ワイン職人に聞く、10の質問【第69回】フランツ・ケラー(ドイツ・バーデン地方)
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第69回
フランツ・ケラー(ドイツ・バーデン地方) 醸造家 フリードリッヒ・ケラーさん
連載コラムシリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、第69回はドイツの赤ワインを代表するトップ生産者『フランツ・ケラー』。
ドイツ最南端のワイン産地でアルザスに接するバーデン地方、カイザーシュトゥール地区に長く続くワイナリーで、現在は今回のインタヴューに回答してくれた5代目のフレードリッヒ・ケラーさんが醸造責任者を務めています。
ドイツのワイン専門誌『アイヒェルマン』で最高の5 つ星評価、ワイン・アドヴォケイト誌では「バーデンで最も素晴らしいピノ・ノワール」と絶賛され、デカンター誌選出のドイツのピノ・ノワールTOP20にも選ばれる世界的に高評価の生産者です。
淡く優しい色合いからは想像もできないほど、力強い果実味と旨みを秘めたピノ・ノワール=シュペートブルグンダー。
彼らが理想像として思い描き、追い求めるワインとは一体どんなものなのか・・・・?
フリードリッヒ・ケラーさんのインタヴュー、早速始めましょう!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒僕には、永く継承されていくべき家族の物語の一部となる責任があるのだから、この仕事をすることは生まれた時から決まっていたようなものだよ。
だけど、始めてみれば日々多様性に溢れる職人の手仕事は僕にぴったり合っていたと思う。
毎日の仕事が本当に楽しいんだ!
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒毎年やってくる収穫の時に、さて、今年のワインはどんな風に造ろうか・・と考えるときが一番楽しいね。
自然環境の恵みの中で産まれた、「その年ならではのキャラクター」を表現することがワイン造りの醍醐味だから。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒霜と嵐・・・なんだけど、幸いにもバーデンは被害を受けることが滅多にないんだ。
本当に恵まれた土地だと思うよ。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒ワイン造りは1年かけて階段を一番一段登っていくようなものだから、一番大切な段、なんていうものは無いと思うんだ。
一段一段、全てのステップが、ワインが瓶詰めされる段階で何らかの影響を及ぼしている。
だから全ての段階で手を抜かないことが最も重要なことじゃないかな。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒一見飲みやすいスタイルなのに、そこに魂(Soul)を感じさせるワイン。
果実の純粋性が極限まで突き詰められていて、緊張感がありながらもバランスの取れているワインが理想だ。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒数え切れないほどあるよ。
勿論、誰とどんな場所でどういう料理と合わせて飲んだか・・・が一番大切な記憶だからね。
それでも僕が心から愛するワインはやはりブルゴーニュの赤、ジュヴレ・シャンベルタンやシャンボール・ミュジニィの素晴らしい生産者のワインたちだ。
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒2019年に初めて日本に行った時、グラウブルグンダーの白ワインと寿司を合わせたときのことは今も鮮烈な思い出として残っているよ。
新鮮な魚介類の旨み、酸、そして塩気とグラウブルグンダーはまさに完璧にマリアージュしていたと思う。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒悩む質問だね!!
僕はいまワイン造りをしているこの場所が大好きだから、それでもここで造り続けるよ・・・と言いたいところだけどやっぱりブルゴーニュでも造ってみたいな。
シャンボール・ミュジニィに4ヘクタールくらい、そしてジュヴレ・シャンベルタンに6ヘクタールくらい、が希望だよ 笑!!
用意してくれるかい?
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒そうだな・・・バーデンでドライなスタイルの赤白ワインを造るにあたって、ブルゴーニュのような優美なスタイルを理想としつつも、ここカイザーシュトゥールのテロワールならではの緊張感・深みを同居させることを追及すること。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒ワインに対していつも好奇心を!飲んで、学んで、話すことを楽しんで!
・・・フリードリッヒさんへの一問一答インタヴューは、以上です。
本当にブルゴーニュワインに対して純粋な敬意を表していて、驚くほどでしたね 笑
僕はいつも思うのですが・・・長年ワインを愛好している方ほど「ドイツの赤って、薄くて美味しくないよね」と思っているみたいなのがとても残念。
確かに、かつて日本に入ってきていた手頃な価格帯のドイツ赤はその通りでした。
ロゼワインみたいに色が薄くて酸っぱいものが多く、一度飲んでひどい目に遭ったらもう二度と・・・という代物もありました。
ですが今やそんなイメージは完全に過去の遺物、素晴らしく濃密で旨み溢れるピノ・ノワールが続々と台頭。
その筆頭がこのバーデン地方の生産者『フランツ・ケラー』だと思います。
フリードリッヒさんが熱く語るように、ブルゴーニュ的な価値観を踏襲しつつも、バーデンという土地ならではのキャラクターが確かに表現されているワイン。
ピノ・ノワール、いや全ての赤ワイン好きの方に一度試して戴きたい生産者です。
手始めに是非エントリーレンジの『シュペートブルグンダー・フォン・ロス』を試してみてください。
その辺のネゴシアン物の安いブル・ピノと比較したら、全く比べ物になりませんから。
Firadisが太鼓判を押すドイツ赤・・・絶対に、知っておく価値がありますよ!
『フランツ・ケラー グラウブルグンダー・オーバーベルゲナー バスガイゲ・エアステ・ラーゲ』
『フランツ・ケラー シュペートブルグンダー・アイヒベルク グローセス・ゲヴェックス』
『フランツ・ケラー グラウブルグンダー・シュロスベルク グローセス・ゲヴェックス』
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