言って、全く考えたことも無かった 笑
私はエプソン・アメリカに人間工学の学者として勤めていて、ステュアートの仕事を何年かサポートしていたの。
その中でワインを造るという仕事の魅力、面白さに気付いて。
まあ、日々の仕事では身体も感覚も総動員するから疲れるし、気候、化学、土壌栄養など色々な勉強もあったけど、私はそのすべてに恋をしたのかな・・・。
それから、フォークリフトを運転するのってすごく楽しいのよ 笑!
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒ワインが変化を示してくれる瞬間かな。
例えばシンプルで明るくフルーティーなものから、エレガントで多層的・複雑なものへと進化したとき。
自分がそのワインを創る時にやってきたことが正しかったと信じていて、そしてそのワインが「OK」のレベルよりも遥かに良くなると確信が出来た時は、本当に素敵な瞬間。
仕込んでから12年くらい経ったボトルを開けて、「こんなにゴージャスになったなんて!」と思うときが最高ね!
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒一番辛いのは、一番楽しい時。そう、それはやっぱり、収穫のとき!
ブドウは摘み取るとすぐに腐敗し始めるので、とにかく短時間で収穫しないといけない。
ブドウが一番冷えているときに摘み取り、葉や虫を取り除いて・・・
ワインの命の始まりだから、とにかく細部にまで気を配っているの。
その翌日からは1日に18時間くらい働くしね 笑
だけど、私たちはそれが大好きなの!
私たちは美しいものを創ることの一部である、という感覚。
それが、一番ハードな瞬間を一番最高の瞬間にしてくれる。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒ワイン造りの最も重要なプロセス?それはすべて、だと思う。
栽培段階では日々ブドウ園を歩き、ブドウの状態を知る。
収穫したらブドウを選別し、香り、味、そして発酵の状態を常に確かめる。
樽熟成の段階でも定期的にワインの状態チェックをして、ワインを補充し・・・
最後はどんなブレンドをするかを自身の判断で決める。
あらゆる段階で、ワインが最高のものになれるように判断をし続けるのが、ワインメーカーの仕事なの。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒勿論、ピノ・ノワール!
その多層性、独特なニュアンス、デリケートで生命力に満ちている・・・本当に魅力的なブドウだと思う。
香りやフレーヴァーがグラスの中で変化していくのが、まるで素晴らしい小説を読んでいるみたいでしょう?
素晴らしいピノ・ノワールを楽しむということは、特別な体験なの。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒私にはとても選べない 笑!!
これまでに本当にたくさんの素晴らしい、愛すべき魅力的なワインと出会ってきから。
それは有名な造り手のものもあったし、全く知られていない新しい生産者のものもあった・・・
自分の知っているもの、好きなものだけではなく、いつも新しいワインに出会いたい、という気持ちをずっと持っていることが大切だと思う!
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒チーズ、そしてトリュフかな・・・あまり強くない、熟成し過ぎていないチーズが一番。
それと、バゲットにトリュフバターを塩を少し振りかけただけのもの・・・まさに「天国」よ!
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒私の父の故郷でもある、ギリシャの北部でワイン造りをしてみたい、かな。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒香りを嗅ぎ、味わい、観察し、何が起こっているかを知る。それだけよ。
今そのワインがどうなろうとしているのか、を自然と見せてくれるようにするのが大切だから。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒随分と昔のことだけど・・・
実は青森県の八戸市で2年半ほど英語の先生(*訳注:eigo-no senseiと書いてありました!)をしていたことがあるの。
その後エプソンで働くようになってからも、何度も日本を訪れた。
だから日本は私にとって沢山の想い出があるかけがえのない特別な場所。
私は日本にいた時間、日本の友人を通じて沢山のことを学んだから、今こうして自分が創ったワインを皆さんと一緒に楽しんでいることを本当に誇りに、嬉しく思う!
・・・アシーナさんへの一問一答インタヴューは、以上です。
今回のインタヴューは如何でしたか??
なんとアシーナさん、まさかの日本で教師の経験があったとは初耳でした 汗
彼女の創る(彼女はいつも「Create」という言葉を選んでいます)ワインは、とてもパワフルで力強いのに、非常に細やかでエレガント。
日本人に響いてくる感性があるな・・・とずっと思っていたので、これで納得できた感じがします。
青森県八戸市在住のお客さまで、アシーナさんに英語を教わった想い出のあるお客さま、いらっしゃらないですかね・・・?
もし憶えている方がいたら、Firadis WINE CLUBに是非教えてくださいね!
このワインが青森県で愛されること、アシーナさんも心から願っているはずです!!
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